筆者も男性患者から胸を触られたり、高齢患者から唾を吐かれたり、出血するほどひっかかれたりするなどの行為を受けた、当事者の1人である。
このようなカスハラがあった際には、本来なら組織や上司が守ってくれたり、ケガについては労災が適用されたりするものだが、上司からも「優しく接するべき」とたしなめられ、根本的な解決策は講じられなかった。
医療機関のカスハラでは、認知症などの疾患が背景にある場合、患者を一概に悪者にできないという複雑さもある。その結果、看護師はカスハラに対して何のケアやサポートもなく、被害を受け続けることで精神的に疲弊し、休職や離職につながるケースが少なくない。
近年は、こうした医療従事者へのカスハラが問題視され、警察OBを保安員として配置したり、「当院はいかなるハラスメントも許していない」「警察と連携している」などのポスターを掲示したりするなど、予防対策を講じる病院は増加している。
日本看護協会も「看護職の健康と安全に配慮した労働安全衛生ガイドライン」や「保健医療福祉施設における暴力対策指針」を策定している。
しかし、実効性は十分でないのが現状だ。
加えて、先輩看護師や上司からのハラスメントも深刻な問題となっている。
「命を預かる仕事」であることから、厳しい指導が必要な場面もあるが、教育とは到底思えない人格否定や、威圧的態度で相手を追い込む。これが原因で、看護師を採用しても定着しないという問題を抱える医療機関も少なくない。
安全な医療現場の実現を
2025年6月4日、改正労働施策総合推進法が国会で可決・成立し、6月11日に公布された。この改正は、すべての事業主にカスハラ対策の措置義務を求めたもので、これまでの「努力義務」から「法的義務」になる。
今後、厚労省から省令や指針が示され、2026年10月頃に施行される見込みだ。
さまざまなハラスメントに対して、看護師を含む医療従事者が我慢することのない、安全な医療現場の実現が期待される。
