攻撃者はあなたのPCの対策など見透かしている サイバー犯罪者はセキュリティ対策をどこまで認識しているのか

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 これはもちろん、攻撃者にも有益に働いています。通信回線の品質やスピードが圧倒的に劣っている時にはできなかった「大量の情報窃取」がギガバイト単位ではなく、テラバイト単位でできるようになりました。

 また、攻撃者が予め用意していたサーバ(C2サーバ)との接続が切れることなく安定性が増しました。これらは、攻撃スピードも早まり、利用者が気づかないうちに攻撃を終えることができたり、大量にデータを送りつけてサービスを利用不能にすることも容易になった、ということを意味します。

DX推進とリモートワーク

<デジタル価値の上昇①:DX>

 DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を活用して、業務効率化や業務変革等を行うことです。DXは大きく「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタルトランスフォーメーション」に分けられます。

 デジタイゼーションは、紙をなくしてデジタルデータに置き換えること。デジタライゼーションはデジタルを使って業務効率化をはかったり、生産性を上げることで、時間圧縮を実現すること。デジタルトランスフォーメーションはデジタルを用いた事業変革により、ビジネスモデルや組織そのものの変革をなすものです。

 会社のあらゆる情報がデジタル化した上で集約されるため、デジタルデータの破壊や喪失=事業停止リスクに直結することになります。つまり、DXを推進すればするほどに、必然的にデジタルデータの価値が高まります。サイバー攻撃でデータが破壊されるなどすると、突然業務停止に追いやられてしまうのは、DXを積極的に推進していた企業となってしまうのです。

<デジタル価値の上昇②:デジタルを活用した働き方の定着>

 新型コロナウイルスの世界的な蔓延をきっかけとして、ステイホームを余儀なくされ、出社できない状況が突如として発生。「Withコロナ」という言葉が生み出され、テレワークが一気に普及するきっかけとなりました。社内ネットワークへのアクセスには、自宅からノートPCを接続したリモートワークが定着。外部にデータを置くことを恐れ、クラウドサービスの利用を控えていた企業も積極的に利用する形態へと体制が見直されました。

 新型コロナウイルスが5類に移行し、通常通りの生活ができるようになったものの、デジタルを活用した働き方が極めて有効であることに気づいた企業は、積極的にデジタル化を推し進め(それがDXにも繋がっていきます)「いつでも」「どこでも」仕事ができるように、働き方を変えた企業に採用申込者が集中する、という現象まで起こりました。

 ステイホームを余儀なくされたのは、サイバー攻撃者も一緒です。この時代の変化に、いち早く着目したのが攻撃者です。自宅からノートPCを接続し、リモートワークが世界中で行われていることに着目し、社内ネットワークにアクセスするための通信装置である「VPN機器」の脆弱性を狙い始めました。インターネット越しから社内環境に接続可能な「リモートデスクトップ」を積極的に狙い始めたのもこの頃です。デジタルを活用した働き方は、攻撃者にも同様の恩恵と莫大な「富」を提供したのです。

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