首都圏空港の機能強化が、日本をより強く元気に 成田/羽田のデュアルハブで空港間競争に勝つ

羽田の年間発着容量は約50万回。成田も約1.5倍増加で50万回へ
航空ネットワーク部長
田口 芳郎 氏
「1978年に成田空港が開港して以来、国内線は羽田、国際線は成田という歴史が長く続いてきました。しかし、成田の滑走路はサッカーの日韓ワールドカップが開催された2002年まではわずか1本。その後、B滑走路の新設や延伸を行ってきましたが、空港の発着容量はいまだにソウルや上海の国際空港よりも少なく、時間帯によっては、新規増便や新規就航の要望に対応できない状況です。わが国が世界とつながるチャンスを逃さないためにも、羽田と併せて、首都圏空港の機能強化が急務となっています」と国土交通省 航空局 航空ネットワーク部長の田口芳郎氏は語る。
20年には都心上空を通過する新飛行経路が導入され、羽田空港の年間発着容量は約50万回となり、国際線枠も約13万回に増加した。羽田空港の強みを生かして、国内線との乗り継ぎ円滑化も進んでいる。
「羽田の第2ターミナルでは、25年3月よりサテライト部分と本館部分が接続され、バスを使わずに搭乗できるスポットが増えました。今後も引き続き、ターミナル整備を進め、さらなる利便性の改善を図っていきます。ただ、羽田のこれ以上の容量拡大は容易ではなく、首都圏空港の機能強化の観点からは、現在進めている成田の滑走路整備事業等が極めて重要です。完成すれば、年間発着容量は羽田と同等の50万回に、1時間当たり発着容量も羽田を上回る98回に増加し、ピーク需要にも対応が可能となります。また、運用時間も空港全体として5時から24時半までに拡大する見込みです」
成田空港は国際線というイメージが強いが、24年の国内線旅客数は国内第6位。成田空港から地方へ移動するケースも増えている。
「かつては行き先によって利用空港が決まっていました。これからは航空会社とも連携し、成田・羽田両輪での航空ネットワーク形成を進め、利用者のニーズにより使い分けられるデュアルハブ戦略を推進していきます」
2028年度末メドの完成に向け、C滑走路の新設等の機能強化を進めている成田空港。これにより、年間発着容量は約50万回に
成田空港周辺の機能を強化。羽田は東京駅との直結線も
成田空港では、新滑走路の整備等により、航空貨物量は現在の1.5倍の年間300万トンに増加することが見込まれている。そのため、空港内に分散する貨物施設の集約・大型化や、自動化等による生産性の向上を進めることとしている。
「世界のハブ空港は、最先端の自動化設備を導入し、徹底した効率化を目指しています。人手不足が年々深刻化する中、成田でも世界に冠たる新貨物地区を整備し、乗り継ぎ・乗り越し需要を積極的に取り込んでいきます」
成田は金額ベースでわが国最大の貿易港となっており、周辺には多くの物流関連施設が立地しているが、都心・羽田空港との間の膨大な物流をさばくことが課題。そのため、道路ネットワークの整備も進められている。
「現在、圏央道は、成田周辺がミッシングリンクとなっていますが、2026年度には開通予定です。これにより、羽田まで、東関東道・湾岸道経由に加え、圏央道・アクアライン経由のルートも確立することから、渋滞の回避等による物流の効率化を期待しています」
道路と併せて、鉄道整備も進められている。
東京駅から18分で直通できる路線開通や京急線の増便など、羽田空港へのアクセス改善が進められている
「『成田は遠い』と言われるが、実は今でも、スカイライナーに乗れば、日暮里―成田空港間を最速36分で移動できます。今後は単線区間の複線化や東京都心・地方送客拠点へのアクセス強化といった課題に取り組み、さらなる時間短縮や利便性向上を図っていきます。
羽田においても、東京―羽田空港間を18分で直通できるJR羽田空港アクセス線や、京急線の増便を可能とする引き上げ線の整備を進めているほか、京急線と東急線を直結する事業もスタートします。極めて都心に近い場所に年間発着容量50万回クラスの羽田があるのは、日本の大きな強み。さらに成田―羽田間のアクセスの改善が進むことで、両空港が一体として機能し、世界と日本各地をよりスムーズにつないでいくことでしょう」
北米・アジアのゲートウェイに
旅客数は新型コロナウイルス感染拡大以前の水準に回復したものの、ビジネス需要の減少や円安等によるコスト(整備費、機材費、燃料費、人件費等)の上昇等、航空業界を取り巻く状況は依然厳しい。そんな中、成田・羽田それぞれの強みを生かした機能強化への取り組みは、航空産業のグローバル競争力の強化、攻めの航空ネットワーク戦略にもつながるのではないかと田口氏は期待する。
また、同氏は、首都圏のみならず、地方の活性化にも貢献できると語る。
「今や、地方に拠点を構えるグローバル企業も多数あります。首都圏の航空ネットワークが充実すれば、ビジネス目的での地方と海外の往来が活発になるほか、地方の産品の海外輸出も容易になる。半導体製造装置や医薬品、自動車部品のほか、農産品もです。地域の活性化が日本の成長の源泉となり、苦境にある国内線ネットワークの維持・活性化にもつながります」
国際線と国内線をつなぐハブ機能は充実している首都圏空港だが、一方で、国際線と国際線をつなぐ中継地点としての機能は、諸外国のハブ空港と比べてまだ弱いという。
「北米とアジア地域の間の人流・物流はまだまだ増加すると予想されています。この流れをいかに捉えていくかをめぐって、熾烈な空港間競争が行われています。この分野こそが、今後のわが国航空産業の伸び代であり、成長戦略のカギになってくると思います。また、わが国の経済安全保障上も、成田・羽田のデュアルハブが、北米・アジア双方向への代表的なゲートウェイとしての地位を確立していくことが重要と考えます。
成田・羽田の両空港の機能強化によって、空港の年間発着容量はともに約50万回に達します。一都市圏にこうした大規模な国際空港を複数擁するアジアの都市は、まだありません。日本が先駆けてデュアルハブを完成させることで、この空港間競争に打ち勝っていきたいと思います」
日本の経済安全保障を強化するとともに、全国の地域活力を高めていく、首都圏空港の機能強化の取り組みに、今後も期待したい。



