数学的に解説!お見合いパーティーで「1番好きな人」とマッチングできない理由 なぜアルゴリズムは「第2希望が最適解」と導くのか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

実はこのアルゴリズムを用いると安定マッチングができる。そのためには次のような手順を踏む。

①男性1と男性2が女性Aに、男性3が女性Bに、男性4が女性Cに告白する。
②女性Aは男性1をキープし、男性2を拒否。女性Bは男性3を、女性Cは男性4をキープする。
③男性2は女性Cに告白する。
④女性Cはキープしている男性4と男性2を比較し、男性2にキープを変更し、男性4を拒否。
⑤男性4は女性Dに告白する。女性Dは男性4をキープするため、全ての男性がキープされたことになり、安定マッチングが出来上がる。

ゲイル・シャープレーアルゴリズムは最大でも16(=4×4)回の試行で安定したマッチングを行うことができる効率的なアルゴリズムだ。

これまでに示したのは男性視点のマッチングだが、もちろん女性視点でも同様に行うことができる。その場合の安定マッチングは次のようになる。

教養としての数学史
(画像:『教養としての数学史』より)

男性と女性のどちらの視点に立つかによって結果は変わってくることに注意したい。

ゲイル・シャープレーアルゴリズムは、この安定結婚問題の解として提案されたものの、1980年代以降に驚くべき広がりを見せることになる。

「安定結婚問題」がノーベル経済学賞に結びつく

アメリカの経済学者のアルヴィン・ロスが、このアルゴリズムを「医学生と病院のマッチング」「生徒と学校のマッチング」「腎不全患者と腎臓のドナーのマッチング」に応用し始めた。

教養としての数学史
『教養としての数学史』(かんき出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

ゲイルがシャープレーに手紙で送った男女のマッチングの問題が、実社会のさまざまな問題を解決する鍵となったのである。

最後に提唱者である2人のその後について見てみよう。

ゲイルとシャープレーは1962年に画期的な論文を共著で出した後、それぞれの道を歩んでいる。

ゲイルは数学教育の分野で貢献を続け、シャープレーはマッチング理論をさらに発展させるべく研究を行った。

ロスによってゲイル・シャープレーアルゴリズムの可能性が世界に知られるようになり、2012年にシャープレーとロスはノーベル経済学賞を受賞した。

残念ながら2008年にゲイルが亡くなっていたため、シャープレーとロスのみの受賞となったが、式典にはゲイルの遺族も招待された。 

そして、シャープレーは次のように友を悼む。

この栄誉をデイヴィッド(ゲイル)と分かち合えなかったことが唯一の悔いだ。

プリンストンで奇跡的なマッチングを果たし、手紙が紡いだ2人の美しき友情がその言葉に表れている。

Fukusuke 数学史ライター&ブロガー

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ふくすけ

私立中高一貫校の数学教員。早稲田大学教育学部数学科を卒業し、2017年に同大学教職大学院を修了。数学サイト「Fukusukeの数学めも」を立ち上げ、月間8万PVにまで成長させた。サイトでは数学史をメインに、自身が授業で使用している数学ネタから大学数学の解説まで、幅広いコンテンツを発信している。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事