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〈今週のもう1冊〉『日吉アカデミア一九七六』書評/精神の核に影響を与える思春期の記憶、過ごした環境

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『日吉アカデミア 一九七六』原 武史 著
日吉アカデミア 一九七六(原 武史 著/講談社/2860円/400ページ)
[著者プロフィル]原 武史(はら・たけし)/明治学院大学名誉教授、放送大学客員教授。専門は日本政治思想史。1962年生まれ。早稲田大学卒業。『「民都」大阪対「帝都」東京』でサントリー学芸賞、『大正天皇』で毎日出版文化賞、『滝山コミューン一九七四』で講談社ノンフィクション賞、『昭和天皇』で司馬遼太郎賞を受賞。
さまざまな分野の専門家が、幅広い分野から厳選した書籍を紹介する。【土曜日更新】

不思議な味わいを呼び起こす書だ。著者が慶応義塾普通部(※男子中学校)で過ごした3年間の記憶に、1970年代の日本の空気を彷彿とさせる硬軟の事件や流行の記述が色彩を与え、陰影を生む。ユニークな個人史だ。

著者の小学生時代の回顧録『滝山コミューン一九七四』の続編となる本書は、75年2月、中学受験の朝の記憶から始まる。入学後の学園生活の細部までさまざまに語られるが、印象に残るのは、一貫した「鉄学」への傾倒ぶりだ。鉄道へのあふれる愛、熱い探究の日々。半世紀前の記憶が詳細であることや、当時の著者の観察力に驚かされる。

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