iPhoneがあなたの身分証に? マイナンバーカードが拓くデジタル社会の夜明け

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健康保険証としての活用もより便利になる。医療機関での手続きが効率化できるだけでなく、医療データのポータビリティー向上という可能性も秘めている。

デジタル化に伴う最大の懸念は、やはりセキュリティーである。「スマホを盗まれたらどうなるのか」といった漠然とした不安の声も聞かれるが、技術的な観点から見れば、iPhoneの生体認証(Face IDやTouch ID)とICチップ(セキュアエレメント)の組み合わせは、物理カードよりも圧倒的に高度なセキュリティを提供する。

多要素認証により、盗難や偽造のリスクは大幅に軽減され、iPhone紛失時も遠隔ロックや初期化が可能である。物理カードでは不可能だったこれらの機能は、デジタル化によって実現されるセキュリティの強化である。

マイナンバーカードで管理されるデータは、端末内で暗号化され、ネットワーク上には送信されないという点も押さえておきたい。物理カードも引き続き有効であるため、利用者の選択肢は広がる。

行政DXを超えたビジネスインパクト

マイナンバーカードのデジタル化は、行政DXの第一歩にすぎない。筆者は、これによる新たなビジネス機会の創出こそが、長期的な経済社会の発展につながると考える。

マイナンバーカードに含まれる正確な属性情報(年齢、居住地域など)を活用すれば、ターゲットを絞り込んだマーケティング、イベントでの本人確認簡素化による不正転売対策、金融サービスの本人認証プロセスの効率化など、多岐にわたる応用が可能だ。年齢制限のある商品販売の自動化は、人件費削減と顧客満足度向上を両立させる具体例である。

一方で、スマートフォンソフトウェア競争促進法(=スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律)との兼ね合いをどうするか、という課題も浮上してくる。

この法律は、第三者による代替アプリストアを許可することをアップルに求めており、iOSのセキュリティモデルに影響を与える可能性がある。競争政策とセキュリティ確保のバランスは、デジタル時代の根本的なジレンマを象徴しており、省庁の垣根を超えた議論が求められるだろう。

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