筆者はさらに5月20日の防衛省報道官定期会見で安居院公仁報道官にこの件を尋ねたが、回答は同様だった。
この論理が成立するなら、どのような問題発言でも後に訂正すれば不問になる。2016年に発生した南スーダン派遣部隊の日報隠蔽問題でも、同じ理屈を用いれば当時の関係者は辞任する必要がなかったことになる。
「搭乗員らしきもの」発言で会見をやり直し
一方、5月16日、T-4練習機墜落に関する防衛大臣の臨時記者会見で「搭乗員らしきものを発見し、収容した。損傷が相当激しい」との中谷大臣の発言が遺体の扱いをめぐって批判され、同日中に会見がやり直された。中谷大臣が「搭乗員らしきもの」と述べたのは、当時遺体かどうか確認が取れていなかったためと考えられる。
実際、報道官も「搭乗員2名が行方不明」「搭乗員と思われる体の一部を発見及び収容」と説明しており、遺体と断定していない。防衛省が乗員2名の死亡を確認したのは22日である。筆者の取材した自衛隊関係者も、大臣発言を問題視していなかった。
言い回しに対する批判を浴びて会見をやり直す一方で、明らかな事実誤認については訂正を拒む。防衛記者クラブもC-17発言の訂正を求めなかった。防衛省も記者クラブも感情的な問題には敏感に反応するが事実認定には極めて鈍いということになる。本来、報道機関であれば事実こそが最も重要なはずだ。
こうした状況が続けば、大臣は萎縮し、自らの言葉で説明しようとしなくなるおそれがある。防衛省では以前から、大臣会見の前日までに記者クラブ側から質問が提出され、それに基づいて官僚が答弁書を作成し、会見で大臣が読み上げる形式的なやり取りが行われてきた。筆者も過去に報道室から事前質問の提出を求められたが応じなかった。
このような異様な「会見」をおこなっている日本は例外的だ。これでは失言も揚げ足取りも回避できるかもしれないが、会見本来の意義が失われる。中谷大臣がそうするとは限らないものの、将来の防衛大臣が事前提出された質問にしか答えない会見を開く可能性も否定できない。
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