投資対効果を最大化する「自律型AI」戦略の本質 【セミナー】AI投資の先にある「経営戦略」

フォーラムでは冒頭、UiPath株式会社 会長CEOの長谷川康一氏の次のような提起から始まった。
「2025年はエージェンティックAI元年と言われています。その中でどういったAI戦略を採るべきなのか。UiPathは2017年、RPA(Robotic Process Automation)の会社としてスタート。皆さまの生産性向上に貢献してきましたが、エージェンティックAIの登場によって、今後、生産性をさらに向上できると考えています」
UiPathのAI戦略とは、定型業務はシステムで実行し、「エージェンティックAI」がその業務の結果をもとにとるべき次のプロセスを判断、人間がそれを承認していくというもの。いわば、人は作業ではなく、「承認すること」に注力することで本質的な生産性向上を目指す。AIエージェント、ロボット、そして人間の3者が連携すれば、単なる効率化を超えてAIと人が共に価値を生み出し、本質的な経営改革の可能性を広げるだろう。
長谷川康一氏
UiPath 創立者兼CEOのダニエル・ディネス氏もこう語る。
「これまで当社は欧米や日本で多くの有力なお客様に恵まれてきた実績があり、私たちは、システムが自律的に機能する『エージェンティックオートメーション』こそ、本質的な業務効率向上の成果を上げることができると考えています」
エージェンティックオートメーションでは、ユーザーのすべてのログと分析データを集約したうえで、社内の基幹システムと組み合わせる。それにより、ユーザーの業務を学習したAIが、取るべき行動を理解して自律的に機能していくというわけだ。ディネス氏はこうも言う。
ダニエル・ディネス氏
「私たちのテクノロジーは、基幹システムを拡張し、人間とロボットがどのようにやり取りしているか、あるいは、人間がどのような決定を下しているか見ることができます。私たちは日本企業との取り組みを通じ、複数のシステムをつなぎ合わせ、業務プロセスを自動的に制御・管理する有用性を示したいと考えています」
人、AIエージェント、ロボットの統合により
高度な付加価値を生むことができる
続いて登壇した、UiPathの最高技術責任者であるラグー・マルパニ氏は、企業・組織が実際のビジネス課題を解決するためにエージェンティックオートメーションを導入・活用する方法やベストプラクティスについて紹介した。
「まず現状を見ると、生成AIに数十億ドルが投入されているにもかかわらず、企業の95%はAI投資に対するROIを得られていません。生成AIが役立っているのは、よりシンプルなタスクやプロジェクトを支援することであり、ROIの達成に向けて、私たちの目の前にはまだ多くの課題が残っているのです」
では、どのようにすればROIを達成できるのか。マルパニ氏が続ける。
「現在、企業内には複数の業務があり、複数のシステムや複数の人々が、複数の部門を横断してタスクをこなしています。これらのタスクの多くはルールベースの定型業務であり、高い信頼性とスピードを必要とします。一方、一部は人間の判断が必要になります。そこで、人、AIエージェント、ロボットを統合的に活用することで、定型業務はもちろん、人間の意思決定を必要とするプロセスまで一貫して高度な付加価値を生むプラットフォームを提供しています」
ラグー・マルパニ氏
そのプラットフォームこそ、エージェンティックオートメーションのためのオーケストレーション(※)プラットフォーム「UiPath Maestro」だ。このプラットフォームは複雑なプロセスでも可視化、自動化、ガバナンスを一体化してコントロールできるプラットフォームで、AIエージェントとロボット、人と人との協業を統合的に管理し、より高い生産性を担うことができる。まさにAI投資から価値を生み出すカギであり、効果的なエンジンになるとマルパニ氏は強調する。
「例えば、請求処理、クレーム処理の業務は、多種多様なドキュメント、多量の手作業が存在し、業務が行き来を繰り返します。しかし、エージェンティックオートメーションならば、こうした複雑なプロセスを適切にコントロールできるのです」
80~100万時間を削減でき、
コストダウンを行うことができた
AI自体が思考・判断する「エージェンティックAI」の登場は、業務の自動化を新たな次元へと引き上げる可能性を秘めている。フォーラム後半のセッションでは、先進ユーザー企業が語るリアルな実践知をもとに、自律的に進化する次世代ビジネスプロセスをいかに構築するかについて、三井住友フィナンシャルグループ経理業務部 部付部長の山本慶氏、パーソルワークスイッチコンサルティング社長の小野隆正氏、東京エレクトロン業務デザイン戦略本部 デジタル統括ユニット ダイレクターの柿良幸氏が語り合った。
まずUiPath導入の経緯と成果について、山本氏は「ITリテラシーの高いシステム部門やDX部門が推進するプロ開発と、ITリテラシーがそれほど高くない各部門による現場開発(市民開発)の両輪で施策を推し進めることができるソリューションとして、検討当時は唯一無二の製品であったため、導入しました。従業員を戦略的事業領域にシフトさせるため、既存の業務をRPAに代替させつつ、抜本的な業務見直しを断行し、結果として600万時間、行員にして3000人分の圧倒的な生産性向上を実現しました」と言う。
山本 慶氏
小野氏は「UiPathとはパートナー契約を結び、パートナーとしてお客様にサービスを提供するほか、ユーザーとしてパーソルグループ内でも利用しています。2017年は長時間労働対策ニーズが高く、パートナーとしての成功事例を残せました。パーソルグループにおいては約5万人の従業員がいる中で、80万~100万時間を削減できました」と言う。
柿氏は「ERPの導入を進める中、それまでのメインフレームとの操作性のギャップによるトラブルを懸念し、その準備の一環としてRPAを検討するなかでUiPathの導入が進みました。エンタープライズシステムとの連携を目指して設計し、導入したことでERP導入初期に発生したデータ入力の遅延も早期に解消することができました」と語る。
柿 良幸氏
UiPathの強みと課題について、「大規模でもデスクトップレベルでも使え、マルチで使い勝手が良い。日本市場にフィットしたアップデートもできます」(小野氏)、「強みは高いユーザビリティと信頼できるパートナーシップです。我々の業務にはミッションクリティカルなものが多く、信頼性を非常に重視していますが、安定的にRPAが実行できる上、グローバルでシームレスに使用できることも心強い」(山本氏)、「起きた課題への対応が早く、すぐに解決されるため、課題が起きても、それほど心配していません。フィードバックに対して真摯に対応してくれる姿勢がUiPathの強み」(柿氏)と話した。
これから労働人口が減少していく中、
本質的な価値を提供できる人材が生き残る
では、今後エージェンティックオートメーションをどう活用していけばいいのか。柿氏は「ビジネスプロセス単位で活用することが重要。UiPath Maestroはビジネスプロセス単位での管理が可能で、またその粒度を自由に設定でき、更に人・AIエージェント・ロボットを組込むことができる。ビジネスプロセスを自動化することに対する現時点での完成形と言っても過言ではない。」と語る。山本氏は「効率化の取り組みでは、業務プロセスの抜本的な見直しとRPAへの代替により業務全体の75%を自動化しました。現在はエージェンティックオートメーションを主軸としたミドル・バック業務の在り方も含めて業務をリデザインし、90%の自動化を実現するフェーズにあります」と語る。
小野氏は「経費精算をチェックする業務がコロナ禍以降増えており、ビジネスプロセスをUiPath Maestroでモデリングするアプローチで使いたい」と述べた。
小野 隆正氏
AIに興味はあるが、エージェンティックオートメーションを知らない人はまだ少なくない。このプラットフォームを使って、どのように対処していけばいいか。
「労働市場を調査する中で、人とAIの在り方に関する問い合わせが増えました。AI活用ではイノベーションを起こす活用と、企業として効率化のための活用があり、今後は現場の業務ユーザーを巻き込んだAIエージェント活用が重要になってきます」(小野氏)、「経営層からAIに関するオーダーが増えていく中で、あくまでもAIを導入することは手段であって目的ではない。会社の変革を起こすことが重要。UiPath Maestroの総合力に期待しています」(柿氏)とそれぞれ展望を語った。

そして最後に山本氏が次のように語ってくれた。「労働人口が減少していくこれからは、本質的な価値を創出・提供できる人材こそが生き残っていくでしょう。自分は何のために業務に従事するのかという目的を理解し、自身の価値を証明することが重要です。そのためには、高い視座から業務を俯瞰、細分化して、目的のために再構築する力が必要となり、次の成果を早期かつ効率的に獲得する手段として、徹底的にAIを使いこなすことが求められるのです」。
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