「延々と夢を語ってただけ」 一時"辞任会見"がトレンド入りした石破首相の国会閉幕会見が《悪手》でしかなかったワケ

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その一方で、野党の多くが主張する「消費減税」については、「(実施までに)時間がかかるし、高所得者を優遇することになる、そして何よりも社会保障の財源を危うくする消費税減税は、適切とは思えない」と強い表現で改めて否定してみせた。

こうした石破首相の主張や説明に対し、ネット視聴者の書き込みでは「明らかに参院選のためのPR」「『辞任発表か!』って期待されたのに、石破さんが延々と夢を語ってただけ…」「石破総理辞めないのか。辞めないなら参院選も大敗だ」などの厳しいコメントが目立った。

そうした中、石破首相がメモから目を離して質問者の顔を見ながら応答したのが、参院選での獲得議席の目標と勝敗ラインや、参院選後の野党との連立政権の可能性とそのあり方を問われたときだ。その中で政権維持へのカギともなる勝敗ラインについては「非改選議席と合わせて過半数を獲得できるよう、全力を尽くしていきたい」と表情を変えずに応答した。

その一方、「政権の安定のため、連立の枠組みを拡大する考えがあるか、それとも衆議院を解散し、多数の確保を目指すのか」との問いには「衆議院の解散や連立の拡大について、予断を持って話すことは控えたい。ただ、あくまで一般論だが、1つのテーマだけの連立はありえない。あらゆる政策について、合意できることが必要で、それはどの時点でも、どんな時代でも同じだ」と語り、特定の政策合意だけで一部野党と手を組む可能性を否定した。

また、物価高騰対策の柱ともなるコメ政策では、「随意契約による備蓄米の売り渡しなどで平均価格が下がり始めるなど変化が現れ、5キログラム当たり3920円になった」と、小泉進次郎農水相によるコメ価格引き下げを評価。そのうえで、今後、コメの価格高騰の原因と今回の対応を検証し、生産性の向上や輸出の拡大などに向けて政策を転換していく方針を示した。

いわゆる「トランプ関税」をめぐる日米交渉については、「双方にとって利益となる合意が実現できるよう、引き続き全力を尽くす」と、これまでと同様の説明に終始。中東情勢の緊迫化への対応でも、「ガソリン価格が急騰した場合、レギュラーで1リットル当たり175円程度に抑える予防的な激変緩和措置を26日から導入する」と既定方針を繰り返しすだけだった。

減り続けた視聴者数が示唆するもの

ネット中継での視聴者数はこれまでの各種中継より少なめだったが、このように石破首相の会見が「予定調和のようにほとんど盛り上がらずに進んだ」(官邸担当記者)こともあって、首相の冒頭発言が終わるころには「もううんざり、まだ続けるの」との書き込みとともに退出する視聴者が増え続けた。NHKの生中継が終わってもその数が回復しないまま、会見終了時には視聴者数が当初の半分以下となっていた。

これまでの首相会見でのネット視聴者の反応などを振り返ると、メモ読みが際立ち続けた岸田文雄前首相の会見でも、今回のような視聴者数の大幅な減少はなかった。そもそも、就任直後の石破首相の会見では、ネット視聴者の数もかなり多く、しかも、時間とともに増え続けるケースが目立った。

それだけに、ネット番組に詳しい関係者の間では「今回の状況は石破政権の危うい未来を浮き彫りにしている」との冷ややかな見方が広がっている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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