新増設大学

社会のニーズに合わせた
新設学部・研究科が続々と誕生

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2016年4月に新たに開設される大学の学部・学科、大学院の研究科が出そろった。来年度は、新設大学がゼロになる一方、各大学は、時代によって変化する社会ニーズに対応した新設・改組を加速。特に、医療・健康、グローバル化、地方創生をテーマにした学部学科、研究科の開設が目立っている。こうした大学・大学院のの動向について、大学通信常務取締役情報調査・編集部ゼネラルマネージャーの安田賢治氏に聞いた。

医療、国際、地域、スポーツ系が増加

近年は不況に伴う就職難と、高齢化に伴う医療系人材のニーズ拡大を背景として、医療系学部学科の新設が相次いできました。看護学部・学科は全779大学のうち240大学以上と、約3大学に1大学の割合で看護学科が設置されています。看護師は、主に専門学校や短大で養成されていたため、看護学科を置いているのは10大学程度だった約30年前に比べると、その増加は突出しています。2016年度も琉球大以来37年ぶりにとなる医学部が東北医科薬科大学に設置され、医療系学部学科の増加の勢いは続いています。
医療系以外では、今や100を超える大学に設置されている国際系学部の増加が目立ちます。従来の国際系学部は英語と外国文化を学び、国際教養を身に付ける人文科学系教育が中心でしたが、最近は、国際的に活躍できるビジネスパーソン育成を前面に掲げる大学も増えているのが特徴です。文部科学省が文系学部見直しを打ち出したこともあり、国立大学でも、国際系学部新設が目立っています。

大学通信 学校戦略支援センター
情報調査・編集部ゼネラルマネージャー
常務取締役
安田 賢治
1956年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大学通信入社。中学受験から大学受験まで幅広くカバーし、書籍編集とマスコミへの情報提供を担当。各誌への執筆も多い。著書に『笑うに笑えない大学の惨状』(祥伝社新書)などがある。

また、国際系とは対照的な地元密着型で地域課題解決の担い手育成を掲げる地域協働学部、地域創造学部、地域デザイン学部といった地域を冠する学部も増えています。最近、地方の高校生は東京に出ずに、地元大学に進学して、地元での就職を目指す傾向が強まっています。地方での就職を志向する地域系学部も安定した人気を集めています。

また、スポーツ好きの高校生らをターゲットにしたスポーツ科学系も、カレッジスポーツ強豪大学を中心に設置されています。こうしたスポーツ、旅行・観光、マンガ、映画など趣味的なものも含め、高校生の興味を引く分野を体系的な学問として深く学ぶことのできる多彩な学部が作られているのも最近の特色です。大学の大衆化で、大学進学の意味、大学の学びそのものが変わってきた、とも言えるでしょう。

90年代から09年までは大学進学率は2倍近く伸びたことで、18歳人口減少にもかかわらず、進学者数は増加しました。その後は横ばいが続いています。しかし、これ以上の進学率上昇は期待できず、今後は18歳人口減少の影響が進学者数にまともに反映される「2018年問題」が始まります。私立大学は、生き残りをかけて、社会のニーズにあった学部学科を作る必要に迫られているのです。

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