企業の生成AI活用を加速させる「PC」の新潮流 「AI PCは高いだけ」ではない、投資に見合う理由

「自分の知る言葉で検索できる」AI PCの便利機能
――企業の生成AI活用が拡大していますが、現状をどう見ていますか。
白木 多くの日本企業の方とお話をしてきましたが、全体としてAI活用への関心は高いものの、実際の活用はまだ一部の人々にとどまっていると見ています。
私たちの社内を見渡しても、生成AIをかなり使いこなしている人もいれば、「どうやって指示(プロンプト)を書いたらいいかわからない」といった人もいます。お客様の状況も千差万別で、社内でコミュニティーを作って積極的に生成AI活用に取り組んでいる企業もある一方で、多くの企業では「どうやって社内で使っていけばいいか」を模索しているのが現状だと思います。

クライアント・ソリューションズ統括本部
クライアント製品ブランドマーケティング コンサルタント 白木 智幸氏
森嶋 Microsoft 365 Copilotをはじめとする生成AIの導入がうまくいかないケースとして、まず「ゴール設定が途中でぶれてしまう」ことが挙げられます。「AIで何を満たしたいのか」という目的が曖昧なまま、セキュリティや社内のITリテラシーといった複雑な課題にばかり目が行ってしまい、導入が停滞してしまうのです。
また、「生成AI活用のためのデータがどこに保存され、どのように管理されているか」という点も重要です。例えば、データが各個人のPC内に分散して保存されている状態では、組織全体でのシナジーやコラボレーションにはつながりません。
――そうした中で、最近ではPC自体にAI機能が搭載されるようになりました。この「AI PC」は従来のPCと何が違い、仕事にどう役立つのでしょうか。
白木 これまでの生成AIは、インターネット経由でクラウド上のAIを利用するのが一般的でした。それに対してAI PCは、AI処理専用のプロセッサーである「NPU(Neural Processing Unit)」をPCに内蔵しており、推論などのAI処理をPC側で実行できる性能を持っています。
大量のデータを基にした高度な文章作成や分析には、クラウドのAIサービスを利用することのほうが求める結果につながりやすくなりますが、AI PCは軽量なAIモデルをPC側に置くことで素早く結果を得られることが特徴です。
最もわかりやすいメリットが、過去にしてきた仕事の内容、作ったファイル、PC設定などを、「自分の知っている言葉で」自在に検索できることでしょう。
ファイル検索をするときに、「完全一致」でファイル名を指定せずとも、例えば「議事録 6月 オフィス 引っ越し レイアウト」といったキーワードから、AIが(探す対象のファイルの)内容を理解して探し当てます。しかも、目的の情報がPCの内部なのか、それともクラウドストレージの中か不明でも、全体を検索してくれます。
これは、AI PCを使い始めたときから、ユーザーの操作や画面の内容などをPC内部にすべて記録・整理することで実現しています。ですから、1回の検索で見つけられなくても「6月に開催したAIセミナー」といったように、時間や内容により絞り込んでいくことも可能です。

ほかにも、ウェブサイトの画面を要約したり、オンライン会議の相手の音声を自動翻訳したりする機能なども標準で装備しています。従来は高度な専用ツールが必要だった画像の切り抜きや背景の変更なども、簡単な操作で素早く行うことが可能です。
さらに、最新のプロセッサーではメインメモリーをCPUに内蔵することで、複数のアプリケーションを低消費電力で効率よく動作できるなどの刷新が行われています。それによりバッテリー駆動時間を延ばすことが可能になりました。
例えばインテル® Core™ Ultra プロセッサー(シリーズ 2)を搭載した「Dell Pro Premium」は、最大21.2時間のバッテリー駆動を実現しており、外出先でも充電を気にせず、快適に作業いただけます。
AI活用「進む企業」と「そうでない企業」の差
――AI PCはビジネスパーソンの生産性を飛躍的に高めそうです。企業がAI PCを導入すれば、すぐに効果を発揮できるものなのでしょうか。
森嶋 導入していきなり効果を出せるかというと、必ずしもそうではありません。

サービスビジネス営業統括本部
シニア ソリューション プリンシパル 森嶋 修平氏
例えば「Copilot+PC」はNPUを搭載し、AI処理をローカルで高速に実行できる“推奨環境”ですが、それを導入しただけでは十分な効果は発揮できません。導入効果を最大化するには、対象業務やユーザーの特性を踏まえた活用設計、データガバナンスやセキュリティの整備、トレーニングなど、多面的な準備が不可欠です。
そこで当社では、まずお客様が「企業全体として生成AIの活用によりどのような成果を出したいのか」というゴール設定を一緒に検討することから始めます。
そのうえで、「ペルソナ分析」という手法を用いて、お客様の社内でどういった部署の方がどんな働き方をしているかを分析し、費用対効果が高いところから段階的な導入を支援しています。
また、単にツールを導入するだけでなく、導入後のトレーニングまで含め、お客様の生成AI活用が「定着」するまでをサポートします。セルフサービスで生成AIを活用できるよう、ユーザー側のリテラシーを高めていくトレーニングを実施した結果、実際に「利用が浸透してきた」というお客様の声も届いています。
独自の機能・サービスで「安心・快適な」AI PC活用を支援
――デルで実際に提供しているAI PCの特徴や他社との差別化ポイントを教えてください。また、企業がこれからビジネスPCを選定する際には、どんな視点から選ぶとよいでしょうか。
白木 デルのAI PCは、内蔵AIを生かして、PC自体の使い勝手をよくする「Dell Optimizer」を搭載しています。これはPCの使い方をAIが学習し、ユーザーに合わせて自動で最適化するものです。
例えば普段のPCの使い方を学習して、適切なタイミングでバッテリーを充電して電池の消耗を抑えたり、ビデオ会議中であることを自動的に検知して、マイクボタンなどをタッチパッド上部に表示させたりします。
さらに、より高度にAIを活用したいお客様向けに、ローカルAIを使った開発環境「Dell Pro AI Studio」も提供しています。これは、自社の業務に特化したAIアプリケーションを開発・導入したいと考える開発者やIT管理者向けのツールキットです。
これにより、日常業務の効率化から、専門的なAI開発まで、幅広いお客様のニーズにお応えできる体制を整えています。
しかしこれらの機能は、AI時代のPCとして安心して使える基盤があってこそ使えるもの。企業がビジネスPCを選定する際には、「セキュリティ」「管理や運用」「サポート体制」など総合的な視点で検討することが重要です。
――それらの点について、デルではどのような機能・サービスを提供していますか。
白木 まずセキュリティについては、当社は以前からビジネスPCとして独自の技術を装備しています。
例えば、PCの電源を入れたときに、OSが起動する前のファームウェアの段階からPCを保護する機能を盛り込むなど、セキュリティにはNIST(米国国立標準技術研究所)の基準など業界の標準仕様を満たす仕組みを採り入れています。データの扱いがとくに気になるAI PCでも、安心してお使いいただけます。
また、管理や運用の点では、PCだけでなく、デル製のモニターや周辺機器も含めて効率的に資産管理できる点も大きなメリットです。IT管理者が当社の管理コンソールを使えば、それらのIT資産を効率的に一元管理することができます。
森嶋 サポート体制も充実しています。PC1台1台に“サービスタグ”と呼ばれる固有の番号が貼り付けられており、そのタグ番号を伝えることで、メモリやストレージ容量など、製品の仕様を即座にサポートセンターと共有することができます。そのため細かな情報を伝える必要なく、スピーディーな問題解決が可能です。
24時間365日のサポート対応はもちろん、日本と同じサービスを提供している国であれば、ご契約の保守サービスを基に、海外でも現地スタッフによるサポートが受けられます。出張先でトラブルに見舞われても安心です。
AI活用の「敷居を下げる」可能性を持ったPC

――AI PCをまだ導入していないビジネスユーザーは、この新たなトレンドにどう向き合うとよいでしょうか。
白木 生成AIが登場してからまだ数年ですが、ご存じのようにそこからの進化は急速です。「少し様子見」ではあっという間に置いていかれるかもしれません。
AI PCはAIを扱う敷居を非常に低くするデバイスです。エッジデバイスとして、ユーザーの思考や直感に即応し、必要な情報にいち早くたどり着くことが可能です。まるで“思考の拡張装置”のように、ユーザーの発想力や判断力を支援してくれます。
まずは自分の手元からAIを使っていただき、周りの組織や企業全体に広げていくことが、企業のAI活用の近道です。
森嶋 AI PCのようなハイスペックなPCを導入することをためらう企業もあるかと思いますが、当社では豊富な成功事例を基にしたペルソナの設定や、組織で活用するためのシステム開発、導入後のトレーニングまで、課題に応じた支援メニューをそろえて、投資に見合う価値を提供するお手伝いが可能です。ぜひご相談ください。
