グローバルビジネスの「成否を分けるカギ」とは 今、専門家チームの伴走が求められる理由

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PwCコンサルティング合同会社 桂 憲司氏、PwCコンサルティング合同会社 村田 俊博氏、
グローバルビジネスの成否は、日系企業の未来をも左右する。世界情勢が激しく変動し、テクノロジーが急速に進化する中、グローバルで持続的な成長を実現するためには何が必要なのか。PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)で、日系企業のグローバルビジネス拡大を支援する桂憲司氏と村田俊博氏に、複雑化する世界で競争力を維持し、新たな価値を創造するためのポイントを聞いた。

日系企業のグローバルビジネスに立ちはだかる複雑な課題

――まず、グローバルビジネス拡大に関して、日系企業からどのような相談が寄せられているでしょうか。

 地政学リスクに関するご相談が急増しています。2016年のブレグジット決定以降、米中対立、ウクライナ紛争など目まぐるしい情勢変化が影響し、先行きの見通しが非常に不透明な状況です。このような環境下で、多くの日系企業はグローバルビジネスにおける多様かつ複雑な課題に直面しています。

例えば、国際情勢の変化に伴うサプライチェーンの再構築や調達先の見直し、サプライチェーン分断リスクを想定した対策など、具体的な課題が山積しています。グローバル全体でのガバナンス強化を図りながら、どのように新たなビジネスチャンスを見いだし、事業を拡大していくかというご相談も多く寄せられています。

PwCコンサルティング合同会社 副代表執行役 PwC Japanグループ チーフ・ストラテジー・オフィサー兼チーフ・イノベーション・オフィサー 桂憲 司氏
桂 憲司
PwCコンサルティング合同会社
副代表執行役
PwC Japanグループ チーフ・ストラテジー・オフィサー兼チーフ・イノベーション・オフィサー
PwC Japanグループのストラテジー、トランスフォーメーション、テクノロジー、リスク、デジタルなど全体のサービスおよびプラットフォームの責任者。グローバルビジネスストラテジーのチームリーダーも務める

村田 経営層からは、地政学リスクに加えて、AIを代表とするテクノロジーのグローバルでの活用に関するご相談が増えています。AIはサプライチェーンの最適化から新たなビジネスモデルの創出まで、ビジネスの根幹を揺るがすほどのインパクトをもたらす可能性があるからです。変化の激しい現代において、AIをいかに自社ビジネス拡大に取り込むかが、多くの経営者の関心事となっています。

多くの企業がAIの重要性を認識し、導入を検討している一方、具体的な活用における競争優位性の確立に課題を感じている企業が多いと受け止めています。PwCではこれらの課題に対し、専門家チームの知見を結集し、クライアントがAIやテクノロジーを活用した新たなグローバルでのビジネスモデルを生み出せるよう支援をしています。

PwCコンサルティング合同会社 執行役員,パートナー 村田 俊博氏
村田 俊博
PwCコンサルティング合同会社
執行役員,パートナー
グローバルでのビジネスモデル改革、サプライチェーンおよびエンジニアリングチェーンを範囲とするオペレーションモデルの構築・最適化、経営管理、ERPなどのシステム導入に従事 。グローバルビジネスストラテジーの共同リーダーも担う

――世界情勢の変化やテクノロジーの急速な進化など、ビジネスの見通しが不透明な中で、グローバル戦略において経営者が注力するべきことは何でしょうか。

 日系企業の海外M&Aでは、企業統合(PMI)において、買収先企業のガバナンス不足、文化や社内システムの違いなどから統合プロセスが後手に回り、思うようにシナジーを創出できないケースが見受けられます。それを回避するためには、本社の統制力と現地特性との調和、さらには外部支援や欧米型モデルの採用を視野に入れたグローバル標準モデルの構築が急務です。

日系企業は業務モデルを細部までつくり込む傾向があり、多様な文化やビジネス慣習を持つグローバル環境においては、柔軟性に欠ける場合があります。そのため、本社による一定の統制を保ちつつ、現地の状況に合わせた自律性を尊重するバランスの取れたグローバル標準モデルを確立することが、今後の日系企業の国際競争力を高めるうえでたいへん重要です。

村田 日系企業の経営者には、グローバルで外部環境変化を鋭く察知する能力が必要です。今日の世界の国々は高度に相互依存しており、複雑な連動が見受けられる中、分断の動きも加速しています。こうした状況を踏まえ、どの地域のどのような変化に注目するのか、そして、そこで講じるべき適切な対策を見極めることは、経営者の重要な役割になっています。

世界のどこかで発生する事象が自社の今後の業績にどのようなインパクトをもたらすのか、これらを把握できる機能も必要でしょう。地政学的な要因も含め、各国での出来事が自社に与える影響を複数のシナリオで事前に検証し、対応策を策定する動きを始めなくてはなりません。

その際に重要なのは、外部情報と社内情報のつながりを明確に持つことです。早期に情報をキャッチし、グローバル拠点が連携して迅速に対応できる体制を構築することが、これからの時代において企業の競争力を大きく左右すると考えています。

一方で、こうした体制をつくりグローバル戦略を円滑に遂行するために、自社だけですべてを網羅することに限界があることも事実でしょう。

世界をつなぐネットワークがグローバル課題の壁を打ち破る

 やはり、グローバルビジネスで成功を収めるためには、広範囲にわたるネットワークを持つパートナーの存在がたいへん重要となります。既存事業での海外進出や海外での拡大であっても、バリューチェーンにおける意思決定者は国や地域によって異なるため、的確な見極めが不可欠です。

例えば、産業全体の構造とそれぞれの地域を深く理解している第三者の視点を入れることで、自社の市場における立ち位置が明らかになる、先進事例からデータの効果的な活用方法を学ぶ、そして外部環境の変化が自社に与える影響を把握する、などが可能になるでしょう。

村田 複雑化の一途をたどるグローバル課題に直面し、その本質を見極めることが困難になっています。もはや、既存のビジネスコンサルティングの枠を超えて、さまざまな領域を横断した多角的な視点からの解決策が必要です。

例えば、関税問題への対応1つ取っても、その変化による影響分析からサプライチェーンの再構築に至るまで、税務、ビジネスプロセス、規制、そして地政学といった広範な知識を組み合わせてアプローチしなければなりません。

――これまで数多くの日系企業のグローバルビジネスを支援してきた、PwCコンサルティングの強みについて教えてください。

 私どもの強みは、PwC Japanグループのコンサルティング、M&A、税務といった多様な専門家の知見を結集し、迅速かつ包括的なサポートを提供できることです。さらに、世界149カ国に37万人を超えるスタッフを擁する強固なグローバルネットワークを基盤に、クライアントの複雑な課題に挑んでいます。

日系企業からのご相談に対し、海外各地の専門家で構成されたチームを組成できます。グローバルビジネスを牽引する基盤と、国境を越えた協働を容易にする環境が、クライアントのグローバルビジネスにおける成功を力強く後押しします。

グローバル戦略を導く「統合プロデューサー」の重要性

――PwCコンサルティングの連携体制の特徴について詳しく教えてください。

 グローバルビジネスは国と国をつなぐ視点が求められますので、その視点を補完する連携体制を構築しています。具体的には、私たちグローバルビジネスストラテジーのメンバーが、多様な専門家をつなぐプロデューサーとして、クライアントのグローバル展開に必要な支援をコーディネートします。

例えば、企業が新たな地域に進出する際、現地の法律や規制が大きなハードルとなるケースがあります。そこで私たちが、現地の法規制に詳しい専門家を含めてチームを組成し、法的な側面からクライアントの新たな市場へのスムーズな参入を支援します。

さらに、そのほかの具体的なビジネス上の課題に対しては、その領域に詳しい現地のコンサルタントなどともチームを組みながらクライアントに伴走します。

村田 グローバル展開ではスピード感が重要です。現地で頼れるキーパーソンや規制を調べるのに時間がかかると、機会を逃す可能性が高い。初めて進出する市場に限らず、参入済みの市場であってもスピード感を持って行動できるかどうか、トライ&ラーン(早く行動に移し、行動結果から学ぶ)サイクルをいかに速く回すかが、グローバルビジネスの成功のカギとなります。私たちは専門家チームがグローバルでクライアントに密着し、クライアント組織間の連携支援を含めて、成功に向けた支援を推進します。

――最後に読者へのメッセージをお願いいたします。

 PwCコンサルティングは各国の専門家との連携のみならず、各国の有識者とのコネクションなども生かし、ライセンス取得や許認可をはじめとしてスムーズな海外進出支援を提供できます。近年は、サステナビリティ、特にサーキュラーエコノミーは、サプライチェーンにおける重要課題になっています。PwCにはグローバルに対応するサステナビリティ経営支援チームがあり、複数のプロジェクトも推進していますが、この分野での貢献をさらに強化していきたいと考えています。

村田 私たちグローバルビジネスストラテジーのメンバーは、グローバル課題の解決をミッションとして認識し、クライアントとグローバルな協働を推進しています。クライアントの抱える課題に寄り添い、PwCのケイパビリティを結集させて、「PwCに任せれば安心」と思っていただけるよう、貢献していきます。

日本企業の海外事業支援について、詳しく