粉飾事件で逮捕「旧すてきナイス」元経営者がやり直し裁判で逆転無罪の真相――「会計基準」を無視して暴走した地検の"誤算"と6年半の苦闘

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今回の主任弁護人で「無罪請負人」とも呼ばれる弘中惇一郎弁護士は、「企業は決算対策でいろいろと工夫する。こういう見解に立てばこの売買は否定されるべきといった領域まで検察が刑事事件として捉えること自体を自制すべきだ」と指摘した。

つまり、企業の経済活動は多様なので、ある決算処理の方法だけが正しいとして刑事罰が課されると、経済の活力が削がれる原因になりかねないということだ。

では、このような事案が事件になったのはなぜなのか。弘中弁護士は「平田さんに恨みを持つと思われる会社関係者から、検察に対するたれ込みがあったようだ。会計基準を検討せず、頭から架空取引だけで勝負して、無理やり起訴した感じを持っている」と話した。

平田さんも「怪文書のような内容の公益通報を装っての告発から、なぜか粉飾事件に作られていった」と経緯を語った。

証券取引所では「不適切な会計・経理」が毎週のように発表される。調査会社の東京商工リサーチによると、2024年度には67件確認され、4年連続で増えている。

こうしたなかから証券取引等監視委員会が調査を行い、金融庁が課徴金の納付を命じる企業もある。有報の虚偽記載による課徴金命令もあり、今年度はすでに10社が命じられた。ナイスも横浜地検の摘発後の2020年度に2400万円の課徴金を支払った。

同年度は有報の虚偽記載で6社が命じられた。最も多額だったのは液晶パネルのジャパンディスプレイ(JDI)で、21億6333万円、最低は600万円だった。課徴金の額は、企業の時価総額の大きさや不正の期間によって決定されるが、ナイスの課徴金は2番目の低さだった。

課徴金を支払った残りの5社が粉飾事件になったという話は聞かない。それだけに、会計関係者の間には「捜査対象が恣意的に選ばれている」という声が絶えない。

「結論ありきの捜査」との指摘も

会計基準に照らして立件された粉飾事件は珍しい。それどころか、2008年の旧日本長期信用銀行事件や2011年の旧日本債券信用銀行事件は、会計基準に照らした判断の結果、逆転無罪となった。

示された判決理由は、「従来の会計基準で査定しても違法だったとはいえない」などで、いずれも「国策捜査」と見られ、結論ありきの捜査だったとの指摘がある。

もちろん、健全な株式市場の発展のためには、粉飾事件には目を光らせる必要がある。一方で、企業には決算書という「証拠」がある。検察側には見込みに基づいて「自白」を求める捜査ではなく、会計基準に照らして決算書を分析する客観的な立証を期待したい。

松浦 新 朝日新聞記者

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まつうら しん / Shin Matsuura

1962年愛知県生まれ。東北大学卒業後、NHKに入局。1989年朝日新聞入社。東京本社経済部、週刊朝日編集部、特別報道部、経済部などを経て、2017年4月からさいたま総局。共著に『ルポ 税金地獄』『ルポ 老人地獄』(ともに文春新書)、『電気料金はなぜ上がるのか』(岩波新書)、『プロメテウスの罠』(学研パブリッシング)ほか。

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