LINEミニアプリで導き出した販促DXの最適解 サントリー自販機が「最強のデジタル接点」に

縮小市場でも成長。自販機を「重要接点」と捉える狙い
2024年末の飲料自販機数は約220万台と前年比99.1%まで減少しており(日本自動販売システム機械工業会「普及台数2024版」)、市場は縮小傾向にある。そうした潮流の中で、変化を先回りして顧客接点強化に向けた施策を講じているのが、自販機事業を担うサントリービバレッジソリューションだ。
「多角的な食品事業を展開するサントリーグループの中でも、自販機事業は極めて重要な顧客接点です。法人向けサービスの拡充や品揃え強化、キャッシュレス推進、キャンペーン施策まで幅広く打ち手を重ねてきました。こうした取り組みの成果もあり、2025年度の売上実績は、市場平均を上回る水準で推移しています」
そう説明するのは、同社マーケティング本部マーケティング部の久下真理恵氏である。そのため、自販機の利用頻度向上と差別化を同時に実現できるキャンペーンは、数ある施策の中でも極めて重要な位置づけにあるという。
マーケティング本部 マーケティング部
久下 真理恵氏
そのキャンペーンの中核を担うのが「Touch! SUNTORY」だ。自社の自販機に設置したQRコード※1を読み取るだけで、抽選、ポイント付与といったキャンペーン体験を開始できる仕組みだ。久下氏は「利用者の新規獲得と継続利用の双方を促す」ことが同施策の狙いだと説明する。
「Touch! SUNTORYで取得する情報には、LINE上で取得可能な情報のうち、電話番号や住所といった個人を特定する情報は含まず、ユーザーIDと属性、応募履歴といった必要最低限の情報に限定しています※2。それでも、利用頻度の傾向や応募した企画からの嗜好分析、性別・年代の傾向把握などが可能になるため、次の施策設計に生かしています」
LINEミニアプリでアナログの制約を突破
「ダウンロード不要」で新たな販促体験を
「Touch! SUNTORY」は2021年から運用を開始したが、3年目にあたる2024年2月、運用の基盤をLINEミニアプリへと完全移行した。
「Touch! SUNTORY」導入以前は、ペットボトルや缶に貼られたシールをめくって応募するアナログ施策が主だった。ただその施策は、商品を購入して手に取るまではシール付き商品かどうかわからない上、シールを剥がす手間もあるといった状況だった。
「お客さまにとってより良い体験を」と考え、LINEミニアプリへの移行を決めた。
新たにアプリをインストールする必要がなく、QRコードやリンクなどをきっかけに、LINE上ですぐに使い始められる。キャンペーン施策についてもLINEで展開し、スタンプ・ポイント付与や懸賞へのスムーズな応募を可能にした。「Touch! SUNTORY」において重要だったのは「すぐ始められること」だった。自販機の前に立ち、商品を選んで購入するまでの時間はほんの数十秒。その限られた滞在時間の中で、キャンペーン告知物やQRコードがふと目に留まる。その一瞬の関心を、その場で抽選やポイント付与といった体験につなげられる点こそが、LINEミニアプリ最大の価値だ。
「アプリのダウンロードという、高い壁を作るべきではないと考えました。加えて、LINEミニアプリはいちからアプリを開発する手法に比べて納期が短く、やりたいことをスピーディーに実現できる点も後押しになりました」
また、その体験を一度きりで終わらせない設計ができる点も大きい。LINEミニアプリは、企業がLINE上でユーザーと友だちとなり、情報発信やコミュニケーションを行う仕組みである「LINE公式アカウント」と自然な形で連携できる。そのため、キャンペーン体験を起点に、次の企画や情報提供へと自然につなげていくことができる。
戦略的なコラボレーションも功を奏している。直近では、全国に店舗を持つ「ケンタッキーフライドチキン」や、熱量の高いファンを抱える「ちいかわぽけっと」との企画が大きな反響を呼んだ。
「ケンタッキーフライドチキンとのコラボでは、15万名に『チキンフィレバーガー』の無料券を抽選でプレゼントしました。当選者へ来店時に引き換え可能なチケットをデジタル配布したのです。全国チェーンの利便性も相まって盛り上がり、応募数も非常に多い企画となりました。また、『ちいかわ』初のスマホゲーム『ちいかわぽけっと』とのコラボは、キャンペーンに応募すると、その場で必ずゲームアイテムがもらえるコースと、グッズが当たる抽選コースの2種を用意。外れても壁紙がもらえる点も好評でした。こういったコラボ企画が、新しいお客さまを自販機に呼び込んでくれています」
利用者数が2桁成長 LINEミニアプリと創る
サントリー自販機との継続的な接点
2025年12月時点での「Touch! SUNTORY」年間利用者数は、前年比2桁増を記録し、当初の想定を上回った。この成果は、キャンペーンへの参加の障壁の低さと企画力の相乗効果によるものだ。
「人気の企画が新しいお客さまを呼び込めていることが好調の要因です。『すぐに応募できて簡単だ』という声が多く寄せられており、参加までの流れが分かりやすい点も、大きな理由だと思います」
自販機を「長く愛される場所」にするためにサントリーが見据えるのは、キャンペーンの瞬間だけでなく、自販機そのものを継続的に利用してもらう未来だ。そのために、購買を伴わない参加型の仕組みもさらに磨き上げようとしている。
「キャンペーンが終了すると利用が途切れてしまうケースもありますが、私たちはサントリーの自販機を長くご利用いただきたいと考えています。そこで、現在1日1回スタンプを貯めて抽選に参加できる『TOUCH THE WORLD』という購買不要の企画を実施しており、今後はこうした企画をさらにブラッシュアップしていくつもりです。継続的な利用動機を作ることがこれからの挑戦になります」
「Touch! SUNTORY」の成功の本質は、競合もさまざまなキャンペーンを実施している中で、利用者が参加するまでのハードルをいかに下げられるかという点にある。自販機という限られた接点において、アプリのダウンロードや会員登録といった工程は、それだけで参加の妨げになりかねない。だからこそサントリーは、すでに多くのユーザーが日常的に使っているLINEを基盤に、ダウンロード不要で迷わずすぐに体験できるLINEミニアプリという形を選択した。参加までの手順を削ぎ落とす。このシンプルな設計思想こそが自販機を「売り場」から「デジタルな顧客接点」へと進化させた原動力となっている。





