製造業注目、接着剤メーカーが果たすべき使命 化学物質のリスク評価、2023年改正で強化

※1 嫌気性接着剤:金属イオンがある状態で酸素を遮断すると、硬化する接着剤
金属のボルトとナットが接している面積は、わずか15%程度
モノを製造するうえで、業界を問わず接着剤が幅広く用いられる。その中で、LOCTITE®︎は自動車をはじめ、ロボットや医療機器、家電製品、建築物、製造設備に至るまで、あらゆるモノの製造やメンテナンスに使われている。
とりわけ、ねじゆるみ止め用接着剤のロングセラー「LOCTITE®︎ 243」(接着後も取り外し可能な中強度用) と、「LOCTITE®︎ 263」(接着後の取り外しが難しい高強度用)は、モノづくりの安全性や信頼性を支えている。
ねじゆるみ止め用接着剤とは、締めたねじをしっかり固定するための接着剤のこと。というのも、例えば金属のボルトとナットを締めたときの金属の接触面積はわずか15%程度で、残りの約85%は隙間である。
そこでボルトにねじゆるみ止め用接着剤を塗布することで、隙間を樹脂で埋める。そして接着することにより、接触面積を100%近くにし、水の侵入による接合部の腐食や振動、熱の影響を低減。ボルトとナットがしっかり固定されるという仕組みだ。
金属ねじに接着剤を塗布し、振動や熱によるねじのゆるみを防止する
環境や使用者の健康にも配慮した製品づくりに挑む
そんな中、LOCTITE®︎ 243/263が様々な産業で使われているのには理由がある。従来、これらの製品にはCHP(クメンヒドロペルオキシド)やAPH(アセトフェノン)といった物質が含まれていた。
だが、LOCTITE® 243/263 は、こうした健康への影響が疑われる成分を少しでも排除するため、処方そのものを見直して改良された製品だ。さらに、パッケージには再生プラスチックを50%採用し、環境にも配慮した製品設計となっている。
近年、世界各国でサステナビリティーに関する法律や規則が整備され、あらゆる事業領域で企業の取り組みが求められている。
日本でも、2023年に労働安全衛生法が改正されて以降、リスクアセスメントに関する企業の義務が強化され、リスクアセスメントの対象となる化学物質の数も大幅に増加した。企業には自律的な管理が求められるため、安全な接着剤への評価はより高まっていくだろう。
環境や接着剤を扱う人の健康に配慮したLOCTITE®︎の取り組みは、ほかにもある。それが、「LOCTITE®︎ H&S(ヘルス&セーフティー)対応※2製品」だ。通常、接着剤には化学物質の危険有害性の程度を表す「GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)絵表示」が義務づけられた化学物質が使われている。
しかし、これらの製品はGHS絵表示が必要な化学物質を使わず、LOCTITE®︎の接着性能をそのままに安全性を強化した。つまり、モノづくりや修理に携わる人が、より安心して扱えるように開発された製品なのである。対応製品には、ねじゆるみ止め用接着剤「LOCTITE®︎ 2400/2700」や金属配管用シール剤「LOCTITE®︎ 5400」がある。
※2 H&S(ヘルス&セーフティー)対応製品の定義
SDS(安全データシート)または製品ラベルに健康や安全に関する絵表示(ピクトグラム)が記載されていない製品(25年4月現在)
経済産業省「GHSのシンボルと名称」を基に東洋経済作成
ポルシェ フォーミュラ Eチームとの協業で
サステナブルな社会の実現へ
こうした製品やサステナビリティーへの取り組みを発信する一環として、ポルシェ フォーミュラ Eチームと協業し、チームの公式接着剤パートナーとして、製品や専門知識を提供している。
同チームが出場する、電気自動車の「ABB FIA フォーミュラE世界選手権」はサステナブルな社会の実現に向け、様々な技術を取り入れている。実際に、ポルシェ初の完全電動レーシングカー「ポルシェ99Xエレクトリック」には、LOCTITE®︎ 243が採用されている。

モノを使う人はもちろん、つくる人や修理・メンテナンスをする人の安心と安全に貢献する──。バリューチェーン全体のサステナビリティーへのまなざしが、これからのサステナブルなモノづくりを支えていくはずだ。



