決済はコストではなく「売上を伸ばす原動力」に データ活用とセキュリティで導く事業成長

不正ではない決済が失敗する訳
不正な決済が不承認になるのは当然だ。しかし、多くの正当な決済も不正を疑われ、不承認になっている。そこに、有効期限切れなど、カード利用者の問題も加わると、決済が失敗する割合は10~20%にも達する。ところが、「自社の決済成功率を把握している通販事業者は少なく、決済失敗で多額の売上が失われていることに気づいてすらいない」とAdyen(アディエン)の佐野匠氏は語る。
Head of Sales
佐野 匠氏
決済承認の是非を最終判断するのは、カード発行会社。その判定システムは各社で仕様が異なり、外部から仕組みを知ることは難しい。だが、世界で年間200兆円以上の決済を手がけるアディエンが、膨大な決済データを分析すると、各社の判定の“クセ”が見えてくる。例えば、カード有効期限の年を2030年と4桁表記にするか、30年と2桁にするか、というフォーマットの違いで承認率は異なってくる。「4桁が承認されやすいカード発行会社もあれば、2桁のほうが通りやすい会社もある。そうした判定の小さなクセが積み重なって、承認率に大きな影響を及ぼすことになる」。
さらに、承認率を大きく左右するのが、最新セキュリティ「ネットワークトークン」だ。従来は、16桁のクレジットカード番号をそのまま決済情報に使っていたが、近年は、カード番号の代わりに国際ブランド(Visaやマスターカードなど)が発行するネットワークトークンに置き換えたやり取りが世界の潮流になっている。国内では、トークンに対応するカード発行会社はまだ限られるが、「トークンを使えば安全性が高いと見なされるので、トークンを利用しないケースに比べて、平均3%承認率が高くなることもある」。
ワンタイムパスワードや生体認証によって、追加の本人認証を行うセキュリティの仕組み「EMV 3‐Dセキュア」も決済の成否に大きく影響する。とくに高齢者などITに不慣れな人にとっては、ショートメッセージ(SMS)やメールで受け取ったワンタイムパスワードを決済画面に入力する手間がハードルになり、途中で購入を断念する人が増える。結果的に数%の購入率低下につながっているという。
決済成功率を6%上げる対策
これらの課題に、データとAIなどのテクノロジーを駆使して様々な対策を講じることで、アディエンは決済成功率を最大6%高められるとする。決済の改善による事業成長の可能性は大きく、営業活動で売上をアップさせる労力と比べて効果的といえる。
決済不承認が多くなる背景には、決済代行(ゲートウェイ)、不正対策、加盟店管理(アクワイアラー)、クレジットカード発行など、異なる役割を持つ複数のプレーヤーが関与する決済プロセスがある。
各プレーヤーが共通して行うのは自社のロジックで、決済に伴うリスクを評価し軽減すること、例えば、不正対策会社がセキュリティを過剰に厳重にすれば、目的とする不正抑止は達成できるが、決済承認率は下がってしまう。「成功率向上には、各プレーヤーが個々にベストを尽くそうとする『部分最適』ではなく、決済プロセス全体の利益が最大になるようにバランスを取る『全体最適』の視点が必要」。決済代行から加盟店管理まで各種決済業務を1つに統合したアディエンの決済プラットフォームは、不正抑止と承認率向上の最適バランスを実現しやすい。さらに、グローバルで使われているプラットフォームなので、事業の海外展開も加速できる。
カード発行会社が、いったん決済を不承認とした場合も、データに基づいて承認されやすい決済情報フォーマットにして再トライするなど、細かなチューニングを自動で実行するAIを搭載。プラットフォーム上では決済状況が可視化されるので、通販事業者側は不承認に対応しやすい。不正利用が頻発する時期には、カード発行会社が判定基準を厳格化してしまい、承認率が低下することがあるが、その場合も、自社のセキュリティ対策状況をカード発行会社に説明し、基準の見直しを求めて交渉することもできる。アディエンのアカウントマネジャー(顧客担当者)は、こうした承認率向上のための取り組みを提案、サポートする。
国内では導入途上にあるネットワークトークンもいち早く導入し、トークンに対応するカード発行会社の承認率向上につなげている。また、アディエンが蓄積する過去の決済データを使って、それぞれの購入者の決済リスクを評価。安全と判断できれば、3Dセキュアの回数を減らせることも購入率向上につながっている。
店頭とECでの決済の分断
決済をめぐっては、オフラインとオンラインで、決済サービス会社が別々になっているため、店頭と通販サイトの決済が分断されているという課題もある。そのため、同じ事業者なのに、通販サイトで購入した商品を店頭で返品することはできない。店頭で品切れの商品在庫が通販サイトにあっても、店頭で決済して送ることはできず、顧客に通販サイトで購入してもらわなければならない――といった不便さが発生し、顧客体験を低下させるおそれがある。
オフラインとオンライン双方をカバーするアディエンの決済サービスは、顧客接点・販売チャネルを統合するユニファイドコマースの構築も容易だ。また、店頭と通販で同じクレジットカードを利用していれば、カードにひも付いた両方のチャネルの購買データを把握でき、マーケティングの精度を高められる。
佐野氏は「これまでの決済サービスは、内容にあまり差がなかったため、手数料の安さで選ばれていた。しかし、データやテクノロジーを活用して決済成功率を高め、顧客体験を向上させることが可能になっている今、決済はコストではなく、事業成長のための投資と考える視点が求められていると思う」と訴えた。



