なぜ不機嫌な人がいる職場でも仕事が回ってしまうのか

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すなわち、ここでいう合意とは決して「全員が心から納得している」状態だけを指すわけではないのだ。嫌々ながらでも仕方なく従っていたり、諦めて妥協していたりする場合でも“合意が横たわっている”ことになるわけで、表現を単純化すれば悪循環だということにもなろう。

もちろん、パワハラを受けている当事者が「自ら受け入れる選択をした覚えはない」「他に方法がないだけだ」と反発するのは当然の話だ。それどころか、他の選択肢を思いつけないほど追い詰められていると考えることもできる。

とはいえ、そうした状況を「自分にはなんの選択権もない」と感じたなら、私たちは「現状を前提とする生き方」を受け入れてしまうことになる。

それが心理的な自己防衛の結果だったとしても、結果的に“組織の歪んだ前提(暗黙の合意)”を温存する力として働いてしまうことがあるわけだ。だとすれば、「その合意をどう書き換えるか」という発想が生まれにくくなるのは無理もない話かもしれない。

だがその一方、「じつは不健全な合意があるかもしれない」と気づくことには大きなメリットもあるだろう。その例として著者が挙げているのは、次のようなものだ。

・これまで黙っていた同僚や部下との間で、「自分たちも本当は違和感を覚えていた」という共感が生まれる可能性が高まる。
・自分自身が意図せずに加担していた構造を可視化でき、そこから抜け出すきっかけをつかめる。
・組織の空気や慣習にまつわる根本的な問題をあぶり出し、具体的な改善策を考えやすくなる。
(54〜55ページより)

どれだけ歪んだ状況であったとしても、チームが維持されている以上はなんらかの合意がある――。そういった事実を受け止めることから、それを健全な合意につくり替えていくための一歩が始まるということだ。

「暗黙の合意」とはなにか

もちろん明示的に取り決められたものではないが、「暗黙の合意」とは相互に“そうするだろう”と予測し合うことで維持されている“沈黙の均衡”を意味する。

・トップの言うことには従わないと面倒なことになる
・この組織ではイエスマンのほうが得をする
・誰も異議を唱えないなら、自分も波風立てたくない
(56ページより)
次ページ合意に至るプロセスと合意の質が重要
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