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「未来に希望が見えない」19歳看護学生を自死に追いやったハラスメントの闇 教員・先輩・患者…逃げ場のない看護師たち

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涙を流す看護師
看護学校や医療現場における学生・看護師へのハラスメントが問題となっています(写真:buritora/PIXTA)
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はぐくみネットの活動を通じて見えてきたのは、看護の教育現場に蔓延する深刻なハラスメントの実態だ。同組織が知る限り、北海道や千葉県、愛知県、兵庫県など、全国各地から相談が寄せられる。

「多くの相談者が、自身が通っている看護学校のことを“軍隊のようだ”と表現します」と裕樹さんは話す。

具体的な内容を挙げると、こんな感じだ。

「看護師になれると思ってんの」「看護師に向いてない」(人格否定)
「学生辞めちゃえば」「いつでもお前の首なんて切れる」(退学示唆)

このような言葉の暴力のほか、記録を床に投げつける、怒鳴って指示をする(威圧的態度)、具体的な指導なしに記録の再提出を繰り返し求める(指導放棄)など、多岐にわたる。

「ほかにも、実習で忙しい学生が身なりを整えて登校したことに対し、教員から『眉毛を書く時間があるんだ』と指摘され、石けんで顔を洗わされたという相談や、机の上にジュースを置いただけで激怒されたという相談もあります」(裕樹さん)

ハラスメントには該当しない

裕樹さんは2024年1月、ハラスメントアンケート330件のデータをまとめた報告書と、別団体が集めた岸田文雄首相(当時)宛のオンライン署名3万3000筆を、文部科学省と厚生労働省の担当者に提出した。また、岐阜県に対しては第三者委員会による調査を求めた。

しかし、調査結果は「必要かつ相当な範囲を超える指導・注意とは認められず、ハラスメントに該当するものではなかった」と結論づけられた。

では、なぜ看護教育現場でハラスメントが起こるのだろうか。日本看護学校協議会などによると、背景には、複数の構造的要因があるという。

1つめは、古い価値観の継承だ。「命を預かる仕事なのだから厳しくして当然」という考えが指導者にある場合、こうしたハラスメントが起こりやすい。

また、教員が学生を評価する絶対的権限を持つ構造的な問題や、抗議すれば留年・退学のリスクがあるため、学生は声を上げられないという問題。そして相談窓口がない(あっても機能していない/加害教員が相談担当者)、教員研修が不十分といった対策の不備などが挙げられる。

一方で、はぐくみネットの活動を通じて、変わろうとする学校も出てきた。学校名は出せないが、ある看護専門学校は日本看護学校協議会と協働して、学校環境を変えていくことが決まった。

蓮さんのような悲劇を二度と繰り返さないためにも、社会全体がこの問題に向き合うときが来ている。看護師を志す人たちが、安心して学び、働ける環境を築くことは、結果的に患者にとっても、より良い医療を受けられることにつながる。

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【看護教員間のハラスメント】

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