外国人材が「戦力」になる会社、ならない会社の差 人口減ニッポンで勝ち抜く外国人材の生かし方

外国人採用は「調整弁」から「中核戦力」へ
近年、外国人採用を、重要な成長戦略と位置づけている企業は少なくない。その1つが千葉県で不動産仲介業「アパマンショップ」を展開するアービックだ。同社は昨年からベトナム人、ネパール人を含む計6人の外国人材を技人国(高度人材)で採用。すでに国境の垣根を越えた需要を取り込むため、ネパール人店長を中心とするグローバル店舗業務を開始し、外国人入居者向けのサービスを強化している。
同社に外国人材紹介サービスを提供したグローバルトラストネットワークス(以下、GTN)の後藤裕幸社長は、外国人材の活用企業が増えている背景を次のように解説する。
代表取締役
後藤 裕幸
「多くの業界で外国人材のニーズはあります。例えば運送業は荷物やトラックがあるのにドライバーが足りない。宿泊業はインバウンドの追い風が吹いていますが、従業員が少なくて稼働率を50%に抑えているという旅館もあります。このままでは商機を逃すと危機感を抱いた企業が、外国人材の採用に積極的になっているんです」
数字で確認しよう。日本の生産年齢人口(15~64歳)は、2025年1月に前年比で50万5950人減少※1。近年は女性活躍や高齢者雇用も進んできているが、例えば65~69歳の労働参加率は50%※2、15〜64歳の女性の就業率は23年時点で70%を超える※3など、いずれもすでに高水準に達していて、国内人材は総動員の状況にある。この状況下で伸びしろがあるのは外国人材だ。
「昔から雇用の調整弁として外国人材を活用する企業はありました。しかし、現在の人手不足は構造的な問題であり、景気に関係なく中長期的に続くことが予想されます。今、企業が求めているのは長期雇用できる人材です」
企業のニーズの変化を受けて、政府も外国人材の定住化に舵を切った。19年には、従来の課題が指摘されてきた「技能実習」に代わり、新しい在留資格「特定技能」での受け入れを開始※4。
「『技能実習』は在留期間が3年、最大でも5年でした。手間やお金をかけて育成しても短期で帰国するなら、企業は最初から受け入れる気になりません。『特定技能』や、さらに後継となる『育成就労』※5の導入が決定したことで、企業は外国人材を育成して中核の戦力として活用しやすくなりました」。一方で、ビザ更新には社会保険料の未払いや労働時間の厳格な順守が求められ、違反すればせっかく採用した社員でも在留資格を失うリスクがある。企業側には、日本人社員とは異なる厳格な法令順守と、その管理も求められているのが現実だ。
外国人材が抱える不安をいかに取り除くか
外国人材の活用を成功させている企業に共通するのは、人件費削減ではない「熱量」を持って採用に臨んでいることだ。企業トップ自らが推進役となって強い責任感と覚悟で受け入れを進める傾向がある。
また、外国人材は「この会社で出世できるのか、キャリア形成できるのか」という不安を抱えやすく、生活環境のケアだけでなく、明確なキャリアパスの提示やメンター制度を通じた相談環境の整備が、定着において非常に有効だ。採用がうまくいかない企業や消極的な企業は、この「ケア」の難しさにつまずいているという。
「環境が整っていないことが原因で、外国人材が不安や孤独を感じて退職・帰国するケースは後を絶ちません。労働環境だけではなく、生活環境も含めてケアできないと、ちょっとしたことをきっかけに『差別を受けている』と感じることもあり精神的な負のスパイラルに陥ってしまう。外国人材に力を発揮してもらうには、外国人材が安心して働ける環境を整える必要がありますが、そこでつまずいて後ろ向きになっている企業もあるとみています」
どうすれば受け入れ環境を整備することができるのか。企業にとって頼みの綱は、外国人材紹介会社や特定技能登録支援機関によるサポートである。人材定着に向けてしっかり伴走してくれるパートナーを選ぶことが重要だ。
信頼できるパートナーを見分ける際に参考になるのは、パートナー自身が外国人材を活用しているかどうか。
外国人雇用にまつわる苦労は当事者でないとわからない部分がある。当事者として実体験に基づくノウハウを持つからこそ、受け入れ企業や外国人材に適切な支援ができる。
GTNは06年に創業し、外国人専門で生活インフラサービスを展開してきた。いまや外国籍社員が約7割を占めているが、当初は失敗も多かったという。
「中国人スタッフから『春節に帰省したい』と相談があり、『日本のお正月に休んだばかりじゃないか』と言ったら、翌日にそのスタッフが退職届を持ってきたということがありました。日本文化に固執せず各国の文化基準で過ごす余白を持てるよう年間120日の間で自由に長期休暇を取れる仕組みに変えました。実体験に基づいて外国人雇用のノウハウを提供できるのは強みの1つです」
受け入れ企業への支援だけでなく、日本で働く外国人材本人へのサポートも手厚い。
特定技能の登録支援機関は3カ月に一度、特定技能外国人と定期面談することが義務づけられているが、GTNは入社後半年まで外国籍社員による面談を毎月実施している。
日本の職場になじもうとしている外国人材にとっては非常に心強い存在だろう。
日本の暮らしに欠かせない住居・通信・金融を提供
GTNは就労のサポートだけでなく、外国人向けに生活支援サービスも提供している。
日本に来た外国人がまず困るのが住居だ。外国人であることを理由に入居を断られるケースは多いが、GTNは家賃保証や賃貸仲介のサービスを提供し、住まいをサポート。 社宅向けにGTN自身が物件を借り上げてサブリースで提供するサービスも展開している。
与信がなく銀行口座やクレジットカードを持つことができない外国人にとって、携帯電話の契約もハードルが高い。
「通信のニーズに対しては、後払いでコンビニ決済できる格安SIMサービスを提供しています。そうした通信サービスを多言語で提供し、かつ空港で手渡しできるのは当社独自の強みです」
また、クレジットカードや銀行口座の開設の難しさにも対応している。GTNは丸井グループと提携して、外国人専用の「GTNエポスカード」を提供。さらに25年11月には東京スター銀行と金融アプリを通じた銀行口座の開設に関する協業を開始した。
家賃や携帯、クレジットカードなどの生活インフラサービスは、サービス提供企業から見ると料金未回収のリスクが付きまとう。それゆえ与信データがない外国人材は拒否されがちだが、なぜGTNはサービスを提供できるのか。後藤社長はこう明かす。
「債権をGTNが引き受ける形でサービス提供企業と提携しています。GTNは未払いのリスクを負いますが、日本に来る外国人材の在留情報やご両親の住所を確保しているので、帰国後も回収が可能です。また、これまで累計利用・支援者数は70万以上に上り、そのデータを審査に生かしています。外国人に特化した生活インフラサービスを長年展開してきたからこそ、リスクを自ら負えるのです」
とくに、企業が最も懸念する家賃や携帯料金などの「未払金」については、GTNがすべての責任を引き受けることで、受け入れ企業が安心して外国人材を雇用できる環境を担保している。生活まで含めてサポートすれば、日本に慣れていない外国人材も定着しやすい。そうしたサービスをワンストップで提供していることが、GTNが外国人材を求める企業に選ばれる最大の理由だ。
最後に後藤社長は、外国人材の活用に踏み出せない企業にメッセージを送る。
「外国人を受け入れる最大のメリットは人手不足を補うということ以上に、その会社やサービスの事業機会の拡大、つまりイノベーションを促す点にあります。日本の人口減少が避けられない中で、外国人の心理を理解することができない会社は、国内でもいずれイノベーションを起こせなくなるんじゃないかと思います。日本に暮らす外国人が増えればそこをターゲットにしたビジネスを開発しなければいけませんし、新たな市場を求めて海外に打って出るときも、日本人だけの発想ではグローバルニーズには対応しきれない。国・地域ごとのニーズを理解する外国人材の存在が、企業の競争力を左右します。そうした、グローバル視点でのイノベーションを起こすためにも外国人材を採用すべきです。言語や文化の異なる人材が入社すればトラブルは起きるものですが、そこは私たちがサポートできます。成長を続けるために、ぜひ一歩踏み出していただきたいですね」
※2 総務省統計局「労働力調査」(「敬老の日」にちなんだ統計トピックス、内閣府「高齢社会白書」(令和6年版))
※3 総務省統計局「労働力調査」(基本集計、年平均速報)
※4 当初は14の専門的・技術的分野について、「特定技能1号」なら通算で上限5年の在留を可能とした。そして、2023年6月の閣議決定を経て、24年以降、従来の特定産業分野とその他分野を再編・統合し、介護、建設、宿泊、農業、外食業など12の分野となっている。このうち、要件を満たせば「特定技能2号」に移行する道が11分野すべてに拓かれ、更新回数の上限がなくなり、家族の帯同も認められるようになっている。特定技能1号2号の在留資格者は、25年6月末時点で約34万人。政府は28年までに特定技能1号2号の受け入れ上限をおよそ80万人に設定している
※5 特定技能へ移行できる水準の技能習得を主な目的とする制度。2027年4月1日に施行される




