まさかの《ロボットになる展開》も!? マンガが描いてきた「長嶋茂雄」の"超人伝説"

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長嶋の天然キャラは、ギャグマンガにもぴったりハマった。『すすめ!!パイレーツ』(江口寿史/1977~1980年)には、監督としての長嶋がしばしば登場する。

「よ! パイレーツのみなさん バーバリースーツよろしく!!」と陽気にCMをかましてパイレーツナインをずっこけさせたり、「空白の一日」騒動を経て入団した江川卓の出場自粛が明けるのを一日千秋の思いで待つ姿を少女マンガタッチで描かれたり、その江川に貫禄負けして「うわーん なんで24歳でそんなにおちついとるんだ―――っ」とジタバタして「あなたは44歳でおちつきがなさすぎるんですよ」と王にたしなめられたり。

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江口寿史『すすめ!!パイレーツ』(集英社)ジャンプ・コミックス9巻p133

プロ野球パロディ4コマの元祖『がんばれ!!タブチくん!!』(いしいひさいち/1979年~1980年刊)には、今季の展望を聞かれて「えー、まぁヤクルトもまぁ、ひとつのなにをひとつ、持っておりますし、大洋も広島もひとつのなにですから、まぁ、ひとつの、なにしてひとつなにするかはひとつのなにになるでしょう、ハイ」などと答える「ナガシマ」の姿が。同作のヒットを機にプロ野球4コマはちょっとしたブームとなり、『まんがスポーツ』『まんがパロ野球ニュース』などの専門誌も創刊された。そこでも長嶋は格好のネタだった。

荒唐無稽だが長嶋ならやりかねない?

そして、最後にご紹介するのは異色中の異色作。その名も『ロボット長島』(作:久米みのる・画:貝塚ひろし/1963年)だ。スランプに陥った長嶋は、猛練習に励むも調子が上がらない。そこに現れたのが、巨人のユニフォームを着た自分そっくりの男。それは、長嶋の大ファンである世界的なロボット研究者・海老原博士が作った「ロボット長島」だった。

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貝塚ひろし(作:久米みのる)『ロボット長島』(サン出版)COMIC・PET p12~13より

ロボット長島は、本家の1.5倍の力を出せるという。「きみほどの体力と才能があれば いまの一・五倍の成績をあげられるというこたえがでたのです」との博士の言葉に従い、ロボット相手に特訓に励む長嶋だが、その特訓の内容がすごい。

電流の流れる鉄条網をかいくぐるスライディング練習に、大砲から打ち出される大きくて重いマンモスボールを使ったミート練習。アクアラングを着けての水中打撃練習では、アクシデントでプールに放たれたピラニアの群れを打ちまくる。荒唐無稽にもほどがあるが、長嶋なら本気でやりかねないかも……と思ってしまうから恐ろしい。

同じ巨人のスーパースターでも、真面目な求道者イメージの王貞治はそこまでマンガに描かれていない。天真爛漫で奇想天外な長嶋茂雄のキャラクターあってこそ、マンガの中でも活躍できた。そういう意味でも唯一無二のスーパースターだったのだ。

南 信長 マンガ解説者

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みなみ のぶなが / Nobunaga Minami

1964年、大阪生まれ。マンガ解説者。朝日新聞読書面コミック欄のほか、各紙誌でマンガ関連記事を企画・執筆。著書『現代マンガの冒険者たち』『マンガの食卓』(ともにNTT出版)、『やりすぎマンガ列伝』(角川書店)、『1979年の奇跡 ガンダム、YMO、村上春樹』(文春新書)、『漫画家の自画像』『メガネとデブキャラの漫画史』(ともに左右社)など。2015年より手塚治虫文化賞選考委員も務める。

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