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〈今週のもう1冊〉『戦争と音楽 ――京極高鋭、動員と和解の昭和史』書評/「第二の国歌」で軍国主義に協力、文化人の戦争責任をどう考えるか

戦争と音楽──京極高鋭、動員と和解の昭和史(古川隆久 著/中公選書/2530円/368ページ)
[著者プロフィル]古川隆久(ふるかわ・たかひさ)/日本大学文理学部教授。1962年生まれ。92年東京大学大学院人文科学研究科国史学専攻博士課程修了。博士(文学)。専攻は日本近現代史。著書に『戦時下の日本映画』『政治家の生き方』『昭和戦後史』『あるエリート官僚の昭和秘史』など。
丹後峰山藩主家の京極高鋭(たかとし)子爵といっても、誰のことかわからない。京極が帝国大学(現・東京大学)総長・加藤弘之の孫で喜劇俳優・古川ロッパの実兄というと、近現代日本史上での人物像が現れてくるかもしれない。
京極は、音楽評論家の先駆けとなり、戦時下で音楽を通じた戦意動員に努めた人物である。また、幼少時には裕仁親王(昭和天皇)の遊び相手に選ばれた。こういうと、線の細い人物を思い浮かべるかもしれないが、実際の京極は巨漢で、西洋音楽普及のため各地を飛び回る快活な人柄だったとのこと。
本書は、日本音楽界の「華麗なる縁の下の力持ち」だった京極の生涯をたどり、日本の音楽文化と社会情勢を論じたものである。著者は、近代日本政治史・社会史に多くの業績があり、本書でも該博な知識に基づく興味深い事実が次々と紹介される。楽しく読み続けられる1冊だ。
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