看護学校や大学で起こっているハラスメントには、学生に対してだけでなく、教員間でも発生していて、離職につながる問題となっている。
関西地方にある大学の具体的な事例を挙げる。
A大学のB講師が、古参のC教授によってすべての演習授業から外される事案が発生。きっかけは学生がC教授に「科目によって演習のやり方が違うのはどうしてか。B先生のやり方が良い」と言ったことだった。
B講師の演習は、学生同士で教え合い、気づきを促すように組み立てられており、学生から好評だった。それに対して、C教授は「B講師は演習中何もしておらず、怠慢だ」と批判し、当初は演習科目の担当から外すだけだったものが、すべての授業から外すなど行為がエスカレートした。
B講師はハラスメント相談窓口に訴えて認定されたものの、状況は改善されず、B講師は授業から外されたままの状態が続いているという(取材時点)。
もう1つの背景として、看護教員数の不足がある。
1992年の「看護師等の人材確保の推進に関する法律」の改正以降、急速に大学の看護系学部が増加したが、教員数がそれに追いつかなかった。
取材した複数の大学教員からは、「多くの新設大学が人材獲得を優先し、質の担保が後回しになっているため、なかには10年以上論文発表をしていないのに教授職に居座る、授業内容が10年間変わらないといった状況に陥っている大学もある」という声が聞かれた。
医療現場での問題、患者や家族からの暴力、暴言、セクシャルハラスメントなどについても見ていきたい。
就職後も続くハラスメント
今から1年ほど前、ある女優が交通事故後に搬送された病院で看護師に暴力を振るい、逮捕された事件があったが、実は病院や介護施設、訪問看護の現場では、看護師が日常的にカスタマーハラスメントを受けている実態が明らかになっている。
厚労省の調査では、8割以上の病院が過去1年間に職員への院内暴力(身体的暴力・精神的暴力・セクハラなど)を経験。しかし、警察へ通報したケースはわずか2.8%にとどまる。
具体的なハラスメントとしては、待ち時間が長いことに対して、受付スタッフや看護師を恫喝する、入院中に看護師に対して「早くしろ」と怒鳴りつけ、処置に必要なトレーを投げつける、などが挙がっている。
一般社会であれば犯罪となる行為も、医療現場では「病気で苦しんでいる患者さんだから」という理由で看護師の泣き寝入りが強いられてきた。
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【医療現場での暴力やカスハラの事例】
