「入院より通院が圧倒的多数に」“働くがん患者”を支える企業と社会の急速な進化

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では、がん治療にあたって仕事を辞めた人はどれぐらいいるのだろうか。「休職・休業はしたが、退職・廃業はしなかった」が52.1%。対して「退職・廃業した」は17.0%だった。

「休職・休業した」人が休職中に利用した制度は「有給休暇」が45.7%、「有給休暇以外の金銭的保障(賃金、傷病手当金、療養見舞金等)を伴う休み」が36.7%、「金銭的補償を伴わない休み」が30.2%だった(複数回答)。金銭的保障まで利用した人は全体の3分の1強。意外と少ない。ちなみに休職した人の87.1%はその後「(少なくとも一度は)復職した」としている。

一方、「退職・廃業した人」が退職に踏み切ったタイミングは、「がんの疑いがあり診断が確定する前」が8.0%、「がん診断直後」が28.3%、「診断後、初回治療を待っている間」が15.8%、「初回治療後から当初復職を予定していた間」が14.7%などとなっている。その後は「再就職・復業した」は20.7%にとどまっている。一度辞めた人の再就職は困難なようだ。

さまざまな調査結果を検証してきたが、最近の傾向としてはがん患者と寄り添い、仕事と治療の両立のために支援を行う企業が増えていることは間違いない。

企業にとってもメリットがある

患者にとっては経済的理由や生きがいが就労意欲の向上につながっている。一方、企業側にとっても両立支援体制を構築することは

「がん患者の就労継続とそれに伴う労働損失の回避」

「がんの早期発見・治療による支援コストの低減」

「従業員満足度の向上」

「優秀な人材の定着」

などといった直接的・波及的効果をもたらすと指摘されている(東京都の両立支援サポートブックから)。

また、がん患者の仕事と治療の両立支援モデルでは、がん診療連携拠点病院においては院内にがん相談支援センターが設置されていて、就労に関する相談支援を行っている。筆者が通院している病院にも「がん相談支援センター」があり、毎月1回、社会保険労務士による就労個別相談を行っていて、利用者も多いようだ。

がんと仕事の両立は十分に可能な時代になってきている。ステージ4の患者でも、テレワークや時短勤務などをうまく利用しながらがんとの共生人生を送りたいものである。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログでは、最新の病状などを掲載中。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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