〈ハウステンボス〉開業以来最大のプロジェクトを担うのは、「ディズニーシー」新エリア開発と「西武園ゆうえんち」改装に携わった2人
HTBは「長崎オランダ村」を立ち上げた神近義邦氏が仕掛けた大型リゾート施設だった。だが2000年には、メインバンクの日本興業銀行(現みずほ銀行)が約200億円の債権を放棄。創業者の神近氏が社長を退任する。
後任の社長は興銀出身者が就いたが、2003年に会社更生法の適用を申請した。その後、野村プリンシパル・ファイナンス(当時)が再生を目指したものの、リーマン・ショックなどの影響で撤退。2010年からエイチ・アイ・エス(HIS)の傘下に入り再生を果たした。
しかし新型コロナウイルス禍の直撃でHISの経営が悪化、HTBの売却を余儀なくされた。そこに名乗りを上げたのがアジア系の投資会社「PAG」だ。
PAGは2022年に経営権を取得。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の再建などで知られる森岡毅氏が率いる「刀」(大阪市)にブランディングや運営の支援を依頼した。
糸山CMOが狙う「すごい」もの
HTBの常務執行役員CMO(最高マーケティング責任者)は、刀でシニアエグゼクティブ・ディレクターを務める糸山尚宏氏だ。西武ホールディングス傘下にある「西武園ゆうえんち」のリニューアルオープンをCMOとして指揮した人物でもある。
糸山氏は「この1、2年は成長に向けたブランドの設計図を描いていた」とし、HTBを感動と興奮を提供する「憧れの異世界。」に設定。さらに新テーマとして「ワクワクが、続々!」を掲げ、来園者がわくわくした気持ちで楽しめるパークの開発を継続的に進める方針を示した。

HTBの戦略はこうだ。「世界一」の称号を持つイルミネーションや、花火と噴水のナイトショー、クリスマスなど季節のイベント、ミッフィーの新エリア――。
「すごい」と感じるようなものを充実させることで、「少なくとも6、7時間は遊べて楽しそうと思ってもらえれば、人は距離を伴っても移動する」(糸山氏)とみる。
さらに、4〜5つの「すごい」ものがあると確信させることが、実際に足を運ぶかどうかの決め手となり、移動するうえでの「臨界点を超える」と期待する。
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