アップルが過去5年で90億ドルの不正アプリや取引を却下。手作業審査で築いた安全な流通環境とは

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また一見、無害に見せておいて、ユーザーに詐欺行為を持ちかける「おとり商法」型アプリもあり、これを理由に1万7000本のアプリを削除した。

ほかにもユーザーの認識や同意なしにプライバシー情報にアクセスしようとした理由で40万本といった具合で、App Storeへの掲載後もあらゆる角度から検証と監視を続けてユーザーの安全を守り続けている。

さらにApp Storeの検索結果やアプリの評価/レビューを不当に操作したり、スパム行為を行う可能性があった偽ユーザーアカウントの作成7億1100万件の阻止や、すでにあった約1億2900万アカウントの無効化など、App Storeの不正防止策は、いちいち数字の規模が大きく驚かされる。

だが、これがITの世界における不正行為の実態だ。多くのユーザーが登録し、恒常的に利用しているサービスに対しては、数撃てば当たる作戦でとにかく圧倒的な量でさまざまな不正行為の攻勢がかかる。

なぜなら、そのうちの1件でも通り、発見されるまで数日間でも不正行為を働ければ、そこで大きな利益を得られる可能性があるからだ。

だから、アプリ市場はもちろん、インターネット上の公共サービスなどは生半可なセキュリティーの知識やシステム設計(デザイン)の能力、技術力で臨むことはリスクが大きすぎる。

アップルは、さすがデザインの会社だけあって、こうした問題に小手先の技術だけでなく、システム全体のデザインや、そもそものデータの取り扱いに関する哲学の部分からきっちりとガイドラインを設け、多くのセキュリティー会社も文句がつけにくい桁違いに安心安全なソフトウェア利用環境を築いている。

開発者重視の収益配分構造

アップルの優れたApp Store市場のデザインは同社や、アプリを流通する開発者に大きな利益ももたらしている。

少し古い統計だが2022年時点でのApp Storeの市場規模は約1.1兆ドル(約154兆円)──日本の国家予算の1.38倍(東京ドーム4400個)の健全な取引を成立させている。

もっとも売り上げのほとんどはアップルではなく、開発者に入る仕組みになっている。一部、アプリなどの売り上げから30%の手数料を得ているとする報道もあるが、それらは古い情報に基づいた記事で正確ではない。

アップルは2021年からは基本手数料を15%に引き下げ、年間売り上げが100万ドル以上の大企業(全体の1%)のみから30%を徴収する形に切り替えている。

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