現場起点で挑むOZAXのクロスボーダー戦略 海外展開を共に切り開くグローバルパートナー

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オザックスの幅広い商品ラインナップとイメージ
少子高齢化による国内市場の縮小が進む中、海外進出や海外商品の調達に活路を見いだす企業が増えている。オザックス(代表取締役会長兼社長 尾﨑豊弘)は創業以来、各時代において「衛生」や「省力化・環境対応」などの新たな付加価値や、幅広い商品ラインナップを顧客企業に対してもたらしてきたソリューションカンパニーである。海外展開についても同様で、国境を越えたビジネスを時代の先駆者として展開してきた。そんなオザックスが、2025年に「クロスボーダー事業本部」を新設。海外トレンドを的確に捉え、国内外の外食・小売り・ホテル業界に、顧客の差別化・集客・ブランド強化を支援している。現場起点でグローバルに挑むOZAXの戦略に迫る。

紙卸から総合ソリューション企業へ

OZAXは1910(明治43)年、尾﨑洋紙店として創業した。紙の卸売りを出発点とし、大手製紙メーカーの代理店として成長してきたが、60年代に大きな転機が訪れる。「スーパーマーケット等の小売事業者向け資材の販売を皮切りに、その後日本に上陸したばかりの大手ファストフードチェーンや大手外食チェーンとの取引を開始、多店舗事業者向けの資材供給事業へと進出しました」と、副社長の尾嵜敏万氏は紹介する。

オザックス本社外観
オザックス本社の外観

これらを含め、同社の成長の歴史は、事業拡大の歴史といってもいいだろう。外食産業に加え、シネマコンプレックス、ホテルやホームセンター、ドラッグストアなどの量販店に向けた業務用資材、さらには食材の提供も行っている。

ただし特筆すべきは、OZAXが「扱う商材」と「届ける先」だけを拡大してきたわけではないことだ。

例えば紙、不織布、フィルムなどの素材の提供は祖業にも通じるが、同社では「原料を調達し、加工会社に渡しておしまいではなく、製品化されたものを買い戻してお客様に納めるところまで関与します。素材の選定から最終納品まで一気通貫で行うことで、お客様のニーズに最適化した製品を提供できると考えています」と尾嵜氏は語る。

OZAX副社長 尾嵜敏万氏
OZAX副社長
尾嵜 敏万

顧客の現場に深く入り込んだ提案力にも定評がある。とりわけ外食チェーンにおいては、厨房内動線の最適化や異物混入リスクの低減、1秒単位の業務効率化までを支援するという、まさにオペレーション全体へのコンサルティング型支援だ。「例えばハンバーガーに正しいソースをミスなくかけるための仕組みづくりや、外国人労働者でも扱いやすいツール設計まで、われわれは細部まで踏み込んで支援します」(尾嵜氏)。こうした“商材の価格だけでは測れない価値”が、多くの企業に評価されてきた。

最近ではOEM(相手先ブランドによる生産)やPB(プライベートブランド)商品開発にも注力している。収益性の高さに加え、顧客と共に作るというプロセスそのものが付加価値となっている。クラウドを活用した受発注システム、さまざまな業態の倉庫管理システムのほか、「省人化」「省力化」につながるシステムなど、ITの活用も早期から進めている。

三位一体体制で日本と海外をつなぐ

2025年4月、OZAXは従来のグローバル事業本部と内外連携推進室を統合し、新たに「クロスボーダー事業本部」を立ち上げた。背景にあるのは、海外展開やグローバル調達に対する企業のニーズの急増だ。常務クロスボーダー事業本部長を務める眞鍋英治氏は次のように語る。

OZAX常務クロスボーダー事業本部長 眞鍋英治氏
OZAX常務クロスボーダー事業本部長
眞鍋 英治

「日本市場が成熟する中で、海外に活路を求める企業が増えています。進出支援や調達だけでなく、日本と海外をつなぐ“リエゾン”の機能が必要とされています。クロスボーダー事業本部という名称には、そうした意図を込めています」

同本部の海外戦略は、4つの柱で構成されている。1つ目は「海外からの調達」。現状20カ国以上から商材を仕入れている同社だが、2年以内に調達比率40%の達成を目指すという。

2つ目は「海外拠点での販売」だ。現在6カ国・地域8拠点を展開しており、将来的には11カ国以上への拡大を計画中。現地の外食・小売事業者、商業施設、ホテル、食品工場などのニーズに合わせて商品を提供する。

3つ目は「日本企業の海外進出支援」だ。現地法人の設立や物資供給、オペレーション設計までを一貫してサポートし、日本と同水準のサービスを再現できるよう、ノウハウを提供する。

4つ目は「海外企業の日本進出支援」。海外ブランドの日本展開を支援対象とし、商品の調達やローカライズを支える。

これらを、海外での営業活動では500社を超える得意先とつながり、各国の貿易規制や実務に精通した専門チームが日本側でバックアップする。「海外調達×現地販売×日本側サポート」の三位一体体制だ。「お客様からは、アジアの複数国をまとめて対応してほしいといった要望も増えています。クロスボーダーだからこそ、こうした複雑な展開にも応えられるのです」と眞鍋氏は自信を見せる。

オザックス東京本社7階のIoTショールーム
オザックス東京本社7階のIoTショールーム。 海外展開を積極果敢に仕掛ける一方、新規事業としてIoTサービスもてがけている

M&Aも積極推進。東南アジアホテル市場へ布石

クロスボーダー事業を加速するために、M&Aも積極的に活用する。同社は25年4月、マレーシアの卸売企業であるFKF Hotel & Restaurant Supplies Sdn Bhd(以下、FKF)の発行済株式を80%取得した。FKFはマレーシア国内の高級ホテルチェーンを主要な顧客基盤とする厨房機器、調理器具、食器等の業務用卸売企業だ。

創業以来夫婦で会社を支えてきたリチャード氏とエミリー氏に、今回の決断の背景と将来への展望を聞いた。

FKFのリチャード氏とエミリー氏
エミリー氏(左)リチャード氏(右)

「FKFは07年に創業し、間もなく20年になります。26のブランドを取り扱い、ホテル・レストラン業界に対し、即納体制とトレンド感度の高さを強みにビジネスを展開してきました」と語るのは、夫のリチャード氏。

妻のエミリー氏は「即レスポンスと新商品の紹介、納期厳守、そしてベストプライスの提供にこだわっています。それが信頼につながっていると思います」と語る。

そんなFKFがOZAXとの提携を決めた理由は、「次のステージに行くため」とリチャード氏。「FKFをもっと大きな会社にし、次世代へつなげていくために、100年以上黒字を続けてきた経営手法を学びたいと思いました」と語る。

グループ入りのプロセスも、夫妻にとって印象深いものだったという。「今まで家族でやってきた会社が、組織として運営されるステージに進むに当たって、多くの支援をいただきました。仕事の効率や精度が上がり、OZAXのプロフェッショナリズムに触れて、私たち自身も一段成長できた気がします」と振り返る。

FKF調印式
FKF調印式

FKFのグループ化は、OZAXの東南アジアにおけるホテル領域進出の第一歩であり、他国展開や日本市場への逆輸入も視野に入れたものだという。「われわれも貢献できるよう努力していきたい。そして、FKFが“次の100年企業”になることを目指しています」とリチャード氏は語った。

尾嵜氏も「国内外を問わず、お客様の経営に関わるニーズや課題をできるだけ多くお聞きし、それらを一緒に解決していくお手伝いをしたいと考えています。海外進出に限らず、お客様の事業を成長させるために私たちの機能をご活用いただきたいですね。お客様のお困り事を一緒に考えていく、そういう存在でありたいと考えています」と力を込める。

初の海外進出はベトナム ──
10年で60館を計画

AEON ENTERTAINMENT  VIETNAM CO., LTD.
マネージング・ディレクター
島野 洋平
AEON ENTERTAINMENT VETNAM CO.,LTD. マネージングディレクター島野洋平氏、OZAXベトナム責任者 山本氏
島野氏(左)とOZAXベトナム責任者山本氏(右)

イオンエンターテイメントにとって、ベトナムは初の海外進出国です。2025年3月に合弁会社を設立し、現在は年内の1館目開業に向けて準備を進めているところです。ベトナムでは今後10年間で60館をつくっていくという目標を掲げています。

東南アジアの中でもベトナムはとくに伸びしろのある市場です。日本では年間約1200本の映画が公開されますが、ベトナムではまだ200本程度。興行収入も日本の10分の1ほどです。だからこそ、ここで挑戦する意義があります。

私たちが目指しているのは、現地の既存映画館より高品質なサービスを提供することで、映画館内での「飲食体験」も重要です。日本では当たり前のように提供されている品質を、ベトナムでも再現したい。その実現のために、OZAXに支援してもらっています。

ポップコーン一つとってみても、容器や原材料の選定から、日本らしい清潔感や演出性まで含めて、ベトナムのお客様に刺さるメニューやデザインを一緒に検討しています。OZAXは、日本とベトナム両方にネットワークがあり、世界中の食材やパッケージ資材についても柔軟に提案をいただけるのが頼もしいですね。

現地でのターゲットは、学生から30代までの若者層が中心。SNS映えやトレンド感にも敏感なので、メニューの見た目や話題性といった観点も大事です。映画館自体はまだ建設途中ですが、日本にもベトナムにもないアイデアを数多く提案してもらっています。

まずはベトナムで成功し、安定したビジネスに育てること。そして将来的には、ASEAN地域の他国にも展開していく構想があります。OZAXの支援を引き続き頼りにしています。

観る場から“楽しむ場”へ ──
映画館の体験価値を高める

TOHOシネマズ営業本部 商品開発部長
清水 敦
TOHOシネマズ 営業本部商品開発部長 清水敦氏

TOHOシネマズは全国に約75の劇場を展開しています。シネマコンプレックスにとって、映画の上映(チケット)だけでなく、飲食物やキャラクターグッズの販売が重要な収益源です。中でも飲食の売店は、重要な柱です。

2024年12月、TOHOシネマズでは米国発の炭酸フローズン「ICEE(アイシー)」の販売を開始しました。米国の映画館では定番ともいえる人気商品で、10年ほど前から導入を考えていたのですが、機材やオペレーション、契約などの課題もあり、当社だけではなかなか実現できませんでした。そんな中、OZAXが日本の正規代理店になることで、ようやく導入がかないました。

炭酸フローズン「ICEE(アイシー)」

ICEEのビジネス面での大きな特長は従来の飲料とは異なる新しいカテゴリーの商品であることです。社内でも、導入前は未知のカテゴリーということから懸念の声もありました。しかしながら、ふたを開けてみると売上高も当初描いていた想定を大きく上回る推移でICEEへのチャレンジは成功という認識でおります。

ICEEの導入に当たって、OZAXは、現地企業との契約やブランドの規定、食材の輸入、現場でのオペレーションなどさまざまな面できめ細かくサポートしてくれました。現在、作品とタイアップした日本独自のフレーバーの開発なども検討しています。

一方で、映画館は「映画を観る場所」だけでなく、「食や体験を楽しむ場所」としての価値を高めていく必要があると考えています。そうなれば、作品の動員数に左右されず安定した収益が見込めるようになります。そのためにも、OZAXには積極的に新たな商品、サービスの提案をしてほしいと期待しています。

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