BPaaSが中堅・中小企業のビジネス変革を後押し 基幹業務におけるSaaS基盤活用の最前線

クラウド化が中堅・中小企業にとって大きな転機になる
「クラウドの普及は、従来のビジネスモデルを根底から変えています」と、オービックビジネスコンサルタント(以下、OBC)代表取締役社長の和田成史氏は話す。

代表取締役社長
和田 成史氏
同社は1980年の創業で、会計・税務、人事・労務、販売管理などのシステムを手がけている。「奉行シリーズ」は累計導入数80万に上るという(2024年8月末現在)。
同社自身もクラウド化には早くから取り組んできた。18年にはバックオフィスに対応する「奉行クラウド」、従業員の申請業務などに対応する「奉行クラウドEdge」も発売し、導入企業数を伸ばしている。
創業以来、40年以上にわたり企業の基幹業務を支援してきた同社の和田氏が今、「中堅・中小企業にとってもクラウド化が大きな転機になります」と語る理由はどこにあるのか。
「それはデジタルデータの活用です。さまざまなデータを連携し、業務を自動化することで、企業の生産性向上が実現します」
日本では人手不足が大きな問題になりつつある。とくに昨今は、インボイス制度や改正電子帳簿保存法の導入などで経理部門や人事・労務部門の負担も増しており、その対応に苦労している企業も多いようだ。
「システムをクラウド化することで、それらの課題を解決することができます」(和田氏)
売り上げや経費など、さまざまなデータを表計算ソフトのスプレッドシートなどに入力して、社内でやり取りしている企業も多いだろう。これらをクラウド化することで、取引データを入力すればすぐに会計帳票に反映されるようになる。管理者や経営者がこれらのデータをリアルタイムに把握し意思決定に利用できるわけだ。
「クラウド化のもう1つの大きなメリットは、会計士や税理士など、外部の専門家とデータを共有できることです」と和田氏は話す。
自社の顧問会計士や税理士と同じ画面を見ながら質問したり、経営に関するアドバイスを受けたりすることができるのは企業にとって大きなメリットだろう。
さらに、新たな取り組みも可能になる。注目される「BPaaS」(ビーパース)である。「BPaaS」は、クラウド経由でソフトを提供するSaaS(サース)と、専門人材による業務受託のBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)を組み合わせたものだ。
「クラウドを活用し、人事や財務、給与、カスタマーサポートといったノンコア業務を外部委託することで、企業はコア業務に特化することができるようになります」と和田氏は説明する。
従来のBPOは大手企業が人件費削減の観点で利用することが多かった。そのため一定の規模があることが条件だったが、「BPaaS」であれば、業務を受託する側も、複数の中堅・中小企業の小口の業務を合わせて請け負うことができる。双方にとってメリットがあるわけだ。
会計士や税理士などにとっても「BPaaS」はチャンスに
多くの企業で採用されているOBCの「奉行シリーズ」だが、実は、同社はいずれの製品も直販はしていない。
同社営業本部 営業部 東日本ブロック SI・コンサルティングパートナー推進室 プロフェッショナルパートナーグループ グループ長の田中亮宇氏は次のように話す。

プロフェッショナルパートナーグループ
グループ長
田中 亮宇氏
「『奉行シリーズ』は、全国のパートナーを通じて提供しています。その中でもとくに公認会計士・税理士・社会保険労務士とは『OBC専門家パートナー制度(ASOS)』を設け、専門家とパートナーシップを構築し、企業が抱える課題解決をお手伝いしています」
パートナーに対しての豊富な提案支援ツールの提供だけでなく、ユーザー企業に対する導入・運用支援サービスを手厚く行っている。同社の自社サポート部隊によるオンラインでの個別相談やリモート指導、訪問指導なども行っている。
田中氏は「『BPaaS』は、専門家の皆様にとって、ビジネスを拡大するチャンスになると考えています」と話す。会計士・税理士・社労士などの事務所でも人手不足が深刻化しつつある。優れた人材を確保し定着させるためには、優良な顧問先の拡充が必須になる。
「職員1人当たりの収益を拡大するには、業務を効率化し、生産性を向上させることが必要です。『BPaaS』により、ノンコア業務を減らしコア業務に特化することが可能になります。当社の『奉行クラウドシリーズ』はまさにその思想で設計されています」(田中氏)
実際に、「奉行クラウドシリーズ」の導入により、1人の職員がより多くの顧問先を担当できるようになった事務所も少なくないという。
「クラウド化のもう1つの大きな特長は、どこからでも顧問先を獲得できるチャンスが生まれることです」と田中氏は加える。紙の帳票などをやり取りするなら自社の近場の事務所のほうが便利だが、データをデジタル化しクラウドでやり取りするのであれば場所は問わない。
「当社の認定専門家の中には、九州の企業が東京の事務所に業務を委託するケースや、さらには海外の子会社の会計を日本の事務所で行うといったことが当たり前になっています」と田中氏は紹介する。「奉行クラウドシリーズ」には、多言語対応・自動翻訳、多通貨管理・為替換算の「勘定奉行クラウドGlobal Edition」もあるので運用も簡単だという。
さまざまなパターンのBPOを「BPaaS」に置き換え可能
「奉行シリーズ」は中堅・中小企業を中心に広く導入されているが、「『BPaaS』は大手企業も含め、さまざまなパターンで活用できます」と和田氏は話す。
例えば、前述したような会計士・税理士事務所の記帳代行のアウトソーシングなどはその1つだ。一方で、大手企業における請求書や給与計算などの業務をBPO受託会社が請け負うパターンもあるだろう。さらに、大手企業が自社グループの子会社・関連会社などの業務を集中管理するパターンでも「BPaaS」を活用できる。既存のBPOはほぼすべて「BPaaS」に置き換えられるといってもいい。そして、それらを実践する専門家やサポートのネットワークも充実している。
田中氏は「会計士・税理士・社労士事務所にとっても、お客様企業に選ばれる事務所になることが大切です。『BPaaS』を視野に入れた機能を備えている『奉行クラウドシリーズ』を武器に、お客様の企業価値を高める提案をし、魅力的な顧問先を確保していただきたいと願っています」と語る。
顧客企業にとっても、自社にとって最適な「BPaaS」が実現するかどうかによって、委託先の事務所やBPO業者を選ぶ時代が来るかもしれない。和田氏は「日本市場は成熟化が進んでいるといわれますが、私はまだまだ成長の余地が大きいと思っています。コア業務に特化し、生産性を向上させることで、強みを発揮できるはずです。まずは『奉行クラウドシリーズ』を活用し『BPaaS』に取り組んでほしいです」と力を込めた。
「奉行クラウドシリーズ」は初期コストを抑えて導入することができ、AI(人工知能)などを活用したOCR(光学式文字読み取り装置)や自動仕訳、チャットボットなどの機能も導入している。つねに最新のプログラムを利用できるのもクラウドのメリットだ。同社では無料のお試し体験版も提供しているので、利用してみるといいだろう。