思い込みは敵か味方か?“認知バイアス”が私たちを守る理由とは?「バイアスを持たないようにしよう」という努力は無駄である

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この「情報を捨てる」作業がうまくいかなければ、情報の海で溺れてしまいます。それで人はほとんどの場合、必要な情報もそうでない情報もまとめてスルーしてしまうのです。

しかし、もし、道路を歩いているときにすべての情報をスルーしてしまったら、どうなるでしょうか? 信号をスルーして道路に出たら、車にひかれてしまうかもしれません。人にぶつかったり、工事中の穴に落ちてしまったり……。どう考えても危険です。

ですから、必要な情報を適切に取り込むためには、何らかの形で情報を絞り込むしかありません。思考バイアスによる無意識の情報の取捨選択や重み付けは、その役割を担っているのです。

もちろん、思い込みなしに世界と対峙できれば素晴らしいことです。でもそれは、できないことなのです。思い込みなしで世界に放り込まれたら、情報の海に溺れるしかないからです。

【バイアス② 】確証バイアス 都合のいい情報ばかりを集める

今、私たちは情報を無意識に取捨選択している、と言いました。私たちはつねに、ある種の「信念」や「仮説」に基づいて、自分の信念や仮説に合う情報に注目し、合わない情報はスルーしています。無作為やランダムに行っているわけでも、フェアな観点で情報を集めて検証しているわけでもないのですね。

このような、「自分に都合のいいデータだけが無意識に目立って見え、そればかり集めてしまう」「反対に、都合の悪いデータは無意識に軽視してしまう」という傾向を「確証バイアス」といいます。この「確証バイアス」こそ、最近とくに意識し注意しなければいけないバイアスだといえるでしょう。

なぜかというと、「エコーチェンバー」現象によって、このバイアスが無自覚に、そして必要以上に強化されてしまっているからです。

「エコーチェンバー」とは、インターネットのアルゴリズムによって引き起こされるもので、ある特定のことを調べたりサイトや動画を見たりすると、それと同じ種類の情報ばかりが表示されるようになるというものです。

たとえば、何かの事件についてニュースサイトで見たらその後、そのニュースに関連する情報ばかりが表示されるようになる。あるブランド品を購入したら、そのブランドの違う商品の広告ばかりが表示されるようになる。SNSで自分の意見を述べたら、その意見に近い人の意見ばかりが表示されるようになる……。

いつでも自分のスマホやパソコンの画面にそうした情報が表示されれば、「世の中から注目されている重要な情報なんだ」「このブランドは広く知られているんだ」「みんなが同じ考えを持っているんだ」……などと、無意識のうちに思い込んでいってしまいます。

要するに、エコーチェンバーは、人間の「確証バイアス」を、インターネットが人為的に増幅させているものなのです。

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