「売上が右肩上がりなわけがない」…あやしい取引先の決算書から【粉飾決算】を見抜く4つのポイント

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循環取引では、1度販売した在庫が回り回って仕入として返ってくることになるので、実態としての売上取引は成立していません。循環取引が(1)の架空売上と決定的に違うのは、取引に関する一連の書類が基本的に揃っており、一見するだけでは不正な取引であることがわからない点です。

(3)減価償却費の未計上

利益を水増しするため、一定のルールに基づいて計上すべき減価償却費を故意に計上しない方法です。減価償却費とは、固定資産の価値の減少部分を費用化したものとして説明されますが、減価償却を実施しないことによって費用を減らし、結果として利益を増加させることができます。

減価償却の未計上に関しては、法人税法上、減価償却が任意であることから、比較的安易に実行されやすい利益水増し方法です。

(4)在庫の過大計上

中小企業の場合、在庫の棚卸しは上場企業ほど厳密に行われていないケースが非常に多いです。

上場企業では、棚卸しは日程やカウント方法、棚卸報告にいたるまで、手続きを厳密に定めることが求められます。そのため棚卸しの結果についても、基本的には実態をそのまま表わしているといえます。

しかし、中小企業の場合は、そういった棚卸しのルールが厳密に定められていません。誤解を恐れずにいえば、経営者の胸先三寸で在庫の残高を決定することができてしまいます。

在庫の過大計上による利益の水増しは非常に「お手軽」で、減価償却費の未計上とともに安易に実行され得る方法です。

(5)債務の未計上

企業は決算に際して、財・サービスを受取り済みで、かつ支払いが済んでいないものについて、買掛金あるいは未払金として計上します。この買掛金や未払金を意図的に計上しないことによって、利益を水増しすることができます。

たとえば、決算月に大規模な修繕工事を行い、工事自体は年度内に完了したものの、支払いは翌期となる場合において、本来であれば次のような決算修正仕訳を切る必要があります。

修繕費X円/未払金X円

故意にこの仕訳を脱漏させることにより、当該修繕費を翌期に先送りすることができます。

粉飾決算を見抜くポイント

では、このような粉飾決算を見抜くにはどうすればよいか? まずは、対象会社から直接、あるいは帝国データバンク等を通して決算書を入手しましょう。できれば、3〜5年分あるとなおよいです。

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