「橋梁インフラ課題」への2つのアプローチとは 日鉄エンジニアリングの専門知と経験で挑む

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ミーティング風景
高度経済成長期に建設された橋梁の多くが、今後、老朽化の進行が加速すると予測されている。重要な社会インフラの適切な維持管理が求められる一方、人手不足やコスト上昇にも対応しなくてはならない。日鉄エンジニアリングは、こうした大きな社会的な課題を前に、橋梁の長寿命化と景観の両立を図る技術と、工期を短縮する架け替え工法という2つの切り札を磨き上げた。橋梁の課題にイノベーションで挑む専門家集団の真価とは。

増え続ける管理負担、進む担い手不足

1970年代の高度経済成長期に集中的に整備された国内の橋梁の多くが2030年代にかけて築50年を超えていく。更新や大規模な改修を迎える橋梁も少なくないだろう。社会の血管ともいえるインフラを次世代に引き継ぐことは避けては通れないが、その前に立ちはだかるのが「人手不足」と「コスト増」という深刻な環境変化だ。日鉄エンジニアリング 都市インフラ営業本部 橋梁商品部でソリューション営業を担う林昭男氏は、現場の切実な窮状をこう語る。

橋梁商品部 橋梁商品営業室 室長 林 昭男 氏
橋梁商品部 橋梁商品営業室 室長
林 昭男

「国土強靱化基本計画の下、橋梁の耐震補強や迅速な災害復旧、維持管理の効率化が急務となっています。しかし、国際情勢による資材価格の高止まりと人件費の継続的な上昇が、時間を追うごとにコスト負担の増大を生んでいます。また、溶接や高所作業といった専門技能を要する熟練技術者の減少が、担い手不足に拍車をかけています。さらに、老朽化に伴い点検・補修の頻度が増していくと、ライフサイクルコストは年々膨張します」

2014年の道路法施行規則の一部改正によって、橋梁・トンネルに対する5年に1回の近接目視点検が義務化されている。気候変動による災害の激甚化も、求められる性能のハードルを一段と押し上げているという。

一方、現代のインフラ整備には、眼前の安全性にとどまらない視点が求められる。SDGsやカーボンニュートラルの実現に向け、建設プロセスにおけるCO₂排出削減や環境負荷低減は避けて通れない。安全性・耐久性、そして環境への配慮。これらを高い次元で両立させることが、現代の橋梁に課された使命ともいえる。

NSカバープレート、「恒久足場」という逆転の発想

こうした中、鋼構造のスペシャリストとして解決策を提示しているのが、日鉄エンジニアリングだ。

林氏はこう説明する。

「かつて新日本製鐵エンジニアリング事業本部(当時)として、橋梁の設計から製作、架設までを一貫して担い、日本のインフラ整備に寄与してきました。日鉄エンジニアリングとなった以降も、鉄のポテンシャルを最大限に引き出すべく、新たな橋梁・建材開発を続けています。常に現場の切実な課題に寄り添い、膨大な知見を凝縮しながら『橋を効率的に守り、合理的に造り替える』という難題に対するソリューションを開発しています」

その先陣を切って、時代のニーズに応えるべく誕生したのが「NSカバープレート」である。

NSカバープレート
NSカバープレート
「多機能防食デッキ」であるNSカバープレートは「恒久足場」として利用が可能なため、検査・補修の際に足場を組む必要がない

「鉄の橋梁は、手入れしなければ、塗り替えが必要です。私たちは、その維持管理のサイクル自体を構造的に変えたいと考えました」と、同部 橋梁商品技術室の高野奈津子氏は語る。

橋梁商品部 橋梁商品技術室 高野 奈津子氏
橋梁商品部 橋梁商品技術室
高野 奈津子

2003年に誕生した「NSカバープレート」は、チタンやカラーステンレスといった高耐久材を外装材に使用して橋梁の主要構造を丸ごと覆い、雨水、紫外線、飛来塩分といった劣化因子を遮断する「多機能防食デッキ」である。

高野氏は、この技術がもたらす経済的合理性をライフサイクルコストの視点からこう説く。

「塗装された橋梁は塗り替えが必要になりますが、NSカバープレートは初期投資こそ必要でも、一度設置すれば本体の腐食を抑制でき、塗り替えコストも低減できます。私どもの試算では、トータルコストを従来の半分程度にまで低減できるケースもあり、財政に課題を抱えている自治体にとっても有効な選択肢となります」

さらに、この「多機能防食デッキ」をそのまま「恒久足場」として使用するという逆転の発想が組み込まれている。林氏は、この機能がもたらす現場の大きな変化を強調する。

「まず、点検や補修のたびに足場を設置する必要がありません。また、鉄道の上や幹線道路をまたぐ橋梁の点検などを行う場合、作業時間に制約があることが多いのですが、NSカバープレートを設置しておけば、電車や車が走行していても内部にアクセスができ、いつでも安全に点検ができます。足場の設置が必要なく、効率的な点検が可能になり、人手不足に悩む現場にとって大きなメリットになると考えています」

この設計思想は、2024年度のグッドデザイン賞受賞という形でも評価されている。人手不足、社会インフラ維持への関心が高まる機運の中で、NSカバープレートのメリットがあらためて認識されたものといえるだろう。

実績面でも、海上環境、飛来塩分が多い橋梁などでその真価を証明してきた。現在は都市景観に配慮し、地域に調和した色彩や、側面に傾斜をつけた意匠性の高いデザインの引き合いも増えているという。

工期を短縮するパネルブリッジ、設計プロセスが進化

日鉄エンジニアリングの挑戦は「守る」だけにとどまらない。もう1つの大きな柱が、橋梁そのものの造り方から変える「効率的で短工期の架け替え」の追求だ。

「『規模の小さい橋梁において、鋼橋はコスト競争力に課題がある』。かつて土木の世界で語られてきた既定路線を、構造のイノベーションで打ち破りたいという思いから開発が進められました」と高野氏は振り返る。

パネルブリッジ
パネルブリッジ
橋梁そのものの造り方から変えた

そこで誕生したのが、鋼合成床版橋「パネルブリッジ」だ。これは、工場で主桁と床版を一体化させて出荷し、現場作業をシンプルにする。施工期間の短縮化に加え、鋼材を主体とする構造のため、橋梁そのものの重量が軽く、基礎の小型化や工事負荷の削減を可能にするという。高野氏は「現場施工を短縮できるパネルブリッジは、既設橋の更新や都市部での橋梁の架け替えなどで実績を積んできました。今後は、迅速な対応が求められる災害復旧の現場のニーズにもお応えしていきたい」と強調する。

そればかりではない。高野氏はさらに、デジタル化による「設計のスピードアップ」についても熱を込めて語る。

「複数のソフトウェアを統合する『自動設計プログラム』を独自に構築しました。これまでの手作業による設計情報の入力ミスを防ぐとともに、設計品質の安定を図り、設計期間を短縮することで、発注者への提案スピードを向上させました。こうした取り組みを通じて、都市部の急速架け替えのニーズにも、広く対応していきたいですね」

また、現代のインフラに不可欠な「環境性能」についても、パネルブリッジならではの設計が、環境負荷削減に寄与すると高野氏は説明する。

「橋桁の高さを低く抑えられるので、橋までの盛土区間が短くなります。そのため、盛土工事由来の環境負担低減の効果があります」

こうした、新しい解を差し出す日鉄エンジニアリングの強みは、製品の開発力にとどまらない。

林氏が「われわれのチームは、製品の開発から設計、製造、供給に至るまで、一貫して顧客に寄り添い価値を創出するエンジニアの集団」と自負するように、施工アドバイザーとしても技術面で支援し、インフラの品質を根底から支えている。

設置現場では、元請け会社からの問い合わせなどにも丁寧に対応。日鉄エンジニアリングの技術者は、現地の据え付け工事においても「どうすれば最も確実かつ安全に施工できるか」という技術的な助言をすることも少なくないという。

この「現場主義」の姿勢は、新日本製鐵時代から培われた膨大な経験則に裏打ちされたものなのだろう。

今後の展望として、免震・制振デバイスといったほかのインフラ商品群との相乗効果による事業拡大や、国内での実績を基盤に、ODA(政府開発援助)などを通じた海外展開を掲げる。日本の発展を支えてきた橋が、さらに次の未来でも安全であり続けるために、日鉄エンジニアリングは、工事のノウハウを熟知したエンジニアの視点で、現場の切実な課題に向き合っていく。

NS Cover Plate
恒久足場で維持管理を効率化

蔵治 賢太郎氏
首都高速道路
技術部技術推進課長
蔵治 賢太郎

都市内高速道路の高架橋において、鉄道・河川・幹線道路と交差する箇所は仮設足場の設置が困難です。作業時間が深夜や渇水期に限定されるほか、管理者との協議に多大な労力を要し、費用もかさみます。

また、足場の設置期間が延びればリース料が高額化し、設置・撤去作業における人身事故のリスクや台風時の対応といった安全管理上の課題も少なくありません。

これらの課題を解決するために開発されたのが、劣化しない材料で構成された「恒久足場」です。これを常設することで、点検・補修のたびに発生していた調整業務や危険作業を回避できます。少子高齢化に伴う就労人口の減少により、維持管理業務の効率化は急務です。大規模更新事業などを通じて恒久足場の設置範囲を拡大させることは、将来的な維持管理コストの抑制と、安全かつ迅速なインフラメンテナンスを実現するために極めて有効な手段となります。

Panel Bridge
製作指定工場として製作品質を担保

佐々木 史昭氏
中央コーポレーション
代表取締役社長
佐々木 史昭

当社は橋梁メーカーとして、設計・製作・施工・メンテナンスに直接携わる立場から橋梁整備に向き合っています。パネルブリッジは製作指定工場として製作品質を担保する役割を担い、都市部等の既設橋更新事業などに貢献しています。

近年、流域全体の防災機能の確保を目指す河川改修において、橋梁には機能性、施工性、周辺環境や都市景観との調和が強く求められています。パネルブリッジは、設計思想が非常に現代的で、主桁は床版コンクリートと鋼のΠ(パイ)型合成断面で桁高を極限まで下げることができ、桁と桁の間には横桁や横構がなく、桁端部はコンクリートで巻き立てられ、外観はスッキリして非常にスマートです。架設はΠ断面なので置くだけでよく、型枠工事が不要のためそのままコンクリートを打設でき、工期を大きく短縮できます。桁端部含めたメンテナンスの手間も最低限で済み、まさに今後100年のスタンダードとなる次世代橋梁と実感しています。

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