医療、国際、地域、スポーツ系が増加
近年は不況に伴う就職難と、高齢化に伴う医療系人材のニーズ拡大を背景として、医療系学部学科の新設が相次いできました。看護学部・学科は全779大学のうち240大学以上と、約3大学に1大学の割合で看護学科が設置されています。看護師は、主に専門学校や短大で養成されていたため、看護学科を置いているのは10大学程度だった約30年前に比べると、その増加は突出しています。2016年度も琉球大以来37年ぶりにとなる医学部が東北医科薬科大学に設置され、医療系学部学科の増加の勢いは続いています。
医療系以外では、今や100を超える大学に設置されている国際系学部の増加が目立ちます。従来の国際系学部は英語と外国文化を学び、国際教養を身に付ける人文科学系教育が中心でしたが、最近は、国際的に活躍できるビジネスパーソン育成を前面に掲げる大学も増えているのが特徴です。文部科学省が文系学部見直しを打ち出したこともあり、国立大学でも、国際系学部新設が目立っています。
情報調査・編集部ゼネラルマネージャー
常務取締役
安田 賢治
1956年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大学通信入社。中学受験から大学受験まで幅広くカバーし、書籍編集とマスコミへの情報提供を担当。各誌への執筆も多い。著書に『笑うに笑えない大学の惨状』(祥伝社新書)などがある。
また、国際系とは対照的な地元密着型で地域課題解決の担い手育成を掲げる地域協働学部、地域創造学部、地域デザイン学部といった地域を冠する学部も増えています。最近、地方の高校生は東京に出ずに、地元大学に進学して、地元での就職を目指す傾向が強まっています。地方での就職を志向する地域系学部も安定した人気を集めています。
また、スポーツ好きの高校生らをターゲットにしたスポーツ科学系も、カレッジスポーツ強豪大学を中心に設置されています。こうしたスポーツ、旅行・観光、マンガ、映画など趣味的なものも含め、高校生の興味を引く分野を体系的な学問として深く学ぶことのできる多彩な学部が作られているのも最近の特色です。大学の大衆化で、大学進学の意味、大学の学びそのものが変わってきた、とも言えるでしょう。
90年代から09年までは大学進学率は2倍近く伸びたことで、18歳人口減少にもかかわらず、進学者数は増加しました。その後は横ばいが続いています。しかし、これ以上の進学率上昇は期待できず、今後は18歳人口減少の影響が進学者数にまともに反映される「2018年問題」が始まります。私立大学は、生き残りをかけて、社会のニーズにあった学部学科を作る必要に迫られているのです。
教育内容と自分の適性とのミスマッチに注意
キャリア教育の浸透によって、特定の学部・学科に志望先を絞り込む受験生が多いのも最近の特徴です。昔のように、一つの大学の複数学部を受験する学生は少数派になっています。そのことは望ましいことと思いますが、大学での実際の教育内容と学生の希望の間に齟齬をきたすミスマッチの問題も増えています。まず、志望する学部・学科の教育内容が自分の希望と合っているのか、オープンキャンパスや大学フェアなどに参加して、調べることが大切です。
また、就職に有利だからと看護学科に進学したものの「血が恐い」という学生、教育学部に進学したものの「子どもが苦手で、接するのが耐えられない」と気付く学生も増えています。自分の適性をしっかり見つめることも重要です。センター試験の過年度卒業生(浪人生)の数は、その前年度に大学を志望しながら入学できなかった受験生数より10万人ほど多く、その大半は、大学に在籍しながら別の大学を目指す〝隠れ浪人〟と見られています。大学全入時代の今、ミスマッチは最大の問題になっています。
大学6年制化と社会人受け入れへ大学院拡充
医学部や薬学部などは6年制ですが、工学など他の理工系も大学院修士課程への進学がスタンダードになっています。大企業も、理系の大学院修了者を優遇しているので、今後も理工系高等教育の6年制化は進むと見ています。
一方、文系でも、法曹界志望者は法科大学院進学が必要とされています。また、教育学部も6年制化すべきという議論があります。文系大学院は、その修了者を社会や企業が評価して、受け入れるのか、という課題が残っています。上位の有名大学院を除くと、文系大学院は定員を充足していないところも多いのが現状です。しかし、高等教育の高度化などを背景に、文系でも、米国で人気の高いビジネススクール・経営大学院のような大学院を志向する動きは強まるでしょう。
18歳人口減少の時代に、大学が学生数を維持、増加させるには、高等教育の6年制化と、社会人学生の受け入れのための大学院拡充がカギになります。働きながら大学に通う学生が減って大学夜間部(二部)が廃止される代わりに、社会人が働きながら通える夜間開講の大学院が増えています。社会に出た後に学び直したいと真剣に考えている社会人に対して、ビジネスに役立てられる学びを提供するビジネススクールをはじめとする社会人大学院は、一定のニーズを集めています。
郊外や地方の立地では、社会人を集めるのは困難ですが、都心部にキャンパスやサテライトキャンパスを持つ大学は、社会人の取り込みに今後も注力していくことになるでしょう。移りゆく時代の中で、大学・大学院は常に学部学科、研究科を見直しています。受験生、社会人の皆さんの希望に合った学びが見つけやすくなっているはずですので、情報をしっかり集めてください。