なぜ不機嫌な人がいる職場でも仕事が回ってしまうのか

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こういった不健全な合意のなかにいると、自分でも気づかないうちに「実は自分も合意に加担している」状況を生み出してしまうものだ。そう考えてみれば、黙認も合意であるということが実感できるに違いない。

本音に向き合う勇気を持とう

合意が歪む背景には、「自分を欺く」場合と「相手を欺く」場合の2パターンが存在するという。いずれも根底にあるのはリーダーシップの後退、つまり「本音と向き合う勇気」の欠如だ。

この点に関連し、著者は2つのパターンを例示している。

①「自分の本音に気づかないふり」パターン

リーダーやメンバー自身が、自分の本音を直視することを恐れ、「見ないふり」をするパターン。たしかに自分の不安や葛藤と向き合うのは不快なことではある。しかし、その不快感を避けるために本音を遠ざけてしまうと、結果的には曖昧な合意や都合のいい理屈で物事を進める習慣が染みついてしまう。

「本当は無理な企画だとわかっているのに、言い出すのが怖いから黙る」――これも自分を欺く典型例です。リーダーシップを発揮するなら、本来は不快感を伴ってでも真実を伝える必要があるのに、それを避けてしまえば組織全体が行き詰まるのは時間の問題です。(58ページより)
②「相手の言質を取り、責任を押しつける」パターン

もうひとつは、あえて相手に喋らせ、あとから責任を押しつけられるように仕組むパターン。

「あなたはこう言いましたよね?」などとことさらに強調し、結果が悪くなったら「あなたが言い出したのだから」と責任を被せるようなやり方。これは明確な相手を欺く行為であり、組織内の信頼を大きく損ねる危険な手段だ。

自分を欺くことも、相手を欺くことも、「本音に向き合う勇気がない」ということである。しかしそもそもリーダーシップとは、組織の目的や価値観を明確にし、メンバーとともに進む道をつくる行為であるはずだ。

だが、自分もしくは相手に嘘をついた時点で、大切な対話は止まってしまう。その結果、組織の誠実さも損なわれるだろう。それは避けたいところだが、損なわれた誠実さは取り戻せるのだろうか。

誠実さを取り戻すことは決して不可能ではありません。勇気とは、恐れを感じなくなることではなく、恐れたまま行動を選ぶ力です。たとえ不安を抱えたままでも、「今の自分が何を守りたいのか」を自覚すれば、本音に基づいた小さな行動が、再び誠実な対話の流れを生み出します。(73ページより)

リーダーシップとは完璧な判断を下すことではなく、不誠実な現実のなかでも対話を止めないことだと著者は主張する。それを隠さず共有できるチームほど、互いに支え合いながら成長していく力を持つのだとも。

そういうチームになることができれば、パワハラを醸成してしまうような空気も、(たとえ少しずつであったとしても)薄まっていくのではないだろうか。

堀田 創 Hajime Institute/株式会社シナモン創業者
ほった はじめ / Hajime Hotta

AI研究者・認知科学研究者。AI関連研究で博士号取得後、連続起業家として活躍。シリウステクノロジーズ(ヤフーにより買収)のChief Scientistを務め、ネイキッドテクノロジー(ミクシィにより買収)の創業・売却後、Cinnamon AIおよびNexus FrontierTechを設立。技術に立脚したビジネスをゼロから立ち上げ、成長・拡大・売却へと導いてきた実績を持つ。現在は、最先端のAI研究と認知科学の橋渡し役として、企業が「認知的AI」を通じてビジネス価値を最大化できるよう支援している。著書に『マネジメントの原点――協働するチームを作るためのたった1つの原則』(東洋経済新報社)、『チームが自然に生まれ変わる――「らしさ」を極めるリーダーシップ』『ダブルハーベスト――勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン』(ともに共著、ダイヤモンド社)がある。

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