東京初「赤ちゃんポスト」から1年…医師が見た命の最前線:内密出産や匿名相談で浮かび上がる"孤立する母親のリアル"
「すでに出産が始まっていて、血まみれの妊婦さんが救急車で運ばれてくることもあります。最初から育てないと決めているのか、出産当日に赤ちゃんを置き去りにしていなくなる母親も……。そのなかで医師も看護師も、助産師も、ソーシャルワーカーも可能な限り支援を提供できるよう奮闘してきました」(賀藤院長)
2019年になって、賛育会の法人役員および賛育会病院の前院長は、母子の命の保護と救済のために、赤ちゃんポストの設置を検討し始めた。それは即ち、賛育会創立時の「妊婦乳児相談所」という原点に立ち返ることだった。
きっかけは、2019年2月に医療法人聖粒会・慈恵病院(熊本市)の蓮田太二理事長(当時)の講演を聞いたこと。慈恵病院は、2007年に日本で初めて匿名で新生児を預かる「こうのとりのゆりかご」を、2019年に内密出産の受け入れを開始している。
メディアが大々的に取り上げたため、これらの取り組みは全国的に広く知れ渡った。
しかし、ほかに手を上げる医療機関はなく、結果的に日本では長らく慈恵病院にしか赤ちゃんポストや内密出産の取り扱いがない状況が続いた。
「昔に比べれば世の中はずいぶん豊かになったのに、いまだに孤立する妊婦さんが存在し、赤ちゃんがトイレなどに遺棄される。少しでもそうした母子の力になりたいという熱意が、今回のプロジェクトの実現につながりました」(賀藤院長)
その後、新型コロナウイルスが流行し、感染した妊婦への対応などに追われた同院。一段落した2022年10月、賛育会の理事会で改めて「赤ちゃんのいのちを守るプロジェクト」が承認され、2023年4月にプロジェクト事務局および推進会議が始動した。
生まれた命を育てる仕組みを
2023年5月には墨田区と東京都、江東児童相談所と、さらに2024年5月には警察との協議がスタート。
「医療機関にできるのは、母子の命を助けるところまで。プロジェクト開始にあたっては、行政や警察としっかりとした協力体制を築く必要がありました」(賀藤院長)
賀藤院長が言うように、赤ちゃんポストにせよ、内密出産にせよ、医療機関ができることは限られている。背景はどうあれ、生まれてきた尊い命を社会がどう育てていくか――その枠組みまでが揃ってこその支援だ。
賛育会がベビーバスケットで新生児を預かった場合、事件性がないかどうかなどの確認のためにも、同会はまず警察に通報する必要がある。その後、警察から行政(自治体)へと連絡が入り、市区町村長に名付けられたあと出生届が提出され、一人戸籍が作成されるという。





















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