サステナブルなフードサプライチェーン構築を 食をハブに社会課題を解決しながら事業を進化

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
ニップン サステナビリティ推進部 副部長 大上 夏子氏
2026年、ニップンは創立130周年を迎える。製粉事業を祖業に、食品素材から冷凍食品まで事業領域を広げ2024年度には過去最高の売上高・営業利益を記録。長期ビジョン2030では、総合食品企業として食による社会課題の解決に挑むという姿勢を明確にした。ニップンはどのようにして“サステナブルな食の未来”を築こうとしているのか。サステナビリティ推進部の大上夏子氏に聞いた。

原材料調達力に磨きをかける

総合食品企業として食による社会課題の解決に挑み続けます──。長期ビジョン2030でニップンがそう宣言したのは2024年のこと。環境や人権に関する非財務情報開示の要請が高まる中、ニップンは経済的価値と社会的価値の同時実現を目指している。

「そのカギとなるのがサステナブルなフードサプライチェーンの構築です。私たちの事業は自然資本に大きく依存しており、気候変動や人権問題、生物多様性などへの配慮を欠かすことはできません」。多様な原材料を扱う食品産業は、サプライチェーンが広く、複雑になりがちだ。サプライチェーンの上流の「どこで、誰が、どのような環境で私たちの原材料の生産を行っているのか、そこに潜在的なリスクはないか、という意識をつねに持って、課題解決にあたる必要がある」と大上氏は指摘する。

ニップン サステナビリティ推進部 副部長 大上 夏子氏
ニップン サステナビリティ推進部 副部長
大上 夏子

「気候変動などの影響から、従来の産地の収量が減少し、産地の変更を余儀なくされるケースが増えていく可能性もあります。持続可能な原材料調達という視点も欠かせません」

2024年に原材料調達部を設け、調達地域の分散やエリアの拡大、トレーサビリティーの強化にも着手している。

また、2025年5月にはニップングループの『人権方針』『調達基本方針』『生物多様性方針』を国際的な基準に沿って改訂した。これらの方針に従い「それぞれの課題に対して能動的に働きかけ、サプライチェーン上での持続可能な関係性の構築を行うことも重要になる」と大上氏は続ける。

一方、同じ農作物でも産地が変われば品質の違いが生じるが、従来どおりの品質と安全性を担保しなければならない。そこで力を発揮するのが、ニップンが培ってきた研究・加工技術力だ。原材料調達部と品質保証部、開発部が連携しながら安定的な供給責任を果たしていく。

加工技術で課題解決と付加価値化を

社内の連携に加えて、オープンでサステナブルなフードサプライチェーンの構築にも注力している。

「高齢化、パンデミック、地政学的リスクの高まりなど、不安定な状態にあっても人々に食を提供し続けるには単なるものづくりではなく、開かれた、サステナブルなサプライチェーンの仕組みづくりが重要です」

実際、ニップンでは加工技術を使ってステークホルダーが抱える課題の解決に乗り出している。

その1つがプレミックス事業だ。プレミックスとは小麦粉に砂糖や脱脂粉乳などの原材料を配合したもので、ケーキ、パン、惣菜などの調理が簡略できる。労働人口が減少する中、工場や飲食店などの現場では複数の原材料を調合する手間だけではなく、管理する業務やスペースも省くことができる。

「環境や食の持続可能性に対して何ができるかを考え、サプライチェーンのさまざまなポイントに目を向けています。長期ビジョン2030でも掲げているように、私たちが目指すのは、食を社会の健全なハブとして豊かな未来を創造していくことなのです」

『やわら小麦®』もその1つだ。「でんぷんの老化を遅らせる特性を持つ国内産小麦で、パンなどに加工すると時間が経っても硬くなりにくいため、美味しく食べられる期間が長くなり、食品ロスの削減にもつながっています」。小売業者からの声を受け、ニップンは生産者とともに『やわら小麦®』の作付けの拡大と普及、商品展開に取り組んでいる。

「生活者と接点を持つステークホルダーと課題を共有し当社の技術で解決策を形にする。これが当社の強みです。『素材に付加価値を与え、新しい機能を探索して事業を成長させ、社会課題を解決するための技術をさらに磨く』という循環ができています。このように、原材料調達力や研究・加工技術力、生産技術力・品質保証力、マーケティング・販売力のループが私たちのビジネスの価値創造の源泉であり、総合食品企業としての成長と社会の持続可能性につながっていくと考えています」

強みのサイクル
「安定的な原材料調達力があり、素材に付加価値を与え、新しい機能を探索して事業を成長させ、社会課題を解決する技術を磨く」という循環こそが、ニップンの価値創造プロセスである

総合食品企業として未来の食の持続可能性を担う

こうしたニップンの姿をステークホルダーに伝えていくことも重要な意味を持つ。「東証プライム市場上場企業として、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った情報開示を行うほか、『企業として将来に向けてどんな戦略を持っているのか』という面での情報開示の要請にも対応しています」。

さらに、国際的なESG評価機関などのスコアの維持向上も目指す。

「スコアの向上に関しては、サプライチェーンメンバーからの要求も強まっていると感じています。気候変動や人権、生物多様性への対応と、それを支えるガバナンスに関するスコアを維持向上させ、客観的な評価を積み重ねていくことは、総合食品企業としての社会的信頼を築くうえで不可欠な取り組みです。

外部評価を受ける際はサステナビリティ推進部が各部門から情報を集めて回答を行っていますが、今後は評価内容を各事業部にフィードバックを行い、次のアクションに生かす仕組みを整え、さらなる信頼の向上を目指したい」と大上氏は話す。

こうした取り組みを推進すべく、サステナビリティ推進部を2025年1月から、戦略策定チーム、情報開示チーム、活動推進チームの3チーム体制に再編。それぞれの専門性を高めながら、連携を強め、スパイラル型の組織力の向上を目指している。

『Our Statement』として『社会のウェルビーイング、生活者のウェルビーイング、従業員のウェルビーイングの同時実現』を掲げたニップン。消費者ではなく生活者としているのは、食は消費するものではなく、人々の生活とともにあるものと捉えているためだ。

「総合食品企業として、未来の食の持続可能性を担う存在でありたい」と大上氏はインタビューを締めくくった。

ニップンについて、くわしくはこちら