アドビの「画像・動画生成AI」何がすごいのか? 生成AIのビジネス利用「著作権侵害を防ぐには」

コンテンツ量は2年で5倍以上になる可能性
企業と顧客とのコミュニケーションの変化を表す、興味深いデータがある。アドビの調査(※1)によれば、顧客の71%はパーソナライズエクスペリエンスを企業に期待し、そのうち76%はそんな企業から優先的に購入しているというのだ。
「パンデミック以降、購買行動がオンライン化したことで、あらゆる業種・業態で同様の変化が起こっています」と話すのは、アドビの加藤修一氏だ。加藤氏は、顧客接点とマーケティング戦略の見直しが急速に進んでいると指摘する。
「まず、顧客接点がSNSを中心とするデジタル空間に大きくシフトしました。そして、その形式も画像だけでなく動画やAR、VR、3Dと広がっています。こうした顧客体験への投資が、ブランド認知や収益成長、顧客維持率に大きく影響するからです。しかも当社の試算(※2)では、企業・ブランド側が制作するコンテンツ点数が、2026年に24年と比べて少なくとも5〜20倍まで増加するという結果が出ています」(加藤氏)

アドビ Creative Cloud Specialist
インターネットベンチャー企業でウェブデザインやディレクションを経験した後、2013年5月にアドビに入社。主にエンタープライズ企業向けに「Adobe Creative Cloud」を用いた業務効率化・ワークフロー改善を提案
なぜそこまでコンテンツ量が増えるのか。加藤氏は「SNSだけでもかなりのバリエーションが必要」だと説明する。
「SNSとひとくくりにできないほど、それぞれ異なる特性があります。そのうえで地域性や季節性も意識しなくてはなりません。プロダクトによっては、天候によって変える必要も出てきます。加えて、顧客に“私向けだ”と思ってもらう必要があります。顧客は企業にパーソナライズエクスペリエンスを期待しているからです。さまざまなシチュエーション、切り口の異なるコンテンツが求められます」(加藤氏)
バリエーションの多さだけでなく、従来とは桁違いのスピードが求められるのも大きな変化だ。
「テレビやラジオ、雑誌、新聞だけでなく、ウェブもコンテンツの制作から公開まで一定の時間をかけることができます。しかし、SNSは“待ったなし”です。公開から効果測定、次のコンテンツ制作までのサイクルが非常に短いんです」

この変化は、コンテンツ制作を行うクリエイティブチームに大きな負荷を与えている。多くの企業は、売り上げへの影響力も大きいオンラインでの顧客コミュニケーションを向上し、かつ競争力を高める手立てを講じる必要がある。
約6億点の使い放題&安全性を考慮した素材
スピーディに高品質なコンテンツを制作する方法として考えられるのは、生成AIとストックフォトの活用だ。しかし、この2つには安全性への懸念が根強くある。
「よなよなエール」など個性的なクラフトビールで多くのファンを持つヤッホーブルーイングも、不安を抱えながらコンテンツの制作をしていたという。

「ヤッホーブルーイング様は、SNSの発信を始めてから、短期間でたくさんの画像を制作する必要が生じました。時間をかけられないのでフリー素材を使うこともあったようですが、数に限りがあるうえ、権利の確認にかなりの手間がかかりました。そこまで手間をかけても、『本当に安全なのだろうか』という懸念が拭えなかったそうです」
そこで導入したのが、『Adobe Creative Cloud グループ版 Pro エディション』。
とくに、通常のフリー素材で必要な「透かし入り写真で社内の承認を得てから購入する」煩雑な承認フローを経ず、使いたいときにすぐ入手できるスピード感が魅力だ。「1回使ったら手放せない」との言葉も寄せられている。

「ただでさえ制作量が増えてプレッシャーを抱えていると、ちょっとした不安でも動きが鈍りますので、権利関係の不安がないのは大きいのではないでしょうか。また、『Adobe Stock』は気になった素材を自由に使えるので、あれこれ試行錯誤しながら案を練ることができます」
効率性だけでなく、創造性を高めるきっかけともなりうるようだ。画像・動画の生成AIツール「Adobe Firefly」が2023年9月に商用利用可能になり、『Adobe Creative Cloud グループ版 Pro エディション』に組み込まれてからは、さらにその傾向が強まっているという。
画像は「探す」から、AIで「作る」時代へ
「Adobe Stockもそうですが、写真サービスの課題はイメージに合ったものを探し出すのに時間がかかってしまうことでした。ところが、生成AIツール『Adobe Firefly』が登場したことで、イメージは“探す”のではなく“作る”ことが可能になったのです」
例えば、イメージどおりのポーズの写真を探すのは容易ではないが、Adobe Fireflyならば自分でポーズをとって撮影し、簡単なプロンプトを入力すればいい。現実には撮影の難しい場面も、容易に生成できる。

「どちらの画像も、IllustratorやPhotoshopを使えば作れますが、どうしても時間がかかります。一方で『どんなプロンプトを入れればいいかわからない』というお悩みも聞きますが、Adobe Fireflyはごくシンプルなプロンプトでも、画像が生成できる設計を意識しています。デザインスキルを持っている人はより多くの案を試せますし、そうじゃない人も高品質なコンテンツを作ることができます。ヤッホーブルーイング様でも、社内クリエイティブチームである『図工室』のメンバーだけでなく、社内の大勢の方がAdobe Fireflyを活用されています」
競争力を向上する画像・動画コンテンツの発信
生成AIをめぐっては、著作権など知的財産権を侵害するリスクが気になる人も多いだろう。ストックフォトは権利を確認したものしか扱っていなくても、生成AIが学習したデータの中に無許諾の画像が含まれている可能性を考えてしまうのは無理もない話だ。
ところが、加藤氏は「Adobe Fireflyは商用利用を想定した設計を心がけています」と胸を張る。
「Adobe Fireflyのトレーニングには、Adobe Stockなどの使用許諾を受けたコンテンツのデータセットおよび著作権の切れた一般コンテンツが使用されています。ウェブサイトからコンテンツを収集することはありません。加えて、知的財産権で保護されている作品名などを随時アップデートし、プロンプトにそうした作品名が入力されるとアラートが出る設計となっているほか、生成したデジタルコンテンツの出所を明示した『来歴』も見られるようにしています」

2025年2月には、商用利用可能な動画の生成AIモデルもベータ版としてリリース。前述の画像生成と同様に、簡単なプロンプトのみで動画を生成できるようになった。
「動画は写真の5000倍、文字情報の180万倍、ウェブページの3600ページ分の情報量(※3)を持っているとされます。でも、動画の撮影・編集をできる人材がいないという企業は少なくありません。そうした人材の採用や、外部パートナーへの依頼は相応のコストも時間もかかります。クリエイション(創造性)とプロダクション(生産性)の双方を高め、競争力を向上させるツールとして、ぜひAdobe Fireflyをお気軽に試していただきたいと思います」

従来、写真やイラスト、動画はそれぞれ別々に発注し、品質のマネジメントを行う必要があった。今はフリー素材も多いが、権利関係の確認や必要な手続きをするのは手間も時間もかかる。そうした手間や知的財産権の侵害などのリスクに配慮したイラスト、画像、動画まで利用できる『Adobe Creative Cloud グループ版 Pro エディション』は、顧客エンゲージメントを向上させるうえで有効なサービスだといえそうだ。
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