「藝大は、たとえ絵が上手でも、出題内容にうまく応えられないと落ちるんです。例えば、リンゴを描きなさいと言われて、スイカをリアルに描いてもダメなんです。2浪の年は、課題に対して上手に応えられなかったから落ちたのだと思います」
こうして3浪に突入した廣瀬さんは、2浪のときと同じように大学の授業に出ながら、冬になると立川美術学院の冬季講習に通う生活を送ります。
しかし、結果は痛恨の2年連続1次試験不合格でした。これはさすがに廣瀬さんにとってもつらく、前向きな気持ちに立て直すのが難しかったそうです。
「周囲も大学3年生になって就職を考える時期だったので、疎外感を伴いつつ、とてもつらい思いをしながら過ごした時期でした。自分の中ではイラストレーターになりたいという目標は変わりませんでしたし、もし4浪目もダメだったら当時通っていた大学で4年生になるので、東京藝大の大学院を受験して、そこでリベンジしようと思っていました」
4浪目のラストチャンスで迎えた藝大受験
学部の受験は来年がラストチャンス……。そう決めた廣瀬さんは、4浪の受験に向けて、自分を客観的に見つめ直し、根本的な考え方を変化させていきます。
「今まで自分が落ちていたのは、描写力が高いとうぬぼれて、課題に応えることを優先しなかったためだと思いました。そこでこの年は自分の持っているものを披露しながら、課題に応えられるように、傾向と対策を練って万全の体制で臨みました。
今までの試験内容を見ると、(東京藝大の)油画専攻の課題は、ヌード、静物、構内問題、モチーフを手渡されて描く、石膏のパターンしかないと気づいたんです。そのため、それぞれのパターンが出た場合を想定・準備し、あらかじめ各パターンで描くことを決めておくことで、臨機応変に即時反応できるよう、『受験で評価される絵柄』を作って臨みました」
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