粉飾事件で逮捕「旧すてきナイス」元経営者がやり直し裁判で逆転無罪の真相――「会計基準」を無視して暴走した地検の"誤算"と6年半の苦闘
検察側の主張は崩れたのだから、無罪を出してもいいはずだが、東京高裁は「取引の実体がないとはいえないと判断される場合には、会計基準に照らして、虚偽といえるかどうかが必然的に次に争点になる」などと指摘して、横浜地裁に差し戻した。
その後、2023年7月に最高裁の上告棄却決定があり、差し戻された横浜地裁で会計基準だけを争点とすることとなった。
ところが、検察側の対応が遅れ、同年12月までに証明予定事実記載書面などを提出するはずが、結果的に24年7月になった。裁判が始まったのは昨年3月に入ってからだ。
平田弁護団は記者会見で、「改めて裁判で開示された記録を全部洗ったが、『会計基準』という言葉が一言も出てこない。(検察は)会計基準違反が争点になると本当に想定していなかったのだろう」と明かした。
有報の虚偽記載にあたるか?
差し戻し審では、検察側は日本の会計基準を決める民間機関「企業会計基準委員会」の委員長などを歴任した会計士の西川郁生氏を、弁護側は筑波大学大学院教授などを歴任した会計士の弥永真生氏を証人とし、難解な会計の議論を交わした。
検察は9月の論告で、会計基準には、対価の支払いが確実にならなければ決算書に売上高の計上が認められない「実現主義の原則」があると主張。平田氏が実質的に支配する会社によるナイスの不動産買い取りは、ナイスのグループ会社が融資した資金によるものだった。
そのため、ナイスグループとしては対価の支払いを受けたとはいえず、有報の虚偽記載にあたると指摘。元会長に懲役2年6カ月、元社長に懲役1年6カ月を求刑した。
これに対して、横浜地裁・佐藤卓生裁判長は「検察官の主張する会計基準の解釈あてはめは、1つの有力な見解であるとはいえるものの、本件当時、それ以外の会計処理のあり方を許さないような唯一の確立した会計基準の解釈あてはめであったとまでは認められない」などと指摘。「本件の会計処理が会計基準に照らして許されないものであったとまでは認められない」と、無罪判決を言い渡した。
これは、弁護側の主張に沿ったものだった。
こうした表現だと、決算書がグレーゾーンだったようにも見えるが、弁護団は会見で、「それ以外の会計処理ではダメだといえる会計基準がなければ刑事罰を科す違反にはならないが、そこまでの基準は見当たらなかったということになる」と見解を示した。
ポイントは、経済活動の結果を表す決算書の会計処理は、答えが1つではないということだ。例えば、東京証券取引所の上場企業がとることができる会計基準には実質的に3つある。日本会計基準、国際会計基準、米国会計基準で、採用する基準によって、売上高も利益も変わる。
会計基準でさえ選べるのに、個々の会計処理となると、選択肢はさらに広がる。





















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