「知能検査」は子どもを伸ばすためにどう活用すべき?「検査の原点」と「人を排除する道具と化したIQの歴史」に学ぶべき視点

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現在使われている知能検査の原型を作ったのは、フランスのビネとシモンです。当時のフランスでは、障害のある子どもたちも学校に通えるようにする教育改革が進められ、年齢ごとのクラス編成が導入されました。すると、学校の成績が悪い子どもが出てきます。

原因はさまざまで、単にサボっている場合もあれば、家庭の事情で学業に集中できない場合(ヤングケアラーや虐待を受けている子どもなど)もあります。また、勉強の仕方がわからない、初期の基礎的な知識が不足して学びを深めることができない、ということもあるでしょう。何らかの障害があって学業成績が伸びない場合もあります。

原因がわかれば適切な対策を打てます。サボっている子には動機づけを、困難な環境にある子には支援を、知識がない子には知識を、障害のある子にはその状態に応じた特別な教育を提供できるようになるのです。

「子ども自身を直接観察」したビネ

ビネが着目したのは、子どもの発達における年齢の差でした。今では3歳から4歳、4歳から5歳と年齢が上がるにつれて賢くなることは常識ですが、19世紀末から20世紀初頭にはそれは自明ではありませんでした。

ビネは子どもを実際に観察する中で、年齢に応じて賢さが進行することに気づき、子どもたちの標準的な賢さの物差し(フランス語で「échelle(エシェル)」、はしごという意味)を作ろうと考えたのです。

ビネの検査が優れていたのは、子ども自身を直接観察するように促したことです。驚くべきことに、それ以前は母親に話を聞いて子どもの知能を判断していました。しかし、これでは親の見栄などが入り込み、正確に捉えられません。ビネは子どもを目の前に置いて課題を与え、その子自身の賢さを直接測定しようとしたのです。

私たちが日常的に使う「頭がいい」「賢い」という評価には、実は2つの側面があります。足の速さで考えるとわかりやすいでしょう。子どもは3歳から4歳、4歳から5歳と成長するにつれて走るのが速くなります。これが「絶対的水準」です。一方、その子が同年齢の中でどの位置にいるかという「相対的水準」もあります。「3歳にしては(走るのが)速いね」「5歳にしては遅いね」という評価がこれにあたります。

賢さについても同じことが言えます。まさにビネの検査では、その子が「何ができるか」「年齢に応じた賢さかどうか」がわかります。3歳の子が5歳相当のことができれば「年齢の割に賢い」、5歳なのに4歳水準のことしかできなければ「年齢相応ではない」と判定されるわけです。

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