「すき家で朝ご飯を食べよう→ネズミの死骸入り味噌汁が提供」 《「すき家」のネズミ混入事件》でまたも問われる企業の姿勢

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しかしながら、2022年には早朝ワンオペ中の店員が倒れ、約3時間後に発見され、搬送先の病院で死亡確認された事故が発生した。その際の発表では、従業員に携行を義務づけていた「ワイヤレス非常ボタン」を、亡くなった店員が装着していなかったことなどを理由に挙げていたが、それでもワンオペが続けられていた実態のほうがクローズアップされていた。

今回のネズミ混入も、もし目視が足りないほど多忙だったとすれば、ワンオペと通底する問題を抱えていることになる。たとえそうであれば、「みそ汁提供前の目視を徹底する」「侵入経路をふさぐ」といった方策に加えて、「従業員の負担軽減」についても考える必要が出てくる。

衝撃的すぎて「生成AI画像」だと多くの人が考えた

今回の事案で、従来あまり見られなかった点として、投稿された画像が当初、「生成AIによる合成画像ではないか」と疑われたことがある。

それだけ大きなネズミが入っていれば、いくらなんでも、提供前に気づかないわけがないといった先入観に加えて、そこにはフェイク情報への厳しい視線も存在する。

技術の進歩によって、日を追うごとに「ウソをつきやすい環境」ができている。SNS上には、特定の企業をおとしめるため、もしくは単なる勘違いを発端として、感情的に投稿された「事実とは異なる情報」も少なくない。

拡散するユーザーの中には、「事実か否か」は問題ではなく、「疑惑」そのものを消費する人が少なくない。そのため、公式発表がされていない臆測の段階から、企業バッシングが始まる。そうなれば、たとえ虚偽の情報だとしても、名指しされた企業側は、イメージ低下を防止するために対応せざるを得ない。

こうした背景から、ユーザーは「虚偽のSNS投稿」に対して、疑心暗鬼になっている。そこに「すき家のような大手チェーンが、こんなミスをするわけがない」との信頼感や、「もし事実なら、すでに公になっているはずだ」といった一般常識が掛け合わされることで、フェイク認定に近づいていく。

しかし今回、すき家が「聞かれるまで公表しない」スタンスをとったことにより、結果的に顧客を「ウソつき」呼ばわりさせる土壌を作ってしまった。もしも公表しなかったら、投稿者は「すき家を営業妨害している人物」と、ぬれぎぬを着せられたままだっただろう。

消費者は「誠実であるはずだ」といった性善説を抱いている。だからこそ、外食チェーンに足を運び、食欲を満たすのだ。それだけに「公表の遅れ」によって、その企業イメージを自ら失墜させたことは、大きな痛手になるだろう。

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