現役での受験は残念な結果に終わったものの、浪人を決意した廣瀬さん。その大きな理由としては、「東京藝大にどうしても行きたかったから」と答えてくれました。
「私は中学受験のとき、第1志望だった桜蔭に落ちているので、自分自身をすごいとか、頭がいいとか思ったことはなかったんです。でも、豊島岡時代の同級生が東大に30人ほど合格したり、理科3類の合格者が出たのを聞いて、軽く辞めてしまったけれど、自分はそんなすごい学力レベルの集団の中に属していたんだ……と失ったものの大きさに気づきました。
高校を辞めてまで藝大を目指したのに、大きなものを失ったうえに、さらに結局藝大に入れなかったら、同級生たちに完全に負けたと思いながら生きることになるので、どうしても入らなければならないと思ったのです」
1浪目も不合格、私大の美大に入学を決意
1浪目の年も現役のときと同じ予備校に通い、美術学部の絵画科油画専攻を目指した廣瀬さんは、前年と同じスケジュールでひたすら量を描き上達させていきました。
その甲斐あって、1浪目で初めて2次試験に進めましたが、この年も残念ながら不合格。しかし、この年はいったん私立の美大に入ることを決めます。その大きな理由としては、高校2年生くらいからずっと続けてきた受験生活の日々に終止符を打ちたかったという思いがあったからでした。
「高校2年生くらいからずっと、自分が社会的にどこにも属していないニートのような存在だと思っていたのですが、その立場がつらくなってきたのです。自分自身が何者でもないことが耐えられなかったので、次の年からは大学に通いながら仮面浪人をしようと思いました」
2浪目に入った瞬間から仮面浪人の覚悟ができていた彼女は、学校に普通に通いながら、受験の対策も続けました。
「入った大学は午前が実技、午後が学科だったのですが、1次試験の素描ではヌードを描く年もあったので積極的にヌードの授業をとるようにしていました。おかげで人間を描くのは上手になりましたね。基礎的なことは1浪でできるようになったので、冬になると立川美術学院の冬季講習に通い、『受験用の絵』を仕上げる対策をしました」
しかし、この年は前年突破した1次試験で落ちてしまいました。
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