イラン攻撃に踏み切ったイスラエル・ネタニヤフ首相の胸の内、自著で語っていた予見と現実

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イランのファルス通信は、イスラエルの攻撃により少なくとも78人が死亡、329人が負傷したと報じた。テヘランの政府関係者ハミド・ホセイニは、イスラエルの攻撃は「指導部にとって完全に不意打ちだった」とし、この攻撃はイランの防空体制の不備と重要拠点への攻撃を阻止できないことを示したと認め、イスラエルの侵攻の深さに衝撃を受けたと述べた。

イランは即座にイスラエル全土に向けて100発以上のミサイルを撃ち込んで反撃に出た。発射された多くは迎撃されたが、これまでにテルアビブ近郊の町リション・レツィヨンで少なくとも1人が死亡、テルアビブ周辺で60数人が負傷している。

イエメンからもイスラエルにミサイル

これに乗じてイエメンからもミサイルが発射され、イスラエル南部のヘブロンに着弾したことが確認されている。ヘブロンはパレスチナ人の居住区である。レバノンのヒズボラ情報筋は、「ヒズボラはイスラエルを攻撃しない」と表明している。ヨルダン軍は、自国領内に侵入したミサイルとドローンを迎撃した。

なぜこのタイミングでイスラエルはイランを攻撃したのか。イスラエルのビンヤミン・ネタニヤフ首相は次のように述べている。

「われわれはイスラエルの歴史上、重大な局面を迎えている。作戦ではイラン全土の多数の標的を攻撃している。この前例のない作戦の目的は、イランの核インフラに打撃を与えることである」

「この作戦は、われわれの頭上に迫る殲滅の脅威を撃退するという任務が完了されるまで、必要な限り継続される。イランは依然としてわれわれに危害を加える大きな能力を有している。われわれはイランが助長し、世界中に輸出しているテロリズムと蛮行から自由世界を守っている」

ギラッド・コーヘン駐日イスラエル大使は6月13日午後、都内で緊急会見を開いた。発言の要旨は次のとおりである。

「イランはウラン濃縮を60%程度まで進めることを可能とし、これは核爆弾9発分に相当する。過去3カ月間で核兵器化に向けた開発スピードが非常に上がっていることが確認されている。

イランは今後3年で1万発程度の長距離弾道ミサイルを開発する計画があり、これらはイスラエルの生存を脅かす明確な脅威である。イランの指導者は、イスラエルが殲滅されるべきだと公言している。そのための技術開発も進めており、言葉だけではない明確な脅威となっている。

さらに、6月12日には国際原子力機関(IAEA)の理事会で、イランが核拡散防止条約(NPT)の義務に違反しているとの決議が採択され、日本政府もこれを支持している。イランによる長距離弾道ミサイルや無人機(ドローン)、巡航ミサイルなどは将来的に日本を脅かす可能性もある。

イスラエルは現在のところ、自国の生存と安全保障の観点から、イランとの共存の道を見いだすことができない。1979年のイラン・イスラム革命まで、イスラエルとイランは良好な関係だった。

しかし革命以降、イランの歴代指導者がイスラエルの排除を公言し、今日に至るまでそのスタンスは変化していない。そのため共存は難しいのが現状である。

イスラエルはイランの国民と戦っているわけではない。イランの圧政的な政権が共通の敵である。今回の作戦はイスラエルの単独作戦であり、自衛権の行使なのである」

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