「売上が右肩上がりなわけがない」…あやしい取引先の決算書から【粉飾決算】を見抜く4つのポイント

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もっとも、残念ながら決算書を見ただけで粉飾を確定的に発見することはできません。しかし、前提知識があれば、ある程度のあたりをつけることは可能です。

(1)大局的な決算書の分析

数年分の決算書が入手できたら、まず貸借対照表と損益計算書の数字を勘定科目ごとに時系列で並べて、「高い目線」で数字を眺めてみます。そして、「この科目は増加傾向だな、この科目は横ばいだな」という数字上の事実と、業界知識や経済情勢の知識と合わせてみることで、決算書の不自然な部分を捉えることができるようになります。

筆者の場合は、たとえば売上の推移、利益額および利益率の推移、現預金残高の推移をまずチェックし、大まかな業績の推移を把握します。また、それ以外の勘定科目についても、著しく増減しているものがあれば、持っている周辺情報との整合性を確認します。

重要なのは、この数字はこのように動くはずだ(あるいは動くはずがない)といった"期待値とのずれ"を確認する感覚です。

(2)個別的な粉飾の指標

以下は、大局的な決算書の分析を実施したうえで、より個別に検討する必要のある事項です。

①売掛金や受取手形残高が増加傾向

商売とは、財・サービスを提供するだけではなく、代金を回収して初めて完結します。売掛金や受取手形(以下、「売上債権」といいます)というのは、その代金が未回収の状態を指します。

黒字倒産という言葉がありますが、これは、損益計算上は利益が出ている、すなわち黒字なのにもかかわらず、会社が倒産してしまうことです。その主な原因の1つが、この売上債権の増加と未回収です。

粉飾決算との関連でいうと、架空売上があると、回収できない売上債権残高が増加する傾向が出てきます。したがって、売上が伸びている、あるいは横ばいなのに、現預金が増えずに売上債権ばかりが増えているようなケースは注意を要するといえます。

「もしかしたら粉飾かも」という感覚を大切に

②棚卸資産残高が増加傾向

前述のとおり、中小企業の場合、在庫は水増しを行うことが非常に容易です。したがって、売上高の推移に大きな変化がないのにもかかわらず、棚卸資産残高が急増あるいは増加傾向にある場合は、在庫の水増しの可能性が疑われます。

また、帳簿上でのみ在庫の水増しを実行した場合、不自然に売上総利益率(売上総利益÷売上高)が上昇するので、そちらも合わせて確認するとよいでしょう。

あるいは、難易度は高いですが、公認会計士監査の手法を借りることも考えられます。対象会社の倉庫等を訪問する機会をつくり、さりげなく現場の従業員に「近頃、在庫が増えているみたいですね」などというようなことを雑談のなかで聞いてみるのです。

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