受験生だった人に伝えたい、合格・不合格という結果との向き合い方。塾講師歴23年の著者が考える、合否に”強く固執する”と嵌ってしまう罠の存在

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つまり、合格という結果に依存する人も、不合格という結果で自己否定感に陥る人も、受験の結果を「真に受けすぎる」人たちは、実は「真に受けているように見えて、真に受け取ることを避けている」という逆説的な構造を示しています。すなわち、「受験の合否が人生を決定する」という極端な幻想にしがみつく人ほど、いつまでも自分を分析するという針路に進むことができず、自分自身を単純でわかりやすいイメージへと還元してしまうのです。

このように、合格という結果に強く依存する人も、不合格を過度に悲観する人も、結果的には自分の分析を避け、受験という結果の中に自己像を閉じ込めてしまっているという点で共通しています。

受験生を「心理状況」別に4つに分けてみると…

これまで、受験という目標に努力した人たちに向けた話をしてきましたが、実際には、すべての学生が受験という出来事に真剣に向き合うわけではありません。

受験勉強のための十分な環境を手にしているのにかかわらず、なんとなくやりすごした人、あるいは特に努力もせず、ただ行けるところに進学しただけの人もいるでしょう。

心理学者エリク・H・エリクソンの理論を基にジェームズ・マーシャが提唱したアイデンティティ分類をフレームワークとして用いて、彼ら受験生たちの心理的状況を少し整理してみます(こうした分類が真に妥当なのか、という疑問は保留したままにして)。

まず、「アイデンティティ・バランス型」の生徒たちがいます。自己の価値観や目標とその方向性について深く探究した上で、それを一定程度明確に持ちつつも、その自己理解に固執しすぎず、柔軟に人生を歩もうとしている生徒たちです。彼らは、勉強を自分の人生に必要なタスクと明確に捉えており、葛藤に苛まれることがあっても、基本的にはタスクに対して能動的なコミットメントができています。自己分析と自己受容がある程度進んでいるため、自分の選択や判断に一定の自信を持っており、受験勉強に意欲的に取り組むことができます。自己意識と受験という目標が重なり、ほどよいバランスが取れているタイプと言えるでしょう。

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