「売上が右肩上がりなわけがない」…あやしい取引先の決算書から【粉飾決算】を見抜く4つのポイント
もし、粉飾行為が現場のあずかり知らないところで実行されていた場合は、きっと「そんなことはない」という回答が返ってくることでしょう。
③売上高や利益の額が不自然に横ばいもしくは上向き
決算書を分析する場合に重要な考え方の1つに、「あるべき決算書の姿」を想定し、それと矛盾する情報を見つけて掘り下げるというものがあります。たとえば「対象会社の属する業界は、近年円安の影響で業績が悪くなっている」ということがわかっている場合、それにもかかわらず業績がよくなっているケースなどは注意が必要かもしれません。
もちろん、これだけで粉飾の有無を判断できるものではありません。その分析結果を補完する追加の情報が必要となりますが、「この景気の悪いときに、売上が右肩上がりなんてあるわけない」という感覚は大切にしたいものです。
決算書から見えてくる「粉飾のサイン」
④その他の指標
上記のほか、減価償却費の未計上は、損益計算書の減価償却費と、貸借対照表の固定資産残高の関係を見れば概ねわかります。
また、現金残高(預金残高ではありません)や貸付金残高が増加傾向にあることは、売上債権の増加と同様に架空売上の端緒である可能性があります。
利益率が同業他社と比べて異常に低い場合などは、循環取引をはじめ、不自然な取引を行っていることがうかがい知れます。
以上、「粉飾決算の見抜き方」を説明してきましたが、いずれにせよ、「売上債権が増加しているから架空売上だ」などと判断できるものではなく、本当に粉飾決算をしているかどうかは、よほど証拠を揃えないと確定的な判断は下せません。
しかし、粉飾決算を行っている会社の多くは「サイン」を発しています。特に中小企業が行う粉飾決算は、サインが明らかであることが多々あります。決算書を入手した際には、1度数字を並べて、高い視点から眺めてみてはいかがでしょうか。
京都大学経済学部卒業後、監査法人トーマツ(現:有限責任監査法人トーマツ)京都事務所入所。公認会計士として製造業、卸売業、金融業、小売流通業、病院、学校法人の会計監査を行うとともに、アドバイザリー部門にて内部統制・不正防止のためのモニタリング等支援に従事。2019年の独立開業後は、監査法人勤務時に培った企業分析力を活かし、中小企業や個人事業主の経営をサポートする。
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