シンクロウェザーが示す「世界標準」への戦略 次世代タイヤ市場「ゲームチェンジャー」の実力

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ダンロップロゴ
あらゆる路面に“シンクロ”するタイヤ――。常識に挑む次世代オールシーズンタイヤ・ダンロップ「シンクロウェザー」発売からわずか1年、その確かな実力で市場を驚かせた住友ゴム。タイヤの可能性を広げる新技術「アクティブトレッド」を核に、グローバル市場で描く未来像とは。「技術の住友ゴム」が仕掛ける、世界標準に向けた壮大な挑戦を、代表取締役社長の山本悟氏に聞く。また、シンクロウェザーが持つ真価について、モータージャーナリストの清水和夫氏にインタビューした。

発売から1年、市場が証明した「シンクロウェザー」の真価

「氷点下の雪道でも確かな効き目で、感動した」「ウェット路面でもしっかりしたグリップ感」。2024年10月に発売されてから1年余り、次世代オールシーズンタイヤ・ダンロップ「シンクロウェザー」に購入者たちから大きな反響が寄せられている。

シンクロウェザーは、路面状況に応じてタイヤが自ら性質を変化させる新技術「アクティブトレッド」を搭載した同社初の商品だ。全シーズン、氷上・雪上を含めたあらゆる路面状態で安定的な走行を実現する。

「雨の日も、雪の日も、路面が凍っていても、車を停めることなく安心感を持って走行できます。われわれが徹底的に追求してきたこれらの性能の高さが、実際にお使いいただいた方の評価によって証明できました」と、代表取締役社長の山本悟氏は目を細める。

アクティブトレッド技術は世界からも注目されており、25年3月には、「Tire Technology International Awards for Innovation and Excellence」で、「R&D Breakthrough of the Year」を受賞。専門家の高い評価やこうしたアワードの受賞も、「シンクロウェザー」の真価を物語っている。

シンクロウェザーとアクティブトレッドの受賞歴

交換や移動、トータルコストで知る「価格以上の価値」

だが一方で、市場からは「従来商品と比較して高く感じる」といった、購入に二の足を踏む要因として価格を指摘する声も少なからずある。そうした意見に対して山本氏は「確かに当社商品の中でもプレミアムな価格帯なのですが、ランニングコストを考えると、コストメリットは従来のタイヤよりむしろ大きいと考えています」と話す。

住友ゴム・山本社長
住友ゴム工業
代表取締役社長
山本 悟

「シンクロウェザー」のオールシーズンタイヤとしての寿命(プラットフォーム露出)は、4年※。この間、夏タイヤとスタッドレスタイヤの交換・保管のコストや手間が不要になるだけでもコストメリットを見込めるが、耐久性、性能持続性の高さを見ても、コストパフォーマンスはよいという。※夏タイヤとしては4年以降も使用可能

「それだけでなく、例えばそれまで雪道走行を避けて、電車を使っていた長距離移動に、躊躇なくクルマを使えれば、交通費も削減できます。こうした『シンクロウェザー』を使い続けるトータルのコストメリットや利便性についても、今後、市場に訴求していくつもりです」

ダンロップブランドでグローバル市場の拡大を狙う

現在同社が進めるのが、アクティブトレッド搭載タイヤのグローバル展開だ。25年1月には、The Goodyear Tire & Rubber Companyから欧州・北米・オセアニア地域における4輪タイヤダンロップ商標権を取得。同地域でのダンロップブランドでのタイヤの販売が可能になった。

27年には、欧州・北米で、現在のアクティブトレッドを進化させたオールシーズンタイヤの発売を予定している。ダンロップブランドでの欧州・北米・オセアニアへの高付加価値商品の投入を弾みに、今後は同社のプレミアム商品の比率拡大を図っていく戦略だ。

「日本では、まだシーズンごとにタイヤを入れ替えるのが一般的ですが、『シンクロウェザー』の地位を確かなものにすることで、近い将来、国内のタイヤ市場の約2割をオールシーズンタイヤにしたいと考えています。また、もともとオールシーズンタイヤ率が高い欧州・北米にもしっかり食い込んでいきたいです」

さらに技術革新として、水・温度に続く「第3のスイッチ」の開発も進行中だ。このスイッチの搭載により、グリップ性能と耐摩耗性能という相反する2つの性能の高次元での両立を可能にすると、山本氏は話す。

「28年以降、『第3のスイッチ』を搭載したEV用タイヤや超高性能スポーツタイヤを欧州・北米に投入することを計画しています。また30年には、SUVやピックアップトラック向けの大外径タイヤの発売も予定しており、対応車両のリーチがより一層広がる見込みです」

さらに35年を見据え、「次世代スイッチ」の開発も進む。そのカギを握るのが、アクティブトレッドに並ぶ同社の独自技術「センシングコア」だ。

センシングコアは、走行中のタイヤの空気圧や摩耗状態、荷重や路面状態を検知する技術。この技術を活用することで、前方の路面状態をいち早く検知し、タイヤの性質を変えようというのが、次世代スイッチだ。「これこそタイヤ市場にゲームチェンジを起こす革新的な技術になる」と、山本氏は自信を見せる。

新たな価値を創造し続け、狙うはタイヤの「世界標準」

25年3月、同社は長期経営戦略「R.I.S.E. 2035」を発表し、35年を見据えた成長のロードマップを提示した。その中で明かされたのが、「ゴム・解析技術力」と「ブランド創造力」という、成長エンジンとなる2つの強みだ。

JapanMobilityShow2025の出展ブース
「Japan Mobility Show2025」出展の様子。各カテゴリーのラインナップ、 未来への取り組みにフォーカスした配置が印象的だった

技術力の源泉は、先端施設の活用にある。世界トップクラスの性能を誇る大型放射光施設「SPring-8(スプリングエイト)」やスーパーコンピュータ「富岳」、また3GeV高輝度放射光施設「Nano Terasu(ナノテラス)」などでの研究を通して、ゴムの分子構造をナノレベルで可視化してきた。

また数々の大学・研究機関との産官学連携による研究も進めている。これらの基礎研究が、他の追随を許さない新技術を生み出す源泉になっている。

「もう1つの『ブランド創造力』においても、これまでに『FALKEN(ファルケン)』の商標権を獲得し、欧・米・オセアニア地域でのブランド価値を飛躍的に向上させた実績があります。この2つを武器に、次世代の高性能タイヤはもちろん、医療やスポーツなど多様な領域で、革新的な商品や新規事業を創出していきます」(山本氏)

26年には米・シリコンバレーにマーケティング拠点「イノベーションラボ」、28年には日本に「イノベーションセンター」の設立を計画している。世界の英知が集まる場所で、開発した新技術のビジネス化や販促のスピードアップを図るとともに、新研究拠点では、オープンイノベーションでゴムの新たな価値創造に取り組んでいく。

「今後も、ゴムから新たな社会価値を創造し続け、次世代のモビリティ社会の進化に貢献していきたい」と語る山本氏。住友ゴムが仕掛ける世界標準への戦略、その革新のロードマップは欧米市場、そしてEV・モビリティ市場へと明確に続いている。「技術の住友ゴム」が放つ〝次世代の矢〞シンクロウェザーが、世界のタイヤ市場をどう塗り替えていくのか。その壮大な挑戦から、目が離せない。

住友ゴム工業(DUNLOP)のHPはこちらから

「シンクロウェザー」特設サイトはこちらから

Special Column
清水和夫氏が語る「シンクロウェザーの真価」

清水氏
モータージャーナリスト
清水 和夫
日本の過酷な路面に対応する性能、4年間のコストメリット、そして「ゴム革新」と評する技術の将来性について、シンクロウェザーの開発段階から関わるモータージャーナリストの清水和夫氏に話を聞いた。

―試乗での第一印象は

「いろいろな路面をカバーできる範囲が広がった」というのが第一印象です。日本はひと口に冬と言っても、地域によって路面状況が異なり、タイヤには厳しい使用環境です。特に雪上路とアイスバーンと呼ばれる氷上路は求められる性能が異なります。最近は暖冬で凍った路面に水が浮き、スリップしやすくなっています。シンクロウェザーは雪上路、氷上路のどちらにも対応できていて驚きました。

―ユーザーにも違いは明確ですか

テストコースで発進、ブレーキともに試しました。まず雪上性能は文句なしです。問題はツルツルの氷上性能で、スリップの原因となる路面とタイヤの間にある水分をいかに素早く除去するかがカギとなります。

この点もシンクロウェザーは同社のスタッドレスには若干劣るものの(※1)、高いレベルを実現し、水分に反応して軟らかくなったゴムがしっかりと路面に対してグリップしてくれます。ウェットブレーキ性能でのテストでは夏タイヤ同等の結果(※2)が出ているので、違いははっきりとわかるでしょう。

―新技術「アクティブトレッド」の評価は

日本のスタッドレスタイヤはアイスバーンでのグリップに力を入れて開発されてきました。一般にオールシーズンタイヤはアイスバーンに弱いとされてきましたが、低温でも硬くなりにくい「温度スイッチ」と、水に反応してゴムが軟らかくなる「水スイッチ」を搭載した「アクティブトレッド」が見事に克服しています。

―コスト面のメリットは?

6年間履き続けるとして、シンクロウェザーなら4本で対応できます。一方、夏タイヤと冬タイヤを季節ごとに交換すると8本必要で、タイヤ代がかかるだけでなく交換工賃も必要です。

【住友ゴム試算】冬タイヤ用のホイールや外したタイヤの保管費用も必要になる場合、6年間のトータルで約10万円ランニングコストが抑えられる(※3)。

―「アクティブトレッド」は今後のタイヤ作りに影響を与えますか

低温でもゴムが硬くなりにくく、水に反応してゴムが軟らかくなるという性質は、相反するタイヤの性能を両立可能としたゴムの基盤技術の進化の形であり、言い換えるなら「ゴム革新」と言っていいほどです。同社が持つセンシングコア(リアル走行データの収集と利活用)などと組み合わせれば、サマータイヤ、スポーツタイヤなど、あらゆるタイヤ作りに革新と変革をもたらす技術だと思います。

※1 WINTER MAXX 02比

※2 ENASAVE EC204比

※3 新車を購入してから6年間のうち、スタッドレスタイヤとSYNCHRO WEATHERを2度ずつ、スタンダードサマータイヤを1度購入した想定で比較。タイヤ購入費用、作業工賃、保管費用72カ月を合算して算出。1カ月走行距離は1,000kmを想定。(195/65R15、トヨタ カローラツーリングの場合)使用条件によっては、この限りではありません。