「歯茎をむき出しにした画像、目の下のたるみの画像」不快な広告で埋め尽くされたメディアに未来はあるのか

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クラシルやオレンジページは性的広告が表示されて問題になり、即座に対応した。一方でXやFacebookにはひどい投稿や詐欺広告と並んで日本の大手企業の広告が表示されている。これはいったい、どういうことだろう?
フジテレビに疑惑が生じたら即座に多くの広告主がCMを引き揚げたのは、まっとうな判断だろう。では無法地帯と化しつつあるネット広告を、広告主は検証しているのだろうか? 反社会勢力がひそかにうごめくいかがわしい裏通りに立派な企業の看板が出ているような状況を、なぜほっておくのか。

ネット広告が社会を、世界を悪くしていないか

広告はメディアの血流だ。社会に対してニュースやその解説を提供するメディアに養分を補給している。そしてニュースは民主主義を支える重要な存在だ。だとすれば、ネット広告はメディアを通じて民主主義を支え社会をより良くしているはずだった。

だが逆にいま、まっとうなメディアが養分を受け取れず息絶え絶えになっている。その代わりに巨大ITのソーシャルメディアを通じておかしな集団に広告費が回っている可能性が出てきた。ソーシャルメディアも疑問を感じてしかるべきなのに、巨大な広告費を吸い取っている。

大げさに言えば、日本の民主主義がいま、養分不足で干からびようとしている。企業は自分たちの広告費がどう流れているのか、洗い直すべき時だ。まっとうでない先に自分たちの貴重な広告費が注がれているなら、流れを変えてほしい。具体的に言うと、運用型の表示先をチェックしたり、運用型の割合を減らす検討が必要だ。PMP(Private Market Place)のように広告の表示先がはっきりした手法を取り入れるべきだろう。

メディアの側も、自分たちの広告の内容や表示形式をチェックすべきだ。コタツ記事のような安易に作った記事に大量の広告を表示するいまのメディア運営の潮流はいずれ行き詰まる。そんなやり方が儲かっていないのはデータから明らかだ。

私はここ数年、書く場所を自分で運営するMediaBorderといくつかの専門誌以外では、東洋経済オンラインに無意識に絞っていた。データや取材をもとに書いた記事をきちんとした編集者とやりとりし、一定の質を保てるメディアだからだ。広告が記事を妨げることもない。そんなメディア本来のやり方でネット空間が成り立つ方向に、ネット広告業界全体が必ず向かうと信じている。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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