快進撃続く、注目の気候テック「アスエネ」とは? 【日本発で世界へ】M&Aにも積極的、その狙い

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企業にとってサステナビリティー活動は今や必要不可欠なものとなっている。2026年度から実施される改正GX推進法を前に、取り組むべき施策も増えている。その一方で、関税問題の影響もあり、企業の負担は増すばかり。こうした中、注目されているのが、Climate Tech(以下、クライメートテック)のスタートアップであるアスエネだ。企業の脱炭素の取り組みをきめ細かくサポートし、グローバルで事業を拡大している。なぜアスエネは多くの企業から支持を集めているのか。Founder 代表取締役CEOの西和田浩平氏に聞いた。

加速する企業のGXをサポート

企業のGX(グリーントランスフォーメーション)・ESG(環境・社会・企業統治)経営をサポートしているアスエネ

主力のCO2排出量の見える化・削減・報告クラウドサービス「ASUENE」をはじめ、サプライチェーンマネジメントクラウドサービス「ASUENE SUPPLY CHAIN」、AIエネルギーマネジメントクラウド「NZero」、カーボンクレジット・排出権取引所「Carbon EX」、GX・ESG人材特化型の転職プラットフォーム「ASUENE CAREER」、非財務データの第三者保証・アドバイザリー「ASUENE VERITAS」などの脱炭素マルチプロダクト群を展開している、クライメートテックの注目スタートアップである。

※気候変動対策に焦点を当てた技術やビジネスのこと

設立は2019年。現在までに累計115億円の資金調達を達成、シンガポール、アメリカなど6カ国に海外拠点を構え、日米6社のクライメートテック企業を買収している。

米TIME誌による“World’s Top GreenTech Companies 2025”では全世界8100社の中からTop100に選出された。

アスエネ
Founder 代表取締役CEO
西和田浩平

創業者の西和田浩平氏は三井物産出身。駐在したブラジルで買収した企業の経営の一端を担い、その面白さを知った。33歳のときに、脱炭素の領域で社会課題の解決をしたい、世界と日本のギャップを埋めたい、と1人で起業した。

いったいどこにビジネスチャンスを見いだしたのだろうか。

「グローバルで脱炭素の領域が伸びているのにもかかわらず、なぜ日本はこんなに遅れているのかと、ギャップをものすごく感じており、日本でもっと普及させないといけない。そんな確信を持って起業しました」

「AI、ワンストップ、グローバル」オペレーション力が強み

アスエネは25年で設立7年目。従業員数は410名にまで拡大している。中でも、いちばん成長している事業がサプライチェーンにおけるCO2の見える化・削減・報告ができるクラウドサービス「ASUENE」だ。次いでサプライチェーンマネジメントクラウドサービス「ASUENE SUPPLY CHAIN」、そして、アメリカで買収した事業であるAIエネルギーマネジメントクラウド「NZero」が好調である。

「生成AIのニーズの高まりを受け、データセンターの電力が足りないといわれています。『NZero』は、1時間当たりの電力量を可視化し、効率的に使用することで電気代を下げるソリューションを提供しており、関税コストが高まる中、製造業やデータセンターなどを中心に導入が伸びています」

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社名にも冠されている、CO2排出量の見える化・削減・ 報告クラウドサービス「ASUENE」

気候変動対策にテクノロジーを掛け合わせることで、企業に脱炭素ソリューションを提供しているアスエネだが、多くの企業から支持を得ているのは、次の3つの理由からだ。

まず1つ目が、先進的なAI活用。ソフトウェアにAIエージェントを搭載し、世界の脱炭素の知見を読み込ませ、そのナレッジを基に企業側のデータに応じて、どのように削減すればいいのか提案できる。また、情報開示の点でもCDPやCSRDなど、開示要件に合わせたレポートの数字や文章の大部分をAIで自動生成してくれる。

2つ目がワンストップソリューション。「クラウドのソフトウェア提供からコンサルティング、非財務全般のESGデータの回収、電気代削減とCO2削減、カーボンクレジットの調達、GX人材の教育やサポートまで窓口1つで対応しています。脱炭素のことなら何でもアスエネでワンストップで対応できる。当初から、そうした戦略をもって事業構築を積み重ねたことが差別化になっています」

3つ目が大企業向けにグローバルでサポートできること。日本だけでサプライチェーンを完結している大企業は少なく、グローバルでサポートしてほしいというニーズが高いため、多言語対応はもちろん、現地の人間が現地時間で相談できる窓口を擁し、海外6拠点でオンサイトでのサポートを行う。

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短期間での急成長も注目される要因だ

そのうえで、さらにアスエネの大きな強みとなっているのが、オペレーショナルエクセレンスだ。例えば、即レス力。どんな問い合わせでも、その日中に回答するようにルール、仕組み化している。とくに効率経営のためにストレッチオペレーション(現在の延長線上にない高い目標を掲げ、高い利益率を目指す多面的な施策)を創業時から導入しているのだという。

「とくにスタートアップは、テクノロジーが強いだけで勝てるほど甘くありません。テクノロジーが強いことは当たり前。そのうえでオペレーション力が高くなければ、急成長を遂げられません。例えば、時間を効率的に使うため、日中に社内会議などは行わず、お客様のアクションに合わせることを徹底しています。それを経営陣自らが率先垂範で実行し、メンバーに落とし込んでいく。創業時から培われたカルチャーが強さの源泉だといえます」

M&Aで海外展開を拡大。今「アメリカに注目」

アスエネは、スタートアップながらM&Aにも積極的だ。

「私のバックグラウンドは主にファイナンスやM&Aであり、事業家だけでなく投資家の視点もあります。スタートアップでM&Aに積極的なところはそう多くありませんが、私たちはどんなリスクがあるのか徹底的に精査し、対策したうえでM&Aを国内と海外で実行できる。その点も強さの理由だといえます」

実際、海外においてはロールアップM&A戦略を採っており、競合他社、類似サービスを買収するようにしている。そのメリットは大きい。顧客を獲得できてシェアを取ることで、競争相手を減らせることはもちろん、ビジネスモデルの解像度が高くなり事業リスクを限りなく抑えることができるのだという。また、海外の拠点拡大においてもM&Aのほうが圧倒的にスピードが速い。

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M&Aによって非連続的成長を加速

「海外では、簡単に事業立ち上げや拡大ができるわけではありません。しかし、M&Aなら、現地の強い経営者を獲得することもできる。起業経験のある経営者を獲得できればメリットはもっと大きいといえます」

現在、アスエネの海外売上比率は約20%に上昇。海外拠点はシンガポール、アメリカ、イギリスなどに6拠点あるが、今後は中南米などにも拡大していく予定だ。ただ、今注目しているのは意外にもアメリカだという。

「現政権下で連邦政府レベルの脱炭素の規制は弱まっている一方、カリフォルニア州では今も強い規制があります。24年の同州のGDPは日本全体を上回っており、非常にポテンシャルが高い。政策の影響でアメリカの脱炭素系スタートアップの資金調達力が弱まっているため、今こそM&Aや投資のチャンスなのです。弊社では25年5月に続き、9月にも1社買収しており、アメリカシフトを強めています」

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2025年9月、アメリカ・Iconic AirとのM&A時の集合写真

また、日本の空調大手企業のダイキンやメガバンクの三井住友銀行、欧州の大手企業などと資本・業務提携するなど大企業とのアライアンスにも力を入れている。各社によって戦略は異なるが、それぞれの企業の強さとアスエネの強みを組み合わせることで、大きなシナジー効果を生むことを目指しているそうだ。

「日本企業は、GXで世界で勝てる」

アスエネではテクノロジーの活用として今後も自社の「ASUENE AI LAB」を通じてAI技術の研究開発を積極的に進めていく方針だ。AI人材の採用も増やしているほか、産学連携も進めており、西和田氏は東大の共同研究員も務め、財務と非財務のデータに関する共同研究を推進中だ。

「エネルギーマネジメントで重要なのは、見える化した後に、どのように電気代を減らすのか、という提案です。その点、私たちはAIを使い削減施策を提案し、電気代やCO2の削減策だけでなく、初期投資額やROI(投資利益率)も詳細に提示することができます。AIによってさらなるエネルギーマネジメントの効率化と付加価値の最大化を担っていきたいと考えています」

グローバルの観点から、西和田氏は日本企業の現状について、どのように見ているのか。

「日本はGXでリーダーシップを発揮できる立場にあります。大切なのは政府と連携して制度や規制変更に先んじること。そうすることで、それに対応したビジネスモデルをグローバルで輸出できるからです。また26年4月には経済産業省によるGXリーグで排出量取引制度『GX-ETS』が始まります。GXリーグには700以上の企業が参加していますが、この数はグローバルで見ても珍しい。またソフトウェアだけではなくハードが密接に絡むGXの領域では、日本企業は世界をリードできるポジションにあると思っています」

今後アスエネはどのような展開を狙うのか。

「30年に向けてネットゼロのコミットメントは、日本は46%、グローバルでは約50%前後の削減が必要だといわれています。こうした中で、お客様の脱炭素の本丸である削減を一緒に行えるパートナーになっていきたい。脱炭素は世界情勢がどんな状態になろうが、超長期で見て不可逆的なものであり、1社で達成できるものではありません。多くの企業とさまざまな連携を行いながら、脱炭素にコミットすることで、グローバルでナンバーワンを目指していきます」

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