映画≪国宝≫に歌舞伎俳優も驚嘆!  「歌舞伎の松竹」ではなく「東宝」の配給で成功した理由

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いくつかのメディアが東宝配給の映画について松竹はどう思うか取材しており興味深い。『女性自身』が松竹の広報担当者のコメントを紹介している。

「映画の製作、配給を手掛けております弊社にとりましても、本作品が公開当初から大きな話題となり、国内映画市場に大きな活況をもたらす観客動員を実現されていることは大変喜ばしいことです。また同時に、本作品の主題となっている歌舞伎が注目され、多くの方々の関心が集まっておりますことを 弊社としましても大きな励みとして、皆さまとともに今後の歌舞伎公演を一層盛り上げて参りたいと存じます」(6月26日配信)。また歌舞伎公演の入場券販売状況も好調だという。東宝の映画が松竹の舞台の広報役を演じた形だ。

東宝、松竹は映画、演劇ともに大手の配給会社、興行主であり、好敵手である。しかし、エンタメが多様化し、スマホひとつあれば多種多様な創作物に触れることができるなかで、映画、演劇ともにその存在価値が問われている。

そうした状況の中で、純日本映画である『国宝』が話題となって驚異の観客動員数を記録し、また新たに歌舞伎に関心を持った者が舞台にも足を運ぶという状況は商売敵でありながらともに芸術文化産業を担う東宝、松竹にとって予想外の明るいニュースとなった。

歌舞伎界にも改革を促すか?

映画だけなく、もし、吉沢亮、横浜流星が歌舞伎の舞台に立つようなことがあれば、歌舞伎はたちまち大人気となるかもしれない。映画と違って舞台への出演はそれほど簡単ではないが、歌舞伎への旧ジャニーズ所属タレント等の出演は過去にもある。仮にこの流れが定着したら、歌舞伎俳優にとっては脅威だ。

今は楽屋で映画『国宝』の出来に感心している歌舞伎俳優もそうなれば、おちおちしてはいられなくなる。もちろん、現在の歌舞伎俳優の芸、技は簡単に誰かにとって代わられる程度ものではないことは長年歌舞伎を観てきた筆者はよく理解している。

しかし、歌舞伎は伝統芸能でありながら商業演劇として存在していることが世界に誇れることのひとつだ。松竹の功績は大きいが、商業演劇ゆえに観客に支持されなければ成り立たない。エンタメが多様化するなかで、「血筋」か「実力」かの選択に加え、「人気」は重要だ。

いつかは「歌舞伎を守るのか」、それとも「歌舞伎役者を守るのか」を松竹が迫られる状況がくるかもしれない。この明るいニュースは歌舞伎界大改革のはじまりかもしれないということだ。

細川 幸一 日本女子大学名誉教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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