「サムスンらしさを失った」「一度死ぬ覚悟で」と役員に迫った李在鎔会長が抱える危機感とは何か
このような発言は、サムスングループが実に9年ぶりに再開した社員セミナーの場だった。「サムスンらしさを復活させるため」との目的で行われた。
かつてサムスンは2009年から2016年まで毎年、役員向けに教育を行ってきたが、2017年にグループの司令塔となる「未来戦略室」が解体された後、こういった教育は中断されていた。
しかし最近、半導体やスマートフォンなど主要事業が振るわず、危機感を感じたサムスン側は教育を再開した。李会長は「韓国経済と産業をリードしなければならないサムスン電子は、その役割をきちんと果たしているのか」と投げかけ、革新やチャレンジをしないまま現状維持に汲々としている役員らを叱責した。
「AI時代に対応できていない」
また、「メモリー事業部は自己満足に陥り、人工知能(AI)時代に対応できなかった」「(半導体を委託生産する)ファウンドリー事業部は技術力不足で稼働率が低調」「(テレビ・スマートフォン・家電などを包括する)DX部門は製品の品質が相応しくない」など、各事業部の弱点と改善点に直接言及したという。
李会長は技術の重要性を改めて強調した。彼は「全分野で技術競争力が損なわれ、危機のたびに機能していたサムスン固有の回復力が見られない」と一喝。「1も技術、2も技術、3も技術」と述べた。
そのうえで、「経営陣より優れた特級人材を国籍・性別を問わず育成し、サムスンに迎え入れなければならない。成果は確実に保証し、結果に責任を負う信賞必罰が私たちの長年の原則だ。必要に応じて人事も随時行わなければならない。重要なのは状況ではなく、状況に対応する私たちの姿勢だ」と対策を示した。
李会長は2019年8月にディスプレー事業の指揮を執った際、「技術だけが生きる道」とし、「今までなかった新しい技術で新しい未来を作ろう」と提案したことがある。