29年連続国内トップシェア「シック」強さの秘訣 「ビューティグルーミング」を支える技術革新

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
本格的なシェービングが自宅で手軽にできるウェットシェービング。日本のウェットシェービング市場において、29年連続でトップシェア*を獲得しているのがシックだ。なぜシックは、長期間にわたって選ばれ続けているのか。そこには、連続した技術革新の歴史があった。100年前の創業時から、現在同社を代表するシリーズである「ハイドロ」に至るまで、シックの製品とともに強さの秘密に迫る。 
* インテージ SRI+カミソリ市場(ホルダー、ディスポーザブル、替刃)1995年11月~2024年10月各年累計販売金額

知られざるシェーバーの技術革新の歴史 

今や、自分でシェービングをするのが当たり前となったが、約100年前まではそうではなかった。鋭い刃がむき出しになっている直剃りカミソリが主流で、刃を研ぐなどのメンテナンスも必要なため、理容のプロ以外で使いこなせる人はごく少数だった。

そうした状況を変えたのが、メンテナンスの必要のない製品だ。1921年に米国でシックを創業したヤコブ・シックは、刃に触らずワンタッチで交換できる「マガジン式連続充填型カミソリ(充填式レザー)」を発明。

安全かつ便利な製品として多くの消費者に受け入れられたが、技術革新への飽くなき挑戦はその後も続いた。

エポックメイキングとなったのは、1950~60年代の連続的な「刃のイノベーション」だ。

56年に傘下のウィルキンソンとドイツ企業との共同研究で実現させたステンレス刃は、従来の炭素鋼が抱えていた「錆びやすい」という課題を解消。

61年には、米デュポンと提携してフッ素樹脂コーティングの技術を実用化し、滑らかな剃り心地を実現した。欧州では生産が間に合わず、製品広告を停止したというエピソードも残っているほどだ。

そして68年には、刃の耐久性を著しく向上させるメタルコーティングの開発に成功する。

70年代に入ると、快適な剃り心地を実現する2枚刃や、平面ではない顔や顎のラインに刃を密着させてその負担を軽減させる「首振り式ヘッド」で「深剃り」を実現するとともに、潤滑剤を装備したカートリッジを発明。

98年には、世界初※1の3D(三次元)システム3枚刃「プロテクター3D」で、刃をプロテクトする「マイクロセーフティーワイヤー」を搭載し、シェービング時に横滑りしにくく、万一横滑りしても肌が傷つきにくい構造を作り上げている。

「シックは、発明家が生み出したブランドです。革新的でワクワク感のあるものを生み出そうというマインドがものづくりの根幹にあり、今に至るまで受け継がれています」とシック・ジャパン 代表取締役社長の後藤秀夫氏は語るが、歴史をひもとくと「ワクワク感」にさらなる奥行きがあることがわかる。

安全性と利便性の追求からスタートし、刃の耐久性を高め、「肌にやさしくスムーズな剃り心地」と「深剃り」の両立を目指し、シェービング体験そのものを変えてきたのだ。

※1 同社調べ 

シックが愛され続ける理由

シックが創出してきた新たなシェービング体験が消費者に支持され続けているのは、ウェットシェービング市場において29年連続で国内トップシェアを獲得していることからも明らかだ。なぜそこまで愛されるのか。後藤氏は次のように分析する。

シック・ジャパン 代表取締役社長
後藤 秀夫

「切れ味のよさや耐久性の高さ、肌を傷つけない工夫といった細部にわたる品質へのこだわりに加え、持ちやすいハンドルなど使いやすさを重視した設計にも力を注いできました。

男性用だけでなく女性用の製品も早くから展開しているほか、敏感肌用やボディ用など肌質や使用部位など、用途に合わせた豊富なラインナップをご用意し、潜在的なものも含めたお客様のニーズに応え続けてきたのも、年代性別を問わず愛されている理由だと考えています」

消費者のニーズに応えられるのは、日本国内においても研究開発に力を注いでいるからでもある。肌テストや深剃りのテスト、科学的な機能性評価を毎日のように行っている。

「シック・ジャパンのオフィスに、『ビューティグルーミングスタジオ』を併設しています。製品の評価やデモンストレーションなどがクイックに完結できるうえ、社員のアイデアをすぐに試せるのは大きいですね」(後藤氏)

2023年にシック・ジャパン本社内に設置した「ビューティグルーミングスタジオ」。研究開発用ラボで、商品テストなどを行っている

そうやって研究開発を積み重ねた結果、生み出されたのが同社のウェットシェービング製品を代表する「ハイドロ」シリーズだ。マーケティング本部長の疋田智彦氏は、その特徴について次のように説明する。

シック・ジャパン マーケティング本部長
疋田 智彦

「日本の男性の多くは、シェービングに対して深い剃り味を求めるだけでなく、自分の肌を敏感だと捉えているため、ハイドロシリーズのシェーバーでは『肌への刺激を軽減』『より快適な剃り心地』を実現しました。

5枚ある刃の裏すべてにスキンガードを付けて、刃と刃の間に肌が食い込むのを防いでいるほか、鼻の下などの細かい部分が剃りやすいフリップ式トリマーも装着しています。

さらにハイドロの最大の特徴である、刃の上部にある“ジェルボックス”が水に触れることで濃密ジェルが溶け出すので、よりスムーズなシェービング体験が実現できるのです。

ジェルが溶け出てこなくなったら刃を替える一つの目安なので、切れ味の悪い刃で肌トラブルを発生させるのを防ぐこともできます」

ハイドロ5 プレミアム つるり肌へ ホルダー (刃付き+替刃1コ)

刃にも独自の技術が使われている。疋田氏によると「シック史上、最も薄く強度のある刃」となっており、多層ナノコーティングが施され、滑らかな剃り心地を実現した。

「ハイドロ5は『深剃りなのに肌への負荷を抑える』ことを重視した設計になっています。それだけでなく、シェービング効果によって古い角質を除去することができ、清潔感のある肌の印象を与えられます」(疋田氏)

シェービングを起点とした「ビューティ体験」へ 

消費者のニーズに応え続ける連続的なイノベーションによって、シェービング体験は誰でも手軽にできる「ひげ剃り」から、剃り心地や肌へのおもいやりといった細部にまでこだわるフェーズへと進化した。後藤氏はこのステージを「ビューティグルーミング」と表現する。

「私たちシックが専門とする領域は、シェービングを超えた『ビューティグルーミング』と再定義をしました。

コロナ禍を経て、メンズビューティ市場は急伸しています。加えて、Z世代を中心にスキンケアをする男性が増えてきました。Z世代は10年後には30~40歳になりますから、メンズのスキンケアが当たり前の時代がやってくるでしょう。

だからこそ、毎日行うシェービングを起点としたスキンケアを提案していくことが重要だと考えています」

シェービング前後の肌ケア製品に力を注いでいるのもそのためだ。とりわけ今、消費者の支持が拡大しているのが「ハイドロ シェービングクリーム」。シアバター※2とアロエエキス※3を配合した高保湿設計のシェービング剤で、シェービング後の保湿クリームとしても使える。

ハイドロ シェービングクリーム 177g

「シェービングの際、せっけんや洗顔フォームを使う人も多いのですが、汚れを落とす成分がメインなので刃を滑らせるのには向いていません。

シェービング剤を使用することで、テフロン加工のフライパンでも油を引いたほうがいいように、滑りやすさをさらに向上し、肌への負担を軽減するため、より快適なシェービング体験につながります。

その中でも、ハイドロ シェービングクリームは、肌への“保湿”効果も考えた設計なので、シェービングしながら肌を保湿し、シェービング後もしっとりとした肌へ導くことができます」(疋田氏)

2025年2月には、新たに美容に特化したトータルグルーミングブランド「progista(プロジスタ)」を発売。シェービングの前後の肌ケアに着目した製品を展開するなど、新たなビューティグルーミング体験を推し進めている。

「シック・ジャパンは『Make Beauty Grooming Joyful』をパーパスとし、『ビューティグルーミングを通して一人でも多くのお客様にワクワク感と幸せを感じていただける毎日を届ける』を存在意義に設定しています。

お客様が自信を高め、理想の自分に近づける製品を届けたいので、刃やジェルだけでなく、ホルダーやパッケージのデザインまでビューティフィケーションを進めていきます」(後藤氏)

今までの成功にとどまることなく、積極的に新たなチャレンジができるのは、イノベーションの連続でトップシェアを獲得してきたからだろう。「ビューティグルーミング」という新たな領域を生み出し、さらなる成長を遂げようとするシック・ジャパンの動向から今後も目が離せない。

※2 シア脂(保湿成分)
※3 アロエベラ液汁(保湿成分)

>>ハイドロ5について詳しく知る

>>シック・ジャパンのビジネス戦略をまとめた書籍についてはこちら

『シック・ジャパン 企業変革のレシピ』
後藤秀夫著(幻冬舎刊)