NHK→フジ転職のP「日本一の最低男」作ったワケ 香取慎吾に「有害な男性性」背負わせた意欲作の意図

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――価値観の違いをどちらも否定しない、という考え方は、第6話の「ごんぎつね」の例――殺すほうと殺されるほうどちらが可哀想かという問いでも描かれ、第7話の正助の意見につながっています。「ごんぎつね」という普遍性のある寓話を使うのがよかったです。

「第6話は反響が最も大きく、大変好評を頂きました。手前味噌ですが、奥野瑛太さんが演じた、ひまりの実の父親のエピソードのこの回は、令和になってからの家族ドラマとしては史上最高の出来なんじゃないかとスタッフ内では話しています。

蛭田直美さんの書かれた圧倒的な脚本のチカラに触発され、香取さん志尊さん奥野さんの3人が最高のお芝居をしてくださいました。自殺して娘に保険金を残そうとする実父に対して、『死んで嬉しいなんて、そんな社会は間違っている』という香取さん演じる一平のセリフに、大げさではなく、命が救われる方もいると思うんです。自殺を踏みとどまれる人もいるかもしれないと思っています」

日本一の最低男
一平の中学校時代の後輩・今永都(冨永愛)は、子どもを産まない選択をした女性。しかし、一平や正助と関わり合い、彼らの育児を支えている(フジテレビ提供)

脚本・蛭田直美さんの圧倒的なチカラ

――第6、7話とぐーっと話が北野さんの定めたテーマに寄っていって、SNSでも評判がよかったようです。

「4話から合流してくださった脚本の蛭田直美さんのおかげです。蛭田さんがこのドラマの根幹を支えてくださいました。次の仕事もあり、執筆のスケジュールがない中、終盤の選挙ドラマ編もどうしてもご一緒させて頂きたくて、本当に何度も頼み込みました。その結果、第9、10話も蛭田さん、最終回は蛭田さんとその師匠にあたるベテランの大石哲也さんにも助けてもらって、共同脚本になっています」

脚本の蛭田直美さんの主な作品は『あの子の子ども』、『舟を編む〜私、辞書作ります〜』(東京ドラマアウォード2024 連続ドラマ部門優秀賞、第62回ギャラクシー賞上期 テレビ部門入賞)、『しずかちゃんとパパ』(第48回放送文化基金賞 テレビドラマ番組 優秀賞、第38回ATP賞テレビグランプリ ドラマ部門 優秀賞)。シリアスなもの、ヒューマンなものを書きつつ、時々ユーモラスなセリフもある。筆者が好きだったのは、第6話の「世界ではそれを愛と呼ぶんじゃねえの」(一平)、「大事なとこパクリできましたね」(正助)のやりとり

――蛭田さんの脚本の魅力は。

「社会派エンタメドラマを作るにあたって、取材を丁寧に行うことは大前提ですが、それをエンターテインメントに昇華するには脚本家の特別なチカラが必要になります。取材はできても、僕にはセリフは書けません。エンタメに昇華するには脚本家さんの圧倒的なセリフや構成力が必要です。

蛭田さんは、誰も傷つけない、誰も否定しない、繊細で優しく、温かな眼差しを持っていらっしゃって、すべての登場人物に愛情を持って書かれているのを感じます。蛭田さんが選挙編のリリースコメントでもお書きになっていましたが、“世界は優しい”というのを一貫してお書きになられていると思います。そんな蛭田さんの新境地が9、10、最終話の選挙ドラマ編ではご覧いただけると思います。ぜひ選挙編からでも見ていただけたら嬉しいです」

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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